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仲白針平
2024年7月24日 00:11
A それである日、彼女は歳を取らなくなったの。もうじゅうぶん摂ったから、わたしは歳を録り終えたのよ、と清々しいような声でそう言ったのを覚えてる。ええ、たしかにそう言っていた。A 歳を捕り終えるということが、いったいどんなことを意味しているのか、そのときの私にはわからなかった。でも、それはありうることだと思えたし、なんて言ったらいいのか、ごく自然なことなのだという直感があった。A 考えてみた
2024年7月5日 23:08
右眼の後ろのずっと奥のほうに兎が棲んでいる。 兎はそこで、じっと待っている。わたしが見た物を食べるために。ニンジンはいらないと言う。何が食べたいのかと聞くと、「ぼくは悲劇が好きだ」と答える。「ただし、シェイクスピア以外の」「わたしは何を見ればいいの」「とにかく、そこらへんの悲劇を見つけてきてくれたまえ」 おかしな喋り方をする兎だ。そこらへんなどと簡単に言うけれど、わたしの身近に悲劇はなか