🇨🇳#14 瀋陽・柳条湖事件の現場で世界平和を願う
北京で北京ダック、天津で肉まんを食べて遼寧省・瀋陽へ。
かつて「奉天」だった瀋陽に到着
東北地方に入り、観光地も戦争の影が色濃くなってきた。
実はわたし、この中国の東北地方には、かなりの回数訪れている。
というのも、28年前に77才で亡くなったわたしの祖父が戦時下、黒竜江省の孫呉で対ソ連の国境警備にあたっていたのだ。
また、ここ瀋陽(かつては奉天)では、予備士官学校に在籍していたことが当時の手記に記されている。
祖父が遺した手記を頼りに、彼の足跡をたどってみたというわけである。
ちなみに祖父はその後、南方戦線に送られ、部隊の8割以上が戦死した中、たまたま終戦時ロタ島にいたため、奇跡的に生き残って日本に帰還している。
そんな九死に一生を得た祖父ではあったが、最期はカレーうどんを喉に詰まらせて、ぽっくり逝ってしまった。
それ以降、わたしはこのカレーうどんに対してわずかな怒りとある種の恐怖のようなものを抱いており、祖父の死後28年間で2回しか、カレーうどんなるものを食べていない。
しかし今日、天津市内で人気の肉まん屋に入ったわたしは、蒸し上がりまで40分間待たされることになり、結果、10:31天津西駅発瀋陽北駅行きの列車に間に合わなくなりそうになったため、六個のミニ肉まんを一気喰いした。
そして、あわや祖父の二の舞になりそうになったのである。
どうやら、後代まで続く因縁として注意すべきなのは、カレーうどんだけではないらしい。
清朝の離宮・瀋陽故宮
ということで、世界遺産の瀋陽故宮に到着。
1625年に建てられた後金の2人の皇帝、ヌルハチとホンタイジの皇居で、のちに清朝の離宮となった建物だ。
実は、ヌルハチ皇帝には個人的な借りがある。
ほとんど分からなかった世界史のテストで、この名前だけは何故か忘れることができず、正答できたのだ。
今日はそのお礼をいいに行かなければならない。
満州事変のはじまり
故宮をみた後は、満州事変の発端となった柳条湖事件の現場へ。
今は「九一八博物館」として、中国の立場から先の戦争に関する、主に東北地方における歴史を紹介している。
パスポートでは電子入場申込ができず、仕方なく、警備のおじさんに声をかけた。
わたし「外国人なんで、電子入場登録ができないんですけど…」
おじさん「パスポート出して」
わたし「はい」
おじさん「どこの国?」
わたし「日本です」
おじさん「日本?」
おじさんはギョッとしつつ、中に通してくれた。
博物館の中は、抗日戦争について事細かく紹介されており、日本人であるわたしは肩身が狭い。
見学中の子ども「日本人って怖いね」
お母さん「本当ね」
間違ってもパスポートなど落とさないよう注意しながら見学した。
戦争についてはもう何十年も前からあれこれ自分なりに思い悩み、四年前には戦中・戦後の祖父をモデルにした小説を書いたことがある。
また、大学の卒論ではカントの『永遠平和のために』をヒントに世界平和に関する考えをまとめている。
それでも、未だに誰かと議論するほどに、戦争と平和について自分の答えが出せていない。
ただ、いつも思い出すのは終戦の日、黙祷を捧げて涙を流す祖父の姿だ。
祖父は戦争についてひっそりと手記こそ遺していたが、人には何も語らなかった。
(noteを偽名で書くわたしも、この祖父の血を少しは受け継いでいるようだ)
手記の内容は割愛するが、戦後三十年に書いた部分にははっきりと、「二度とこのような悲しい出来事が繰り返されないことを願う」と記されている。
また、祖父が先立ったあと、周りの配慮から入院中の祖母には祖父の死が伝えられなかった。
しかし、毎日お見舞いに来ていたのがぷつりと途絶えたのだから、薄々察していたのだろう。
祖母は頭の良い人だった。
祖母は、叔父たちに仕込まれた「おじいちゃん風邪を引いた」で祖父の死をごまかす中学生のわたしを気遣い、「おじいちゃん、あんまりに来ないから、戦死してしまったかと思った」という最高のユーモアを遺言に、祖父の後を追うようにこの世を去った。
戦時中、いつ帰るかわからない祖父を四年間待っていた祖母だからこそ言える言葉だった。
戦争で命を落とした人およびその家族、戦争で心や体が傷ついた人、戦争に参加した人、その人を待つ人…各々が苦しみながら生きた時代だったのだと思う。
激動の時代を生きた全ての人々に黙祷を🕊️
夕飯編
すっかり日本が恋しくなっているわたしの本日の夕飯は「紫菜包飯(太巻き)」。
遼寧省〜吉林省は朝鮮族が多いため、街中で見かける。
日本の統治下、朝鮮半島に広まり、中国の朝鮮族の間では独自の発展を遂げたそうだが、太巻きそのままの味でおいしい。
瀋陽ではシーチキン味が最近の流行りらしく、韓国のキンパより、もっと日本っぽい気がする。
わさびと醤油を追加していただいた。
美味である。
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