『音楽を人はなぜ美しいと感じるのか』、Cateen Labという素晴らしい場所について

音楽をなぜ美しいと感じるのか
音楽にどうしてどんな風に感動するのか
それはたとえば論理的に、または数学的に説明ができるものなのだろうか。

先日そんな事を徒然に、私の世界一大好きで尊敬するピアニストかつ音楽家の角野隼斗さんが(何かこの説明毎度自分で書きつつも照れ臭いのですが)、YouTubeのメンバーシップのCateen Labで話して下さいました。
それがとてつもなく興味深くて非常に面白い議論でして。あまりにも印象に残り感動したので、そのお話自体についてではなく、Cateen Lab(その名の通り角野さんのLaboratory=研究室ですね)という場について何となくnoteを書こうと思いました。
議論というかそんな息の詰まるものではなく、思い付くまま流れるような思考を角野さんが語り、様々な知識とチャット欄に書かれたメンバーのコメントを踏まえてどんどん話が前に進んで展開していく、そんな思考すること自体が目的のような形の配信だったのですが、それこそがもの凄く好奇心をそそられたのです。

人間は音楽のどこに美しさを感じるのか。
音楽の美しさとはそもそも何なのか。
なぜ美しいと感じるのか。
それはどこから来る感覚なのか。
そのすべての正解が分かるわけもなく、というかそもそも正解があるかも分からないし、人によっても時代によっても全然違う回答になると思う。

メンバーシップだと一方的に喋るようなスタイルもあるのかも(他のメンバーシップ入ってないので解らない…)ですが、角野さん(以後かてぃんさんとも呼称します)のラボは基本的には角野さんが今考えている音楽関連のテーマについて説明を交えて話しつつ(その話自体が熱を帯びてめちゃくちゃエキサイティングなものになることもあるし、今回のような徒然な語りになる場合もある)、割合チャット欄のコメントに応じて議論が展開するような双方向なやり取りがあったりもします。
ラボメンバーの方の中には音楽的な知識や経験が豊富な方がいらっしゃるので、そのコメントが議論をより深めたり展開させたりというきっかけになることもあり、お話を聴いていて凄く勉強になるし知的好奇心がそそられて毎回充実した時間を過ごすことができます。
正直「わ、難しすぎて分からん〜」と若干内容が高度すぎてついてけなくても、聴くだけでも得るものは大きいなと感じます。笑

角野隼斗さんという方を、そのフラットな考え方や感じ方、飾らない人柄や豊かな感受性や思考力や分析力の素晴らしさまで、より知りたいと思うのであれば、Cateen Labに入って体験なさることを非常におすすめしたいです。
(決して回し者じゃないです)

かてぃんさんはその経歴が物語るとおり(東大院卒の元理系研究者です)、めちゃくちゃ理系というか、元理系の私からしてもかなり数学者らしい思考をされるなと感じます。
一般的に理系といってもわたしは2つの方向性があると個人的に思ってて、簡単に言うと実験屋さんと理論屋さんの2種類です。そのなかで数学者タイプは理論屋さんに入るイメージです。

私自身は量子化学といういかにもガチ理論をベースにしつつも、研究手法としてはごりごりの実験屋でした。
具体的にいうと、真空かつ極低温下にしたレンズに色々な分子を吹き付け(仮想的な宇宙空間のような感じですね)、紫外線を当てると分子構造が変わるという現象(トンネル効果)をひたすら実験して実証する、というのが実験屋であるわたしの研究でした。
実験屋は結果がすべてです。
膨大な実験結果から確かにその条件でその結果に再現性が出るのならば、その時そこには紛れもない真実があると考える。
あくまで実験結果というのが真実の含まれた原石で、仮定に沿った実験方法(たとえるなら原石を削るヤスリ)を用意して何回も実験して、結果を得ることでその中にある真実を掘り出して見つけ出していく感じ。

研究生活で培われた「実験屋さん」としての特性は、意外と自分の根っこ深くに今後の課題解決の手段方法として強く記憶されてしまうもので、実際に私自身の物事への向き合い方、取組み方もどうにも「やってみなければ分からない」「やることで見えてくることがある」という発想になりがちだったりします。つまり思い立ったら行動先行型になりがちです。やる後悔とやらない後悔なら絶対やる後悔を取る。
しかし元々の私自身が非常に心配性なタイプなので、今まで向こう見ずな悲劇が起こってなくて幸いに感じています。笑

一方で角野さんは『音源分離』について、多分ごりごり実験もされていた半面、ご自分で仮定を立てプログラムを組んでいたとの事で、おそらくはその研究のパイオニアでいらっしゃったのではないかとも思います。まだがっつり理論体系が組み上がっていない分野であれば、いまだ見ぬ理論を自分で予測し組み立てる「理論屋さん」としての研究も当然する必要があるかと思います。
実験屋の私からするとより理論屋さんの科学者はとても大変で、本当に頭の回転が異常に良い方でないと務まらないイメージです。
だってこの世の中にまだない、新しい理論を考えつかなくてはいけないのは想像しただけでも凄く大変です。

それは降って湧いてくるものではなくて、たくさん論文を読んで様々な知見を深めて、その上で論拠に基づいた思考を重ねて、そうした思考実験のようなことを色々展開していき、もちろん同時に手段としての実験も行いながら、それでも行き詰まる事も多くて。。。
時には「別のこの分野でこういう現象があるならばこちらの分野ではどうなるのかな」と普遍性または意外性のありそうなタネを、あえて局面に導入してみたりし、意外な結果から何か見えたりして。
そうして得た膨大な知見から、やがてその全てが説明できるようなシンプルな1つの理論に収束する。最終的にたどり着く。
どんな天才もそんな風に新しい理論をみつけてきたのではないかなと思います。


何が言いたいかというと、かてぃんさんにはところどころ「理論屋さんだな」と思えるような理論型の思考の鋭さを感じる気がします。
もちろん普段は全然そんなことなくて、本来のお茶目でサービス精神満点で飾らない人柄がめっちゃ素敵でとてもチャーミングなのだけども、思考されている時には物事を見る目にすごく本質的なものを捉える眼差しを持ってらっしゃる気がする。
かてぃんさんは大事な局面では、いつもそんな風に物事を見て考えて、考えを深めた後に展開させて多角的に考えたうえで収束させて、そういう自分なりのシンプルな1つの答えにたどり着いている印象があります。
未来の選択や何か課題のようなものに出会ったとして、「実験屋」みたいに出たとこ勝負で行くのではなく、広い知見から何度も重ねた考えの上で選択し、さらにそこから建設的な思考と多角的な視点で大局を見る努力をし続けて、その時々で己に必要なものをちゃんと掴む勇気と努力を日々己に課している、そんなイメージ。
そういうあり方が、理論屋さんでありながら、その理論を自らに課すというとてもストイックな生き様になっている印象が凄くするのです。

そんな風にできる事はとてつもなく格好よくて、自分に対して非常にストイックで、常に高みを目指そうと挑戦を止めない素晴らしい生き方だなと心から思います。
けど、ほんの少しだけですが、心配になるときもあります。たまにはストイックになりすぎないでぜひ息を抜いて自身に甘くして欲しいと心から願う。ストイックになりすぎると自分で自分の姿が見えなくなってしまうことがある気がするから。
もし万が一そうなった時は、ひとに見て貰うのが一番の特効薬で、自分のことをよく解っているひとに自分の今の姿を見て貰うと、きちんと成長しているとか、だいぶ無理してそうだとか、教えてくれて安心したりする。
ぜひそんな風にNYでの日々を思い切り楽しくのびのびと過ごしていて下さったらいいなと思います。


完全にタイトルをすっ飛ばして話をしていますが、正直なことを言うと、タイトルの事が気になった方がいらしたら一度Cateen Labに入ってみて、最新の動画を見ていただくのがめちゃくちゃ手っ取り早いと思います。
身も蓋もなくて、タイトル詐欺ですみません。。

一応ざっくりと説明をします。(この説明では面白さの100万分の1も伝わらないです。すみません…)
かてぃんさんはまず、ピタゴラス律、純正律、平均律など数々の音律を数学的に解説してくださりつつ、そもそもひとは何に美しさを感じているのだろうと抽象的な問いを投げかけていました。
その途中途中で、そもそもクラシックのおこりは神にささげる音楽であった話や、著作権は近年人間が言い出した権利に過ぎないということ、作曲も演奏も可能なAIが登場したら世の中はどうなるかということ、天球の音楽の話、音楽だけが特別でなく自然の美しさにも人間は感動すること、自然の美しさにも隠れた数学があること(フィボナッチ数列とか)、黄金比やオイラーの公式のシンプルなのに真実を捉える美しさ、音楽を奏でる際の拠り所としてキリスト教信者が神にその心を委ねるように、かてぃんさんは理系なので数学や分析的思考を心の拠り所としたくなるという話など(順不同に書き出しました)、たくさんのお話をしてくださいました。

内容詳しく書かないほうがラボメンバーである意味があるので、ざっくりでも書き出す事自体がメンバーの方には酷く申し訳ないとも思ったのですが、このすさまじくプライスレスな魅力を伝えたかったのです。
このように次々と展開していく議論や今生まれた凄く臨場感のある話題を、角野隼斗さんの率直な考えや発想で、角野隼斗さんの言葉で声で一緒に考える事ができるとしたらそれはめちゃくちゃ貴重なプライスレスな至上の体験ではないでしょうか。
難しすぎて専門的すぎて発言することができなくても、聴いているだけでも本当に学びになるし、なんかほんとに落ちこぼれてノックアウトな回でも、ちょっとだけでも自分の知らない景色は必ず広がります。

加えて、私がこのラボがすごいと思うのは、特に今回のように答えが中々出ない問いかけに対しても、ラボメンバーの皆様が各々の体験や人生で培った知識や体感を通して、きちんとご自身の考えをまとめられて、借り物でない自分の言葉で、それに対する回答や意見や感じた事をコメントしようとされる方が非常に多い点にあります。

角野さんも物凄く好奇心と探究心が旺盛で幅広い知識を身につけてらっしゃいますが、ファンの方も同じようにそれぞれ色々な分野においての知識が旺盛な方々ばかりで、私のような1ファンはコメントを読んでいるだけで本当に勉強になるし、多角的な視点を取り入れる事ができる気がします。
そして凄いことに、それを角野さんは一つ一つ可能なかぎり丁寧に読まれているのです!(どうやって寝る時間つくってらっしゃるのか不安…。どうかたくさんお休みになってください)

そうやって多くの人の意見を取り入れることで、自らの思索のヒントにしたい、自分だけでは見えなかった視野を取り入れたい、という、角野隼斗さんならではのとても柔軟かつ謙虚で、でも新しい知識に貪欲な姿勢が見えてくる気がします。
これはたぶんずっと昔から変わらない、ご本人の性格の軸のようなものなのだろうなと、素敵だなと思います。

だって普通、あんなに頭が良くてたくさんの事を知ってて、企画の実現力もあって、世界的にもめちゃくちゃ有名なほどピアノが上手だったならば、人間は多少なりとも驕ってしまうと思うのです。
周りの人の言う事なんて聞かずに自分は凄いんだから自分の考えが一番正しいに決まってる、自分は自分の思った通りにする、うるさい外野は黙ってろ、と万能の神のような錯覚に陥ってもおかしくないと思う。普通の人間だったら絶対、多少なりとも確実にそう勘違いしてしまうよ。

でも勘違いどころか一切真逆なのが角野隼斗さんの信じられないところ。
芯は一切ぶれない変わらない。どこまでも謙虚で冷静で客観的に自分の状況を判断(それもちょっとシビアすぎるのではと思うくらい厳しめに)して、他者に対して威張り見下すことなんか無い。
驕るという煩悩がないんだな、となんていうか特別な素晴らしい精神性の持ち主を見る気持ちにいつもなります。
なんて素敵な人なのか! ため息です。

思いの外長くなってしまいました。
本当は今回、この問いかけのラボで得た知識や刺激やインスピレーションがすごかったから、そこからちょっとスライドして、ぶわーっと自分なりに考えたことを、全然違うトピックまではみ出してるけど徒然に書こうと思っていました。
(美とはなんだろうか、音楽でもダンスでもジャンルごとに目指す美って異なったりする、例えば今ダンスの振り付けを考えてるインドのバングラとヒップホップが融合した『バングラビート』について、ジャンルを超越した美が存在するのかについて、句跨りなど破調の美についてとか)
だけど、ちょっと長くなりすぎるので、別に続きの形で書こうと思います。

今回、少し言葉が乱れていたり、もしかすると言葉遣いがあまり美しくない点があったりするかもしれませんが、今体調がいまいちでして細かい所まで気が向かないもので、ご不快に感じられたら申し訳ないのですがご容赦いただければ助かります。
では、また近々書ければ書きます。

今回の文章めちゃくちゃまとまりがなかったので恐縮ですが、特にタイトルについてや、取り上げていた内容などについて気になった方は、ぜひ角野隼斗さんのYouTubeのメンバーシップ、Cateen Labに入ってみてください!
音楽に関するめくるめく知の冒険をぜひご一緒に体験しましょう〜!


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