青い音楽 【詩】

吹きっさらしの広場の
風がやんでいる僅かな時間
青が濃く
薄く　混ざり合う
円形の劇場に
咲きはじめる
幻の花
青いケシの花

フェードイン
寄せる
フェードアウト
寄せ返す
フェードイン
風のにおう
特別席から
南十字が見え
黒猫がたむろする
格子のすき間から
マルゲリータの
青い眼が
光る

揺り椅子に
やすらぐ
白い羽根
振動する羽根
薄青い風が
這いまわって
近づいていく
青銅の広場
青い花
羽根がざわつく
ざわざわして
遠ざかる

ピアノが
青にちかづく
はなれる
ちかづいていき
はなれる
弦のふるえ
テナーサックスの音色
蠟管の
きしみに
ノスタルジアが
滲む
マルゲリータの眼
濡れている睫毛

神話的な
広場で
吃りながら
フェードアウトする
管の音色
フェードインする
青いリズム
宵闇に沈んでいく
ブエノスアイレスの広場
深い青
やがて
すきとおる　青
寄せ返す
緑と青のすき間で
剃刀を研ぐ
無口な
床屋

きっかけは
口笛
三拍子
少しずつ
ずれていく　リズム
アルゴリズム
遅れていく　リズム
沈んでいく青
泥のような青
昼から夜への
呼気のゆらぎに
吹き溜まる
薄い青
濃い青
泥のような
風が這いまわる
涸れた噴水
見えない
ケシの花に
南十字が見える
青いアルゴリズムが
見える
昨夜の夢が見える