円環 【詩/現代詩】
少しずつ
始まりに
近づいている
(君もその一部なのだから)
朝になると
数知れない鳥が
空を真っ白にする
一つとして覚えていない名前たちの
くり返されるさえづり
日がさす
日へ病む
あの鳥たちはどこから来たのだろう
いつも気分がよいフリをして
(君もその一部だが)
中心は深い靄
雲が不安気に身を寄せて
「今朝 神通川に
洗濯物を干しに行ったら
◯の姿をした神に出会ったわ
でもあれはほんとうに
神だったのかしら
ただの◯にしか見えなかった」
分け入っても
分け入っても
鳥にしか分からないものがある
鳥にしか見えないものがある
夏は
うしろの方からやって来る
しずしずとやって来て
円環がひらく
分け入っても
分け入っても
白い雲
◯の中心に向かって
空洞が見え
淡い羽音が聞こえ
白い山が聳えている
私たちの故郷が聳えている
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?