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美しい村 【詩】

美しい村で
ひと夏を過ごしたことがある

その村は
これといって
特徴のない村だったが
美しくあろうとする
魂でみちていた

たとえばあのニワトリ
頸をスッと伸ばし
一日中エサを啄んでいるが
自分の
凛とした美しさに気づかぬまま
脚を三重に繋がれている

井戸で冷やした西瓜を
頭からかぶる
(ああ 極楽でござる)
なんていいながら
これもひと夏の思い出
真珠色の勾玉を
唾液で濡らしていく
僕らは気味の悪いさかなになっていく

美しい村で
夏のほとんどを遊んだ
一日中
お寺の境内で
たまごっちと戯れ
天国と繋がり
白目を剥いて入道雲を見た

(2024.7.16 修正)

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