映画グランツーリスモ 解説④:挫折とルマン

うらやまけしからん登竜門編も終わり、いよいよ最終コーナー。
挫折からの復活、そしてルマン編です。



次の舞台はドイツ・ニュルブルクリンク。
ホッケンハイムのすぐ近くにあるのになぜドバイ戦の次なんだとか、そんな細かいことはビールでも飲んで忘れてください。自分もだいぶ飲んでます。

吹替では「ノルドシュライフェ(北コース)」と言っていますが、正確には今回は「GPシュトレッケ(グランプリコース)」と接続したスペシャルコースです。北コースは観客席やホスピタリティもほぼなく、コース脇で観戦するには軽めの登山が必要になります。マシンを整備するピットも小さく少ないので、これだけの台数と観客でレースをする場合はグランプリコースと接続するわけですね。

北コースは1927年に山城を囲むように作られた、細く起伏の大きなサーキットです。コースの外はそのまま「山と森」なので非常に危険で、全長およそ21kmの長さゆえにコース係員もまばらにしか配置できません。映画「ラッシュ」のニキ・ラウダがクラッシュして炎上したのもこの北コースで、フォーミュラカーには危険であることから、以降この北コースでF1が開催されたことはありません。

こんな危険なところでレースしなくてもと思うかもしれませんが、別に危険だからここでやっているわけではありません。レーサーの技量差が出やすく、そして有名だからです。すみません嘘をつきました。最大限の安全を担保した上での、度胸試し的な側面はやっぱりあると思います。

明らかに急いで死亡フラグを立てていくヤン。

そして事故。


こちらが現実の事故の映像です。
映像からは確認できませんが観客が1名亡くなっているので、視聴にはご注意ください。

映画では劇中にもクレジットにも名前すら出されないので、ささやかですがお亡くなりになられた観客のAndy Gehrmann氏にここで哀悼の意を表します。氏へのこの一文は本来、映画のエンドクレジットにあって然るべきものだと私は思います。

そして、例の野郎が

「亡くなった観客にとって、この映画は"a lovely memorial"になった」
(訳すのもしんどい)

とインタビューで発言していることについては本当に恥ずかしく思いますし、この映画のエンドクレジットに彼の名前はあっても日産とニスモの名前がないことは、この現実に食い込んでくるタイプのクソ映画にとって唯一の救いです。

【ルマン3位は2013年。実際の事故は2015年】


また、この事実の入れ替えの是非については他の人がさんざん意見を出しているので、私からは特に何も述べません。人が死んでいるので茶化すわけにもいきませんから、以下、事故の内容について真面目に解説します。

このような事故は頻繁ではないですがいくつかの前例があり、有名なものでは1999年ルマン24時間でのメルセデスチームの事故が動画で残っています。


予選から決勝までに3回も空を飛んで係員と観客を危険に晒したあげく(動画は3回目)、メルセデスはレースを棄権して撤退。この1999年から現在まで、メルセデスはルマン24時間レースから姿を消したままです。人死が出なくて本当によかった。

なぜこういう事故になるかですが、原因は単純で、車体の下に大量の空気が流れ込んだためです。

タイヤが剥き出しの「フォーミュラカー」と異なり、ボディと屋根がある「GTカー」では床面が非常に広くなっています。また、レーシングカーの床面は空気の流速を上げて「地面効果」を得るために真っ平で、かつ地面スレスレになるよう設計されています。

これにより、サーキットを走ると床と地面の僅かな隙間に流れこんだ空気の流速が上がってそこだけ気圧が下がり(負圧になり)、車体が地面に吸いつけられます。

ですが、例えば坂道の頂点で車体の前半分だけが浮くとどうなるか。
そして、そこに運悪く向かい風が流れ込んでしまうと?

凧の離陸と同じです。大量に入り込んだ空気で車体の前半分が持ち上げられ、さらに多くの空気が流れ込み、いっそう大きく持ち上げられます。また、これまで空気に押さえつけられていたボディの上面にはまったく風が当たらなくなりますから、上面は負圧 / 下面は正圧という、飛行機の翼と同じ状態になります。

ここからどうなるかはケースバイケースです。動画のメルセデスの場合、車重のわりに速度が出ていたので車体後部も完全に「離陸」し、地面に対する車体の角度(迎え角と言います)が90°を超えて、車体やや後方にある重心点を中心に数回転しながらコース外に飛んでいきました。

ヤン選手のケースではGT-Rは前にエンジンがあり重いためか迎え角の上昇がやや穏やかでしたが、最終的にはやはり迎え角が90°を超えて後部からタイヤバリヤに激突。コース外に飛び出しました。

ではこの事故は回避可能だったか?についてですが、実際のところ回避は困難だったと思います。

理論的には、坂道を登っているときにブレーキをかければ速度が下がって流れ込む空気の量が減りますが、レース中にそれは現実的ではありません。前の周に全開で走れたなら、いまの周も全開で走るのが仕事です。

ニュル北はGPコースとあわせて1周8分ほどの超長大コースですが、8分のあいだに風向きや強さは確かに変わると思います。劇中でもおっさんのモニター(レーステレメトリーといいます)に風速10mと風向きが表示されていました。
が、広いサーキットのすべてのコーナーに風力計があるわけではなく、この坂道で風速何キロになったらこの車は飛ぶ、というデータもないですから、助言は困難です。また、250km/hで走ってる車には常に秒速70mの風が吹いていますから、そこに吹く風が風速5mから10mになっても…というのもあると思います。

また、浮きそうになったらブレーキをかける、というのも困難です。前述のルマンで「飛んだ」ドライバーによると予兆は「まったくない」そうで、事実、メルセデスの事故動画でも4輪が浮くまで1秒かかっていません。実際のところ前輪が浮いた時点でほぼ手遅れなので、接地感が無くなったと感じた瞬間に車体が飛んでいると思います。

結局、事故を受けてのコース改修で、現場の手前の丘は削られて平らになりました。この丘(Flugplatzコーナーの手前にあるQuiddelbacher Höhe)では、1980年にもフロントウイングが破損して車体前方だけ地面効果を失ったF2マシンが空を飛んでいます。これまで観客が犠牲にならなかったのは単なる幸運だったのかもしれません。

つまるところ、高速化と空力の先鋭化が著しかった近年のGTマシンを、設計の古いサーキットで走らせてしまったレース主催者の責任、ということになると思います。

なお、GT7でも風向きや強さの変化が再現されていますが、条件が重なったとして同じようになるかは…ちょっとわからない。ただゲームの仕様上、コース外に出て行くことはないです。不謹慎なので自分でグランツーリスモ上の再現はやりませんが、アセットコルサ(別のレースゲーム)で再現してる人は見た気がします。

下の動画でヤン選手本人も言っていますが、GT7はどうも空気力学の再現がゲーム的なんですよね。ダウンフォースしか再現されてないというか。


映画に戻りましょう。

意識を失い、ヘリで運ばれるヤン。

出演はニュルにある本物のドクターヘリです…と思いきや、満載のはずの医療器具は取り外され、ストレッチャー乗せるだけの普通のヘリとなり果てています。おっさん乗せないといけないのでしゃーない。

過去の事故のトラウマなのか、それとも筆者みたいに「メーデー!:航空機事故の真実と真相」を観すぎたのか、おっさんは飛行機・ヘリ・レースカーが苦手です。

でもおっさん、ヤンが搬送される時は躊躇なくヘリに乗るんですよね。その師弟愛に涙腺ゆるんで涙にブラックボックス漬けれますよ。この映画のヒロインは、東京には来るくせに病室には飛び込んでこないあんな薄っぺらな空想上の女じゃなくて、間違いなくおっさん。もしアニメ化したらおっさんは間違いなくツンデレ美少女。

なお、

【肉体的に深刻な怪我はしていない】


現実では、ヤン選手が事故後すぐ観客に付き添われて立って歩く姿、その後にコース脇でへたり込んでショックを受けているらしい姿が映像に残っています。事故の翌日には検査入院から退院して、1週間後の次のレースに出場。意識を失わなかったぶん映画よりショックは大きいと思うので、それを「無事」と言っていいかどうかは、やや抵抗がありますが…

病院で眠るヤン。
出てくるバイタル。

えー、心拍74、血中酸素97%…

めっちゃ健康やんけ!!!
なんなら今の俺のバイタルのほうがやばいわ!!
今すぐ起きてご両親に無事を伝えんかい!!!!

(このあたりは映画のキモだと思うので、解説をちょっと飛ばします)

唐突に挟まれる、全裸中年男性のサービスシーンシャワーシーン。

フォーカスが外れているので分かりにくいですが、おっさんの右肩には事故による火傷の痕があります。いや、おっさんの裸がえっちなのは分かるけど、そこはウォークマンじゃなくて肩にフォーカス合わせましょうや。スポーツウォークマンがシャワーでも使えるのは分かったから。

ヤンのプレゼントもウォークマン。
ははーん、なるほど。Appleが1995年で倒産した世界だな?

機種は日本未発売のNW-E394。
2016年のモデルですね。流行語はPPAP。

せめて2011年か2023年のどっちかに合わせなよと思ったんですが、これ以降のウォークマンは外から本体が見えないパッケージになったらしく、おそらくはそういう理由で選定されています。ここまで読んでいただいた方はご存知のとおり、この映画はどこまでも宣伝商材>>>時代考証です。

ウォークマンの箱を手に、涙ぐむ全裸のおっさん。
おっさんのために操作がシンプルな機種を選んでくれたヤンの優しさに、iPod派だった僕も思わず全裸で涙。
ソニーはバッテリー交換しておっさんが一生使えるようにしてあげてくれ。

ただ、その箱が…

箱が、安っぽい…
中古かと思った…

と思ってヨドバシカメラのシーンを見直したら本当に中古だった。涙も乾くわ。高額の契約金もらって久兵衛で彼女とSUSHIを食べて、でも恩人には中古を贈るヤンのメンタリティが俺には理解できない。これがZ世代若さか…

しかしウォークマンなんて子供へのプレゼントにもよく使われるだろうに、どうせ捨てるからって箱をあんな適当に作るあたり、ウォークマンは何やっても結局iPodに勝てなかっただろうなあと思います。そら、親もちょっと高くてもiPod Touch買って与えますよ。箱が立派だから喜んでくれそうだもん。ところでこの記事はMacBookで書かれています。

なんやかんやあって復帰。

ホテルの外観が出てきますが、これはニュルブルクからちょっと離れた街、アーデナウの"Hotel Blaue ecke"。ニュル観戦の定宿として愛用しているモータースポーツファンもいるようです。ただし3人が会議しているビアホール?はこのホテルのものではなく、いかにもとってつけたドイツみたいな内装なので、たぶんドイツ国外と思われます。オーランドブルームをドイツの片田舎に呼ぶわけにいかないからね。仕方ないね。ロケ地が別の国だと途端に解像度下がるのがザ・ハリウッド。

ニコラスくんはシム出身レーサーをレースから追い出す活動を始めたようです。君がおっさんに向けるその激重感情が凄すぎて、妻がニコラス×ジャックでアップを始めてしまいそうだよ…

なお、現実ではそんな活動、聞いたことがありません。

どう考えても追放されるべきは治安悪いオンライン部屋みたいな運転をしているCAPAの側だと思うのですが、他のチームも賛同している模様。

…ねえヤン、きみも画面に映ってないところでなんかやらかしてない?
おっさんもそうだけど、絡みのないチームにそこまで嫌われるの相当だよ?

あとゲーマーなんてSNSが主戦場みたいなところあるのに、なんでCAPAよりも炎上してるのさ君は。ドバイ戦のオンボード映像を切り抜き投稿してCAPAを逆に燃やしたらんかい。

ヤンをルマンの表彰台に上げる、という計画を立案するダニー。

「おいおい本気なのか?ヤンをルマンの表彰台に?」

(ジャック)

【ルマン参戦は既定路線。ヤンが初めてではない】


おっさんってヤンより背は低いし目は澄んでるしお肌もきれいだから、もう実質美少女だよね。まあそれはともかく、史実の2013年の日産はエンジン供給などで間接的にルマンへ参戦しながら、ワークスチームによるLMP1優勝への長期計画を実行している段階です。第1期のGTアカデミーでもルマン参戦については言及されており、ヤン選手の参加した第3期GTアカデミーもルマン24時間レースで立ち上げ式が行われています。

ですから、ゲーマー出身のレーサーを短期育成でルマンに参戦させるのは企画時からの既定路線であり、最終目標・出口戦略のひとつだったと思われます。でなければ実質アマクラスであれだけの勝ち星を集める(=ルマン出場要件を性急に満たす)必要がない。

また、そもそもヤン選手がGTアカデミーに参加する前の2010年の時点で、既にGTアカデミー1期出身のルーカス・オルドネス選手が同じルマンLMP2クラスで2位になっています。順位でみるとヤン選手より上です…いや、両名とも凄いんですが。

gran-turismo.com より

これは2011年にあった現実のGTアカデミー3期立ち上げ式。
左から3番目が史実のヤン選手。受講生たちの前に置かれているのは前年にLMP2で2位に入ったルーカス選手たちのマシンです。

ルーカス選手が映画にならなかったのは、彼が幼少から16歳までカートレースをしていた=純粋なゲーマー出身とは言えないこと、GTアカデミー参加時点で23歳とやや年齢が高かったこと、そして…言うかどうか一瞬悩みましたが、ポリティカルコネクトレスだと思います。自分もどちらを映画化するかと言われたら悩むことなくヤンにします。

資金はどこからとか、マシンの準備はとかは、というかそんな市民健康マラソン大会みたいなノリで出られるのか(実際には主催者側からの招待状が必要)とかは置いておいて、ルマン24時間レース参戦にはあと2人のドライバーが必要です。

「(GTアカデミー同期の)マティとアントニオ、彼らならできる。
 シムレーサーが世界に通用することを示さないと」

(ダニー)

すべてを振り切って宮崎で小さな修理工場やってたはずのマティ、また走り出すしかない模様。

【ルマンでヤン選手と走ったのは、GTアカデミーの先輩と超ベテラン】


現実の2013年ルマンでヤン選手とチームを組んだのは、前述のルーカス選手、そして超ベテランのミハエル・クルム選手です。モータースポーツ好きの人ならクルム選手は超有名ですし、そうでない人でもテニスの伊達公子選手の夫、と言えばピンとくるかも。

クルム選手のレースデビューは1988年。もちろん最初期のシミュレーターに乗ったことはあるだろうし、おじさんになってからグランツーリスモで遊んだこともあると思います。ですが、言うまでもなくゲーム出身のレーサーではありません。

いやまあそりゃあ、ルマンは経験が物を言うレースですから、1998年からルマンに参戦してるベテランと、前々年2位の先輩と組ませますわな…

あと細かいことを言えばこの2013年のルマン参戦もチームニスモからではありません。2014年も別チームからの参戦。2015年?そんな昔のことは忘れた。

というかクルム選手いま何してんだろな〜と思って調べたら、ニスモドライビングアカデミーの校長になってたし、豆柴飼ってたし、しかも伊達公子選手と2016年に離婚してたの思い出した。なので元夫です。日本語はめちゃめちゃ上手なのですが、この映画については私が知る限り一言も喋ってません。なんでやろね(すっとぼけ)。

クルム選手はともかく、ルーカス選手が不憫になってきた。これが「実話」と言われたら、俺なら気が狂う。ルーカス選手はGTアカデミーの先輩として後輩のヤン選手を助け、多くのアドバイスをしたそうですが、きれいに存在抹消されてます。人の心とかないんか。彼にとってこの映画は、自分が存在しないことになっている存在しない記憶です。

ニッサンが"ルマンに参戦する魔法ゴーンズマネー"でマシンと資金と参戦枠を用意してくれました。自腹を切って参戦してるニコラスくん親子のほうがよほどレースマンシップがあるのではとか、そういうことを言ってはいけない。というかこんな因縁あって事故ばかり起こしてるチームをどちらも招待するなんて、ルマンの主催者は徳川忠長か何かか。

輸送機から出てくる、市販車とは似ても似つかない異形のマシン。

あの有名なフォーミュラワン…ではありません。
"Le Mans" Prototype, 通称LMPと呼ばれる、耐久レース専用にゼロから設計された究極のレースカーです。フォーミュラマシンよりも重いために運動性はやや劣りますが、抜きつ抜かれつのバトルが重要な短距離レース用フォーミュラと異なり、こちらは抜群の長距離走行能力を備えます。それでも競技規則による馬力規制を取り払えばその速さはF1を超え、マシンによっては先ほどのニュルブルクリンク北コースを5分19秒で1周するほど。

レース専用なだけあって市販車との関連性は一切ないのですが、場合によってはプロモーションを目的に市販車と同じ名前が付けられることもあります。これはニッサンの用意してくれたマシンですし、きっとこのマシンにもニッサンの高性能市販車と同じ名前がついていることでしょう。例えば……

うっ!……
あぐっ…あ、頭が……

百億の予算のゆくえ……
ずさんな経営統制……
とらわれた天使の歌声VRX30A……
エル……エム……
ニスモ……

お薬ドライブのんだら正気に戻りました。
解説を続けましょう。

さて、最高にかっこいいこのマシンですが、

【映画のマシンはルマンを走っていない】


ヤンたちに用意されたこれは「リジェ・JS PX」。フランスのコンストラクター、リジェが2021年に発売したマシンです。

このマシンはそれこそ金持ちジェントルマンドライバーのリアルグランツーリスモ…もとい、リジェの言葉を借りるなら「経済的に余裕のある特別な顧客にサーキットでの刺激的な体験を提供する」ために製作されたマシンです。ラップタイムこそ最高峰のLMP1クラス相当ですが、レースの車両規則に従って製作されているわけではないので、現実世界ではルマンを含めどのレースにも参加できませんし、していません。レーシングカーではなく高度なアトラクションの一種とも言えますね。


現実には当時、LMP1ではトヨタとアウディが企業のプライドをかけてしのぎを削っていました。ただ、個人所有のできるGT3と違ってLMP1は大企業から借りてこないといけませんし、たとえ史実のとおりにアウディが勝つ内容だったとしても、観客の死をエンタメにしている映画に大企業が認許を出す可能性はゼロでしょう。

なお、後ほど爆散するドイツ野郎のマシンは「リジェ・JS P2」で、むしろこっちは実際のルマンに出ていますし、ヤン選手は2014年にこのマシンで総合9位・LMP2クラス5位を獲得しています。キャパのマシンはその改良型の「リジェ・JS P217」。

いずれも現時点でグランツーリスモには収録されていないのですが、現実のヤン選手たちが乗ったザイテック・Z11SN(2013年仕様)は、彼らの活躍もあってか同年12月発売のグランツーリスモ6にだけ収録されています。(正確には2015年4月のアップデートで車種追加)

(From Wikipedia Commons, David Merrett from Daventry, England)

画像は2012年仕様。いかんせんこれだとバイザーを上げて撮影できないし俳優が秒速70mの風に晒されるので、リジェから借りてくるのは致し方なし。リジェ側も宣伝になってWin-Winです。

えっ?
そもそもNISMOから借りてくればいいじゃないかって?

……

さあ!いよいよルマンです!

まずは空撮から。

いや?
ルマンってこんなんだったかな??

最終コーナーってシケインじゃなくてヘアピンだったかな!?!?
俺がグランツーリスモで走ってるルマンとだいぶ違うな?!?!

でももういいや!ここがルマンで!!
ここがルマンです!!さっきのハンガロリンクに似てるけどルマン!!

もうそんなとこでいちいちたまげてたら終わらねえよこの記事!!
巻きでいこう巻きで!!!

事故のトラウマでヤンがピンチ!!!

出てくるウォークマン!!!

流れるケニーG!!!

ヤン復活!!!

ウオオオオ!!!!

…あれ、これ映画「ウォークマン」だっけ?

「グランツーリスモ」は?
「グランツーリスモ」で勝って??
「グランツーリスモ」で勝って???

と思ったら、ヤンが独断でラインを変更!!!
他の車と全然違う、グランツーリスモで練習した「俺だけのライン」だ!!!

ウオオオオ!!!!

高校生が授業中に空見ながら考える俺ツエーだ!!!
学校にテロリスト!!!全員倒す俺! 俺!! 俺俺俺俺!!!!
(Spin Out!!)Hoooo〜!!!真夏のユノディエール!!!!

実況「チートモードでも使っているのでしょうか!」

急速に冷静になる、俺。

…その疑惑は…うん…
映画の冒頭から…あった…よね…?

たぶん遠心力-0.5、タイヤ消耗-0.5、タイヤカス付着なし、あたりです。
データロガーを調べられるとバレます。ここに転生するときに神様にスキル付与してもらったんじゃないかと思います。

実況さあ、うまいこと言ったつもりだろうけど、言葉には気をつけろよ。
冗談になってねえんだわ、それ。

「チームの最速レコード更新だ!」
「違うぞ!このサーキットの歴代コースレコードを更新した!」

(チームクルーとおっさん2号)

【なんのレコードも更新してない】


してません。

彼らが参戦しているのはLMP2クラス。
並走しているトップカテゴリーのLMP1クラスとは馬力だけでもおよそ1.5倍の違いがあり、ラップタイムでまず上回ることはできません。

やっぱりチーt(ry

現実の2013年ルマンの予選ラップタイムで比較すると、LMP1のトップが3分22秒なのに対して、LMP2のトップが3分38秒。ヤン選手たちの車は22台いるLMP2の予選12番手で、記録は3分49秒です。
LMP1で最も遅かった車でも3分36秒ですから、この年はすべてのLMP1がLMP2より速かったということになります。

また、耐久レースではよほどの接戦でない限り、本戦で並外れたレコードを出すことにあまり意味はなく、むしろ有害です。マシンに無理をさせれば、後でそれだけ修理や補給が必要になる可能性が高まるわけですから。駅伝選手がいきなり全力疾走し始めたようなもので、コース上で故障が出てピットに戻れなければ3人まとめてリタイアです。チームからしたら完走を諦めた上でのヤンのスタンドプレーにも見えるわけで、喜ぶ以前に「予選は寝てたんか?」と言いたくなる状況でしょう。

もちろん、現実にはヤン選手が事故のトラウマ(イップスとは異なる)で順位を落とした記録も、突然独創的なラインで走り始めてごぼう抜きした記録もありません。そもそも事故の時系列が違うので当然ではありますが、それを抜きにしても、ゲームで何千回も走ったマシンは現実には用意されていない=練習と同じラインは取れませんし、もっと言えばタイヤの発熱も消耗もピットタイミングも、なによりグランツーリスモと現実リアルは未だ物理法則が違いすぎます。


…グランツーリスモのことは嫌いじゃないけど、ゲームと現実の区別はやはりつけるべきだと思うんですよ。その上で、現実に活用できるところは活用しようという話であって。リアルなゲームだから現実も同じようにクリアできる、は根拠としては分かりやすいけど、さすがにリアリティが無さすぎる。

というかレースの順位と同じくコースレコードも立派な記録なわけですが、そこを改ざんするのは道義的にどうなの?

時速300km/hでLMP1マシンをコントロールしながら、強烈なGに耐えて0.001秒を削って、死に物狂いでルマンのコースレコードを出して、でも自称「実話を元にしてます」って映画であっさり自分の記録が無かったことにされて、それで映画見た人から「あなたも同じ年のルマン走ったんだよね?どう?ヤンってやっぱり速かった?」なんて言われた日には、俺なら気が狂いますよ。しかも、個人じゃなくて当日一緒に戦ったチームの栄誉が無視されるわけですからね。

みなさんだって「実話を元にしてます」な野球映画で「2023年のワールド・ベースボール・クラシックMVPは…(ドコドコドコドコ、ドン!!)…チェコ代表の、ウィリー・エスカラ!」と言われたら「ちょっと待て?大谷は?」となるでしょう?映画は作れそうだけど。

ここはかなり、やってはいけないことをやってしまっていると思います。

【せめて他人の栄誉は盗むな】


そしていま改めて見返したら、ヤンの出したコースレコードは「3分14秒791」だそうです。見覚えのある数字です。

現実のルマン歴代コースレコードは、日本の小林可夢偉選手が2017年にTOYOTA TS050 HYBRIDで記録した「3分14秒791」です。

スゥー…

ハァー…

…私のこの解説はたいへん長くなりまして、ここまでお読みいただくのも大変だったと思います。ありがとうございます。

でも本当の最後に、これだけは覚えていってください。

現実のルマン24時間レースのコースレコード「3分14秒791」は、日産ではなくトヨタの、LMP2ではなくLMP1の、イギリスではなく日本の、ヤン・マーデンボローではなく小林可夢偉選手の記録です。
2017年の予選中に記録され、2024年現在まで破られていません。
劇中、ヤンのコースレコードを見てオーランドブルームが「嘘だろ!」と叫んでいますが、そうです。嘘です。

なあ監督、いや、もう制作側の誰でもいいや。
日産でもポリフォニーでもいい。

これを実話だと言うのはStolen Valor、明らかな「盗み」じゃないのか?

こんなことをして誰も良心が傷まないのか?
それとも何か?モータースポーツなんて映画人にとっては世間に数あるネタのひとつで、どうせ詳しいことはみんな知らないし、いくらでもオモチャにしていいと思ってるのか?

ああ知らないよ!なにも知らない!
だからみんなこの映画を絶賛してる!

モータースポーツよう分からんくても、かっこいいマシンが爆音で駆け抜けて、おっさんがデレて、女の子がキスをして、知らん人だけど人が死んで、主人公が泣いて、でも復活して、悪い奴らが爆発四散して、最後は主人公が表彰台に登ったら、たいていの人はアドレナリンどっばどば、スッキリ気分よく映画館を出ていってくれるからね!

しかもそれが実話だなんて言われたら、このクソみたいな現実にも少しは夢が持てるってもんですよ!まあ実話じゃないんですけどね!

なんなんでしょうね、この映画。
この映画がやっていることは事実の脚色じゃなく、事実の破壊です。
こんなものは"Based on a True Story”じゃない。"Based on a Fake Story”ですよ。

「フィクションだから許される」というフレーズはよく使われますが、逆に言えば「フィクションじゃないと許されない」内容は確実に存在すると思います。

また、この映画の監督がメカ好きなのは知っていましたが、監督にとって興味があるのは「メカがどんなすごい記録を出したか」であって「出した人間が誰か」はどうでもいい、ということなのでしょうか。その思想はもう人間辞めてますよ。ロボコップに志願すべきです。

監督は自称モータースポーツ好きでGT-Rも3台持っているそうですが、好きというのは所有する物ではなく行動で示されるべきものだと思います。少なくとも私は、この映画をディレクションした人たちにはもう2度とモータースポーツに関わってほしくないです。現実でもグランツーリスモでも。

なお、前述のとおりこの映画のエンドクレジットにはリジェやハンガロリンクがSpecial Thanksされていますが、NISMOやNISSANの文字はありません。ここまで解説したなら、その理由は推して知るべしと言ったところでしょう。自分がNISMOの人間なら腹を切ってでもこの映画のクレジットに名前は載せないし、マシンも貸さない。

競技へのリスペクトがないのはもういいから、せめて現実を踏みにじらないでくれるかな…
>そっとしておこう、してほしい…

が。

ふと、ここで自分の中に生まれる、恐ろしい疑念。

もしかしてこいつら、やるんじゃねえか。
やらないとは思う。思う。さすがに。

が…まさか…
アレを…

順 位 の 、改 ざ ん を。

現実では総合9位、LMP2クラス3位。
出走56台のうち、完走は41台。
LMP2は22台が出走して、うち完走は12台。

ややこしいことにヤン選手はゴールしたときは4位。でも3位の車がレース後の調査で規則違反が見つかって失格になり、繰り上がってのLMP2クラス3位。なので表彰台に上がってのシャンパンファイトはやっていません。

でも、ここまでの経緯を考えると

本当に……
やりかねないっ………!
映画のために……!
改ざんだって……!

ゴールした時点で3位とか……!
下手すると、優勝……!まで……!

おいおい、なんで結果わかってるのに、こんなにハラハラしないといけないんだ?!

まあこの映画、コースレコードのアレといい、細部といい、撮ってる方ももうだいぶヤケクソになってきたみたいなので、こっちもヤケクソで行きましょう!!!

おっ?!?!
縁石がちゃんとルマンのミシュランカラーに塗り直されてる!!!えらい!!!

でも、そんなところに気がつくオタクはここがルマンじゃないとすぐ分かるし、そんなところに気がつかない一般人はここがルマンじゃないことが分からない!!!

だから全くの無駄!!!でも努力がすごい!!!だからここで解説!!!
まあミシュランも公式スポンサーなので、出しておかないと怒られるのかも!!!

コースを映さないために多用されるマシンと顔の接写!!激しく動く画面!!!気持ち悪くなる俺!!!
最終的にハンガロリンクをルマンに見せる努力が万策尽きたのか、突然増えるCG!!!しかも動かすと粗がバレるのかほぼ止め絵!!!
そりゃそうだよ!!!ハンガロリンクにはルマンみたいなあんな長い直線ないもの!!!
ドームの部分だけCGで札幌ドームにしても、甲子園は甲子園だよ!!!

ワッ…!!係員の動きとモデリングがグランツーリスモ7と同じ!!!流用!!!そのまま流用!!!

そうか!シミュレーターをリアルにするんじゃなくて、リアルの方をシミュレーターに寄せればよかったんだな!!

いいわけあるか!!!!

これは現実なんだろ?!?!?
現実のルマンを見せてくれ!!!!

いつも縁石に乗るか悩むダンロップカーブは?
その先のフォトジェニックなダンロップブリッジは?森のエスは?
自分の腕だと10回に1回くらいしか進入が決まらないテルトル・ルージュは?
映画だと360km/hだけどLMP2の馬力だとほんとは320km/hくらいしか出ない超長大ストレート、ユノディエールは??
ノーブレーキ進入が最高に楽しいポルシェコーナーはどこ???

もうさ、こんなリアリティがカケラもない映画でわざわざ見なくても、バーチャルのルマンならゲームでいつでも見れるんだよ!!!

あのルマン1時間43分耐久クソ映画、ミシェル・ヴァイヨンですら現実のレース中に撮影してるんだぞ!?!

ライブ・エイドの会場はナゴドじゃなくウェンブリースタジアムに見えるから盛り上がるんであって、明らかにハンガロリンクに見えるサーキットを現実のルマンだと言われても、引きつった笑いしか出てこないだろうが!!!

ブチ切れすぎて口調がホッカイロレンみたいになってしまったので、いったん落ち着きましょう。怒りは何も生まない。光堕ちしなきゃ。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー

ちなみに監督は、同じく現実のルマンでレースしながら撮影した往年の名作「栄光のル・マン」を参考にしたと言っています。たしかに、出演者がタグホイヤー・モナコを着けてる点は同じですね。

ところで

「クラッシュして炎上した敵車のカラーがAppleのレインボーロゴw」

という意見を見たので

「はっはっは、あれは『アルカンシェル』という伝統のカラーで、ルマンを走ったチーム・プジョーのプジョー905を元に…古くは世界選手権を制した自転車のフレームに…」

というニチャついた解説を書こうと思ったのですが、いま見返したらアルカンシェルの5色の虹じゃなくてAppleと同じ6色の虹になってました。そういうところだぞSONY。ダサいぞ。

なに?プジョー・アルカンシェルじゃなくて、Appleがスポンサードして1980年に出走したポルシェ935K3のパロディ?もっとやべえでしょ。


なお、現代のレーシングカーがあの程度のクラッシュであそこまで燃えるのは不可解です。燃え方がどう見てもレーシングカーのクラッシュというより航空機の墜落なので、これはメーデー案件です。設計チームには建物が国会議事堂かってくらい立派なFIAもとい、建物がしょぼいBEAから事故調査が入ることでしょう。

(From Wikipedia Commons, Pline)

こちら、ざっくり6000BEAくらいはありそうな自動車業界を支配する悪の巨大組織国際自動車連盟・FIA本部ビル。

モデルにしたであろう2012年のトヨタの事故でも、もちろんマシンが燃えたりはしていません。


映画のこれも現実のこれも、競り合いの結果ではなく単なる後方不注意です。青いトヨタはLMP1クラス、赤いフェラーリはLM-GTEアマチュアクラスと部門が異なり、同時に走ってはいますが競ってはいません。通常はより速いカテゴリであるLMP1やLMP2に道を譲らなければなりませんが、抜かれる側がミラーを見ていないとこうなります。

え?
ヤンはさっきLM-GTEに抜かれて順位が落ちてたよって?
気にしないでください。たぶんバグです。

なんかもう走ってる車も時代がごちゃ混ぜですし、製作者のモータースポーツに対する解像度が低いのかそれとも視聴者に合わせているのかおっさんの無線は終始トンチンカンなことしか言わないし、インド系のヤンの友達はイギリス在住のはずなのにわざわざ本場インド人みたいな"Hinglish"を叫ぶしで観ているのがしんどいのですが、自分の大好きな…いや大好きだったゲームの映画ですし、最後まで見届けなければ。

おっさん、ピットの作業員が落としたナットを見つけて自分で締めるファインプレー!
おっさんが格好良すぎて、俺の心のナットもガチガチに締まったぜ!

でも、おっさんごめん…ピットクルーが無能だからっておっさんが手伝ったら、現実にはその場でペナルティ、悪くて失格です。ピットレーンで作業するクルーはドライバー同様に事前登録制で、人数制限やヘルメットと耐火服着用などの安全規定があるからです。

そんなことくらいで?と思うかもしれませんが、ピットレーンは狭く燃料も扱っているので、すべては安全のため。モータースポーツは危険、だから全力で安全に、は多くの先輩が文字通り命懸けで確立させた共通認識です。他のスポーツと同様、公平性と安全性を無視して得る栄誉にはなんの重みもありません。

これは映画ですよ、と思うかもしれません。ですがベンチから補欠が飛び出てきて捕球送球するとか、監督が防具もなしに突然キャッチャーやるのが許されるのは「アストロ球団」であって、自称実話の野球映画で見せられると楽しめないはずです。許されているのは、ひとえにこれが野球ではなく、誰もルールを知らないモータースポーツだから。

でも、こんな映画が許されるほどに知名度の低いモータースポーツにも当然ルールと道徳は存在していて、現実の参加者の99.999%がそれを尊重しています。もし、モータースポーツはことさら危険に描写しないと面白い映画は作れないんだ、ということであればそれは作り手側の力量不足だと思いますし、リアルなレースの面白さが描けないのであれば、作り手側は最低限、現実ではなくフィクションと言って売ってほしいと思います。

なお現実では24時間も走ってると順位は数周から十数周は差がつくし、ガレージに入れての修理も珍しくありません。あのくらいのピットミスで順位が入れ替わるのはF1レベルで実力が拮抗した短距離レースの描写なのですが、脚本家の引出しが"Formula 1: Drive to Survive"しかないのと、映画を見たコナン君が「ヤンはあんなに速かったのに、どうして1位じゃなくて3位なの?」という当然の疑問をぶつけてきた場合に備えたエクスキューズです。念のためアントニオもこむら返りさせて順位を調整します。アントニオの筋肉さんが、こーむらがえった。

そんなことやってたらレースはいつの間にか朝に。
初夏のルマンの美しい朝焼けは、残念ながら映画ではカットです。
冬のハンガリーだしねここ。

おっさん、ヤンの活躍に終始テンション高め。
そのテンションでいつ寝たんだおっさん。寝不足で目をこする可愛いおっさんも見たかったよ俺は。ヘッドセットの外し方がまた可愛いんだ、このおっさんは。

というかおっさん、レースエンジニアのはずなのに無線でちっともエンジニアリングな助言をしてくれないので本当にレースエンジニアなのか怪しいと思っていましたが、ピットレーンでのあの生き生きした仕草を見てると、煽りでもなんでもなくメカニックのほうが確実に向いてる気が…

でもヤンにとってはおっさんだけが頼りですから、あの憎きCAPAを倒すため、かつてルマンを走った伝説の男のアドバイスを聞きましょう!

「直線じゃパワーは同じだが、コーナーなら抜くことができるぞ!」

(ジャック)






ええい!!
それはもう、普通に走ってりゃ勝てるマシンなのよ!!!
だってサーキットには直線とコーナーしかないじゃろが!!!

ランエボと同じ直線加速ができるハチロクに乗った藤原拓海くんなのよ!!!
いろは坂のサルでも勝てるのよそれは!!!むしろそんなマシンで、なしていまその順位なん?!?!

なんだかんだあって3位でフィニッシュ!
4位フィニッシュの繰り上げ3位とかややこしいし、これでいいと思う!

グランツーリスモでよく見た勝利ムービーが現実とオーバーラップ!
そういやこれグランツーリスモの映画だった!
ただ悲しいことにこれ、どうでもいい金策レースで勝っても見せられる見慣れたムービーだからかあんまり感動しない!チケガチャで2億円当たったときのほうが記憶に残ってる!

恒例のシャンパンファイト。豪華なビールかけだと思ってください。
映画「フォード VS フェラーリ」のフォード・GT40に乗って優勝したダン・ガーニー氏が始めたとも言われていますし、氏がアメリカからルマンに持ち込んだとも言われています。映画の後でGT40に乗った人です。

史実だと表彰時点では4位だからシャンパンファイトしてないんですが、最終的な確定リザルトは3位だったんだし、映画ではシャンパンファイトしてもそこは全然いいと思います。本当におめでとうございます。優勝に改ざんされてなかったので、それだけでも個人的には大満足です。ちなみに総合9位(10位)だからいずれにしてもシャンパンファイトの権利がないという意見も見ましたが、LMP2もちゃんとクラス単独で表彰式やりますよ!

ただなんかここ、おっさん2号が「よくやったな、”noob”」って言ってる”noob”が吹替では削られてたりします。吹替は台詞回しもぎこちなかったりするので、どっちもどっちだけど総合的には吹替より字幕が好きだったかなあ。

特に、おっさんがヤンに「もうお前はトップレーサー『のひとり』だ」と言う吹替のシーンはモヤっとする。確かにもっと速いレーサーが世界にはいるでしょうが、おっさんにとってヤンは、字幕のとおり「世界最高のレーサー」でしょうね。この最後も最後の感動的なシーンで one of the ではなく the best in the world がどうしてそんな吹替訳になるのか、自分には理解できない。素晴らしい声優にこのような吹替訳を読ませるのは、作り直しが効かないだけに冒涜的です。

いやあ終わった終わった。
素晴らしいお話だった。
これが実話だなんて信じられない。

そして流れてくる字幕。

「彼らのル・マンでの成功がモータースポーツを変えた」

(はあ?)

本当に…!
実話です、とさえ言わなければ…!
本当に、素晴らしいお話だった…!本当に…!

じゃあそろそろ締めましょうか。

奈倉(なぐら)!!柏木(かしわぎ)!!劉飛昶(りゅう・ひちょう)!!
すまん遅れて!!ダレン・コックスがベン・ボウルビーに開発(つく)ってもろてたGT-R LM NISMO、あんたら週刊実話にスポンサーついてもろてようやく完成したんや!!名機度5の最強マシンに仕上がっとる!!

急いで行くで!!ルマン24時間レースへ!(ニカッ

おしまい。








P.S.

もし本当のルマンに興味があるなら、Amazon制作のこちらのドキュメンタリーもぜひ観てみてください。映画のようなすっきりとした気分にはなれなくても、苦くて苦しいこれが現実であり、本当のルマンです。


日産がいつの日か、ルマンへまた戻ってくることを願っています。
退屈な車に箔をつけて売るためではなく、ただ純粋にレースのためだけに。



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