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魂が濡れていく 【詩/現代詩】

魂は
カタチを持たない
気配のようなもの

(心理と倫理の狭間で揺れている)

真っ青な水が湧いている地点から
白神山地が見えた
この地上で
初めての草が
萌えようとしていた

(環境を傷つけていく熊笹)

僕らはいつものように
水浴びをしていて
水嵩が増していくのに
気づいてはいなかった

(ダムに沈んだ谿間には
 黄金の時間があった
 岩の間からウグイの群れが見えた)

五月
土と水の区別がつかなくなった

(その春の熊は凶暴だったな)

(凶暴だったのは君たちの方だろう)

感情と科学のすき間を縫って
溢れ出した大水は
僕らの魂を濡らしていく

(巨大な樹木が水圧を押しとどめている)

竜の背骨が濡れていく
鯨が森を泳いでいる

60年後の春に 少年は
もう一度見るだろう
この世界をもう一度
やっと眠りから覚めた世界を

(いまはいつだろうか
 雲が流れていく
 あんな雲は久しぶり)

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