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花の下 【詩】

火曜日

満開だった
自動車整備工場の裏

市役所も知らない
名所に
ことし最後の 花が咲き
壊れかけた橋があった

(願わくは…)

絵の中の舟が 近づいていた
砂底を櫂が這っている
ミドリガメが流れている

(僧侶が立っていた橋
 陽炎のように薄い
 煩悩を 燃やしている)

夢に見た花が
ミラーにさわる

(願わくは 花の下にて)

自転車が右に曲がる

川に映った花がミラーに映る

川底を転がっていく車輪が
カーブミラーに映る

壊れかけた橋をわたる

(願わくは…)

花の下で眠りたい
自動車整備工場の昼下がり

日差しが
右に曲がる
その季節の 右側に
鏡のように燃えて
満開を迎えている花
がレンズに映る

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