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六角形の祓い師

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六角形の祓い師が登場する作品をまとめたものです。
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2023年12月の記事一覧

【掌編】君に贈るもの、その価値。

【掌編】君に贈るもの、その価値。

誕生日ぐらい顔を見せて頂戴。
そう言われたから、自殺したんです。

扉の向こう側、君は答えた。

「甘いケーキも、大好物のフライドチキンも。プレゼントだってばっちり選んだ。後はあなたの笑顔だけ。そう促され、たまらなくなりました」

廊下に座り、僕は黙って話を聞く。目前にある部屋のドアは、よく見る木目調の合板でできたものであるところ、頑なな君の態度と相まり、堅牢な檻のごとき重圧を放っている。

中学

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【短編】羊頭狗肉マーメイド

【短編】羊頭狗肉マーメイド

ありがとう、と誰に御礼を言えばいいものか。

天に御坐す神様か。この世に生を授けてくれた母親か。齢十五に至るまで、僅かながらの善行を重ね、密かに徳を積んできた私自身か。

ショーちゃんに、お昼に誘われた。

四時限目終了のチャイムが鳴り、いそいそと教科書類を机に仕舞って、お弁当をカバンから取り出しいざぼっち飯、というところで、教室の入り口からただならぬオーラを察知。まさかと思い目を向けると、マイエ

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【短編】リボンと数珠とニャーニャーニャー

【短編】リボンと数珠とニャーニャーニャー

冬の色を身に纏い、彼女は春に降り立った。

初めて見たときはどきりとした。綺麗にまとまったショートカットに切れ長の目、真白い肌に刺々しいオーラ。春先の麗らかな陽射しを浴びながらも、その姿は凍てつくような鋭さを感じさせた。

マジもんのクールビューティー。(じゅるり)

同学年でもぶっち切りで異彩を放つ存在、その彼女に会えるのは、選択科目の美術だけだった。隣のクラスなので観に行こうと思えば行ける距離

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【短編】革命前夜のアイソトープ(後編)

【短編】革命前夜のアイソトープ(後編)

十二月。巷では師も走る時期であるところ、しかし、この屋敷では誰も走らず、ひっそりと静まり返っている。

薄暗い二十畳の部屋。庭から障子越しに入る明かりの下、待つ。
随分前に、それも身勝手な理由で一族を離れた身だ。まさか母屋に通されるとは思っていなかった。久々だが、景色、匂い、空気、何ひとつとして変わらない。懐かしさと息苦しさ、その中間の感覚を味わいながら、僕は障子とは反対側、横一列に並ぶ襖をぼんや

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