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テイラス 【詩・幻想小説】

果てのない
群青色の海に
おぼろげに 浮かんでいる
その島は
原初の昔から

と呼ばれていた


を統べる長老は
24時間/365日
言葉なきものを 思い
この世にない光景を 思い描き
時おり
思いついたように
群青世界へ ダイブした

能面のように
窺い知れない感情
眼差しと口角
燦々と 降りそそぐ光線と
大気を焦がす熱線
真昼の静止した時間を
ちいさな木陰で 瞑想にふけり
葉巻の煙を吸い込んでは 時おり
鋭利に突き立った巌
から 深い海へと
ダイブする

その落下の影は
鋭く 長く 尖っていて
鱗のようにギラリと光り
幻の怪鳥
テイラス
を思わせる

長老は
冷んやりとして 薄暗い
うなぞこを這い
茫洋とした銀河や
繰り返し 生まれでる
世界の渾沌と 運動する思考の海を
ただよった
島民たちは 黙りこくったまま
供物の準備をした

夕暮れどき
若布をまとわせて
浮上する長老は
金色の着物を羽織り
岩棚に並んだ供物を
ひとくさり ついばみ 嚥下しては
大きく 翼を拡げて影をつくり
伝説のピノキオ
の奇妙な鼻にも似た嘴を
大地の窪みに突き刺している

テイラス

天上の歌声が
数知れないまなざしを呼び寄せる
終わりのないマントラのような
海鳴りに共鳴する湾は
島の中央にまで くびれ込んでいる
そのとき
むすうの下僕を従えた
テイラス
が空高く
螺旋状に舞い上がる

目を凝らせば
計り知れない感情を
垣間見せる
泡の中のひとつの

学者たちは 太古の昔
諸島の一部を構成していたとされる
泡の痕跡を探っている

島民たちの幻想の中で
凝集していった感情は やがて
涙のかたちをした宝珠となり
群青色の波間を たゆたっている
そのあいだにも
純粋思考の波動に変化した
テイラス
が翼を広げれば
はばたきの風音は 一瞬で
宇宙のヘリにまでとどく

神々との交信がはじまるのは
月が中天にさしかかる頃である

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