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最初の詩人 【詩】

泡になっておる
いつの間にか
泡になっておる
いまだ
言葉になっておらぬものが
泡になって…

(やめなさい
 まだ
 覚えはじめたばかり)

消えてしまうだろうか
触ったら
淡い光を宿しはじめた
こいつ
ぶくぶく ぷくぷく

(やめなさい やめなさい)

不思議な夕立が
立ちこめようとして
果糖の匂いをただよわす

(できはじめておる
 いまだ 言葉になっておらぬものが
 この実を)

(何てことを…)

(食べさせてしまったわ
 いまに
 この果実が
 業火の香りをただよわす)

(さあ いらっしゃい
 オルフェウス
 そろそろ 覚えなければなりません
 甘いか 苦いかは
 食べて見なければ わかりませぬ
 わかりませぬ)

急いてはなりません
急いてはなりません

あなたは この世で
最初の詩人
輪廻転生を
あやつることのできる
詩人
一切有情の神様

(ついに 生まれ
 ますね)

(お待ちなさい お待ちなさい)

あなたは詩人
この世で最初の詩人

生まれたばかりの
今日も
孤独な沐浴を楽しんでいるのです

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