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寓話集

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2024年7月の記事一覧

奇寿

奇寿

A それである日、彼女は歳を取らなくなったの。もうじゅうぶん摂ったから、わたしは歳を録り終えたのよ、と清々しいような声でそう言ったのを覚えてる。ええ、たしかにそう言っていた。

A 歳を捕り終えるということが、いったいどんなことを意味しているのか、そのときの私にはわからなかった。でも、それはありうることだと思えたし、なんて言ったらいいのか、ごく自然なことなのだという直感があった。

A 考えてみた

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兎

 右眼の後ろのずっと奥のほうに兎が棲んでいる。
 兎はそこで、じっと待っている。わたしが見た物を食べるために。ニンジンはいらないと言う。何が食べたいのかと聞くと、「ぼくは悲劇が好きだ」と答える。「ただし、シェイクスピア以外の」
「わたしは何を見ればいいの」
「とにかく、そこらへんの悲劇を見つけてきてくれたまえ」
 おかしな喋り方をする兎だ。そこらへんなどと簡単に言うけれど、わたしの身近に悲劇はなか

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