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割れてしまうのはいやだから

「顕微鏡と例えていいか、分からないけど」

理系の恋人ならではの表現で、深夜の駐車場で彼の考えを話してくれた。

それは私が「恋人」といないときの「自分」を大切にしたいと話したからだった。

彼曰く、顕微鏡でピントを合わせることは距離感に似通っているという。初めにすごく近づけて、話しながらくっきり写る範囲にする。遠くから少しずつ距離を縮めると、ガラスは割れてしまう。割れてしまうのはよくないよね。

だから、近くなりすぎるのは、ちょうどいい距離感を見つけるのに必要なことだよ。

そう話してくれた。

過去の恋愛が終わった時、私は依存していたことに気が付いた。「個体である自分」を認識し、そしてそれ以前が失っていたことを知った。

だから、好きを優先するのは恐ろしかった。恋人に「わけがわからないかもだけど」と前置きし、話してみると、予想外に真剣に悩んで、話してくれた。

彼の横顔を見ながら、好きだなと思った。

それは、自分を好きでいてくれているからではない。彼の人間としての本質をそう思った。

執着と依存と、恋愛。難しいけれど、前よりもはっきりと彼との関係性が見えてきた。

大切にしたい。

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