偏に寄りかかるものが欲しかったんだ。とは言え、部屋の片隅においたそれが、随分と邪魔くさくなってきた。でも捨てられないでいる。
日は幾度となく巡って、それは影を伸ばして、縮めて、たまに僕によりかかられて歪んでいる。
そのたまにが、ひどく安心を呼ぶものだから、離れることができない。好きでもないのに、ただ、居心地が良くて。
そういえば、自立とは一つのことに偏り依存するのではなく、種々多くのことに依存することだと聞いたことがある。
何時か、こいつだけじゃなく、いろんな物が部屋に溢れるんだろうか。随分と想像が難しい。
僕はこの殺風景な部屋にたった1つしかない、だのに邪魔だとさえ思っているこれに、殊の外すがっているらしい。
それからの脱却が、果たして自分にとっての幸福となるのか、考えもつかない。
捨て去ることは、ひどく軽くなることだ。あまりにも空虚が押し寄せて、僕は風に散ってしまわないだろうか。
つ、と、凭れて、思う。なんでもない僕に、これはとても都合が良くて、なんにもならない、縁の糸なんだ。
いっそ誰かが、ちぎって捨てたら、僕は空にでも飛べるのだろうか。
呆れた苦笑に、また、影が伸びる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?