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社会こそが一番の教室 ―オンラインで海外大学院に行こう! マガジン #29

こんにちは。
岸 志帆莉です。

このマガジンでは、「オンラインで海外の大学院に行く」というテーマで定期的に情報をお届けしています。

これまでオンラインの学びについて様々な角度から綴ってきましたが、これから大学院に挑まれる社会人の皆さまにお伝えしたいことがあります。

それは社会人にとって一番の教室は社会だということです。

社会こそが一番の教室

オンライン学習では、パソコンを開けばすぐそこが教室になります。自宅でも出張先でも、パソコンさえあれば直ちに授業にアクセスできます。本当にすばらしい時代になったものです。

しかしオンラインで学ぶ社会人にとって忘れてはならない教室がもうひとつあります。それは社会です。社会人にとって一番の学びの場は、職場や家庭、地域などあらゆる場所をひっくるめた社会だと思っています。大学の授業はそこでの学びを整理するための道路標識、あるいは給油所のようなものです。

私も大学院で学んでいた当時は、授業と実生活をできるだけリンクさせるよう心がけていました。授業のテーマに関する講演やセミナーを聴きに行ったり、いろいろな人に会って話を聞いたり。授業で学んだことを仕事で実践してみるのも有効です。社会人は大学で習ったことを即座に仕事に活かせます。学んだことを社会に還元しつつ自分自身もダイナミックに成長できるのは、社会人が学ぶことの醍醐味だと思います。

教室での学びがすべてではない

ところで私と同世代以上の方々と話していると、学習の場のメインストリームはあくまで教室であって、その他の学習方法(オンラインも含む)は補完的なものだと考える人がいまだに多いことに気づきます。しかし私は教室での学びがすべてではないと思っています。むしろ教室で学んだことをいかに実生活で活用し、社会でよりよく生きていくかが重要です。

たしかに教室は私たちにとって最も身近な学びの場ですが、そもそも教室というシステムが生まれた経緯をさかのぼると、それが絶対的なものではないことがわかります。

私たちがよく知る教室の原型は、中世ヨーロッパの時代に生まれたと考えられています。11~12世紀にかけて登場した世界最初の大学、ボローニャ大学とパリ大学が、いわゆる「教室」の起源といわれています。

これらの大学は、一般市民にキリスト教を普及させることをひとつの目的として生まれました。しかしそれにはいくつかのハードルがありました。まず当時の市民の識字率がとても低かったこと。自習が成り立たないので、知識人が大衆に向けて聖書を読み上げながら解説する必要がありました。さらに当時は聖書や本自体がとても希少なものでした。そこでひとりの人間(および一冊の本)からできるだけ多くの人が学べるシステムをつくる必要が生まれました。それが現代の教室につながる原型です。人間の声がマイクなしで届き、かつ壇上の人間の表情や動作が見えやすいレイアウトを試行錯誤した結果、現代のような教室の形にたどり着いたのです(ちなみに「レクチャー」の語源はラテン語で「読む」ことを意味しますが、これも当時の授業風景がもとになっています)。

義務教育から教室という箱に親しんできた人々にとって、教室での学びこそ本物だと思うのも無理はありません。もちろん教室には教室の良さがあります。固定観念に縛られず、両者を柔軟に取り入れることでより人生の幅が広がるのではないかと思います。

対面とオンラインの学びを織り交ぜてより豊かな人生を

教室が生まれるもっと以前、ソクラテスの時代には、人々は師のまわりに車座になって議論を交わしながら学び合ってきました。ブッダやイエス・キリスト、孔子なども、質問を通して弟子たちの気づきをうまく引き出していることがわかります。

このような学び方を現代風に言うならば、「アクティブ・ラーニング」という言葉がしっくりきます。対話を通して生徒自身の気付きや考えを促す学び方で、現在は義務教育などでも取り入れられています。個々がそれぞれの立場から課題を持ち寄り、仲間同士で議論を重ねながらそれぞれの解に到達していきます。そこでは先生は教え手ではなく、ファシリテーターとしての役割が期待されます。学びの主体はあくまで学習者本人です。

私がイギリスの大学院で経験してきた学び方も、まさしくアクティブ・ラーニングでした。オンライン学習の普及により教室という壁が取っ払われたことで、教壇からの一方的な知識の伝達にとどまらず、人々が車座になって学び合う環境が(たとえバーチャル空間であっても)復興してきているように思います。

テクノロジーが発展した現代では、教室での学びだけが唯一の学習方法ではありません。対面授業とオンラインのいいところをそれぞれ取り入れつつ、社会での生活にいかしながら人生をより豊かにしていきたいですね。

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