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《移住のこと》 なんにもないところ

北海道豊頃町に移住して、五年半が過ぎました。


移住当初は、まず二年、

帯広という街なかに住みました。

コンビニ三軒に歩いて行けるという、

おそろしく便利なところに住み、

水道凍結などの洗礼を数度受け、

慣れないFFストーブに悩まされ、

すこし自信がついたところで、

二年後に、いまの辺境の地に移り住みました。


越してきてすぐに、

近所の農家さんバイトのお手伝いをすることになりました。


移住時に、私は自分の店をまるごと人に譲り、

まちゃさんは教える仕事を辞めました。

仕事は決めずに来ました。

ハローワークを見に行くと、農作業や酪農の求人がとても多く、

結局、農作業バイトをやってみようかと、

派遣を通して農作業の仕事に就きました。

40代と50代の初挑戦。

もちろんド素人。

おまけに私は、東京生まれの都会のネズミ。

収穫のための包丁を持つと、必ず社長が隣に来ては

「ケガすんなよ〜。大丈夫か〜?」

と、ひどくお世話になりました、、、笑。


キャリアは積まれ、五年以上となり、

今では「経験者」というお墨付きをもらえるようになりました。



移住してすぐのころに、ピンポーンとお客さまが見えました。

近くの農家さんです。


「農作業やるんだって?

うち手伝ってもらえないかい?」

と、いきなりスカウトされました。笑。


地区からの提案で、越してきてすぐの広報誌に、

私たちの自己紹介用紙をコピーして挟み込み、

皆さんの世帯に配っていただいていたのです。

これは本当にありがたかった。


そして、二軒の農家さんにお世話になることになったのでした。

ブロッコリーとそら豆とじゃがいも。

夏の間だけの季節労働ですが、

空いている時間を活用したい、美術など本職がある人には、

ちょうどいい働き方でした。



ある日、農作業の休憩時間に、

「どうしてこんな、なんにもないところに来たの?」

と、お決まりの質問を受けました。



なにをおっしゃるウサギさん!(古い!)

私たちには宝ものだらけです!


すると彼女の答えが印象的でした。

「なんにもないのが、いいところだよね〜」


あぁ、ここに暮らす人たちから感じる

のんびり、ゆったりとした印象って、

こういう風に思えるところなんだよなぁ、と

感動したのを覚えています。



この「まち」→「辺境」の二段階移住作戦は

いいことがたくさんあり、都会のネズミな私たちにはうってつけでした。


・アートフェスティバルに参加したことがきっかけだったので、
そこで知り合ったアート好きな方の持ち家を貸してもらえた。

・大家さんのおかげもあり、また自主ギャラリーをやっていたので、短期間で人間関係が築けた。(特にアート系)

・寒冷地の生活に慣れることができた。北海道弁も!

・(私の場合)車がなくても小径の自転車でも、生活の不便はなかった。

・農作業は送迎付きなので、車がなくても安心だった。

・冷蔵庫なし生活に挑戦していたが、頻繁に買い物できる場所で便利だった。この間に保存食など研究し、諸々試してみることができた。

・いろいろ出かけて土地勘がついた。

・本州から出品アーティストに来てもらいやすかった。
(でも都度、「意外と都会なんだね」と、落胆もされた、、、笑)

などなど。



その後、辺境に移り住んだのは、以下のような理由です。

・街なかすぎて、東京の暮らしとあまり変わらなかった。便利すぎた。そして、お金もかかり過ぎた。

・時とともに、大家さんとの関係が変わってきた。

・仕事も含め、自分たちに生きていく自信がついた。

・農作業で通うバイト先の風景に憧れ、もっと良い風景を見ていたいと思うようになった。

・父が亡くなったのですこしだけお金があり、自分たちの居場所と、作品を常時保管しておける場所を確保するチャンスだった。北海道の土地は安い!

などなど。


豊頃のいま住んでいる場所も、

農家さんバイトのおしゃべりがきっかけで、みつかりました。

世間話って、本当に大事ですね。



周囲は畑しかないこの場所を、

私たちは自分たちの理想郷だと思っています。


遠くに見える日高山脈。

雪のうえに残された動物たちの息遣い。

タンチョウの鳴き声に窓の外を見ると、すぐそこにいたり。

空って365日、毎日表情がちがうとか、

月あかりの明るさに驚いたり。

自然のなかにくらす豊かさを

日々堪能しています。


なんにもないって、、、、いいものですよ。


なんにもないって、

最上級の豊かさだと感じています。


皆さんにも、豊かさのおすそ分けが

すこしでも届きますように。


今日も、愛と祈りと感謝をこめて。





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