9/12の現像
母から聞いた話だ。
僕の幼なじみのお母さんは、息子のコウキが高校卒業の日、式が終わり一段落し、息子を探しに教室へ向かったのだそうだ。
「コウキいるかな?」
するとそこには、息子を中心にクラスメイトが輪になって思い出を語っているという。
「コウキ脱げ脱げ〜!」
コウキはクラスの人気者だ。上半身裸になった彼を囲み、高校生活の思い出話が始まった。
泣く女子。笑う男子。
お母さんは教室に入ることはせず、教室の外から眺めていた。
うん、眺めるしかない。
お母さんは、話を聞きながら涙を流してしまったという。
卒業のその日に、クラスの皆が思い返した記憶の中には、必ず彼がいたのだろう。
コウキは服屋にしばらく勤めた後、学校の先生を志し大学に通い直した。そして今、北海道の小学校で先生をやっている。
母からこの話を聞かされてから、しばらく頭を離れなかった。凄いな、コウキは。
どんな高校生活を送っていれば、半裸で車座に囲まれるんだろう。
自分は中学・高校と学級委員長をやるようなタイプだ。サッカー部では控え。人気者でもなんでもなく、受験勉強を超必死で頑張っていたやつ。
凄いなあ、コウキは。
ということで、その後の僕のデザイン学校時代があるのかなあ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?