大学やコースの質に注目しよう ―オンラインで海外大学院に行こう! マガジン #36
こんにちは。
岸 志帆莉です。
このマガジンでは、「オンラインで海外の大学院に行く」というテーマで定期的に情報をお届けしています。
大学院を選ぶときは、各大学やコースの質を見極めることがとても大切です。そこで今日は大学やコースの質の見極め方をテーマにお話しします。
認定の有無に注目する
個々の大学やコースの質を見極めるとき、ひとつの判断材料となるのが認定の有無です。まずはその大学がきちんとした認定を受けているかどうか確認しましょう。有名な大学ならほとんど問題ないはずですが、はじめて聞く大学は念のため調べてみることをおすすめします。日本で文部科学省による認可制度が存在するように、他の国にも政府による認可制度があります(※アメリカなど一部例外はあります)。その国の公的な認定を受けていれば、最低限の基準はクリアしている目安になります。
国によっては通信・オンライン教育専用の認可制度もあります。たとえばアメリカではDEAC (Distance Education Accrediting Commission)というオンライン専門の認定団体があります。イギリスでも同様の取り組みが発足しているようです。さらに国境を越えて質の保証に取り組む認定団体もあります(QualityMatters等)。コロナ禍をきっかけに、このような動きは今後世界各国に広まっていくことでしょう。
大学ランキングについて
ほかに「大学ランキング」を参考にする方法もあります。大学ランキングとはメディアや団体等が独自の評価で大学を順位付けしたものです。有名なものに『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』(THE)が主催するTHE世界大学ランキングや、クアクアレリ・シモンズのQS世界大学ランキングなどがあります。
ちなみに大学ランキングを参照するときはいくつか注意点があります。まず各大学の順位(評価)はランキングによって大きく変わるということです。各ランキングの主催団体はそれぞれ独自の評価基準を持っていて、統一された基準等があるわけではありません。したがって同じ大学でもランキングによっては大きく順位を落としたりします。あるランキングでは世界5位でも別のランキングでは10位圏外ということもあります。
また年度によっても順位は変わります。ある年には10位以内でも、翌年にはぐんと順位を下げる場合もあります。ましてや10年後、20年後の状況は誰にもわかりません。ランキングのみを頼りに大学を選んでしまうと、将来的に失望することにもなりかねません。
また大学ランキングは教育面だけを評価するものではありません。大学のもうひとつの社会的役割である研究や運営面なども加味されます。たとえばQS世界ランキングの評価の内訳は、学術界からの評価(40%)、従業員からの評価(10%)、教員対生徒の比率(20%)、論文引用率(20%)、留学生および外国人教員の割合(各5%)となっています(※2021年時点。ちなみに「学術界からの評価」には教育面への評価も含まれるそうです)。
ただ研究が強い大学に通うことのメリットもたくさんあります。研究型の大学は研究指導がしっかりしている傾向があります。研究に関するスキルは社会人にとって汎用性の高いものばかりです。とくに統計やデータ分析等はどんな現場でも生かせるスキルなので、身につけておいて損はありません。研究と教育双方の面を見極められたら一番いいですね。
ディプロマミルについて
最後に、情報収集の段階でもっとも注意したいことをお伝えします。それはディプロマミルという存在についてです。
世界中のほとんどの大学は、崇高な使命のもとに教育や研究活動を行っています。しかし残念ながら、なかには悪質な団体も存在します。大学を謳いながら実際にはほとんど教育活動を行わず、金銭と引き換えに学位を発行する団体などです。こうした団体は「ディプロマミル」と呼ばれ、欧米圏ではとくに問題視されています。
とくにアメリカでは学歴主義や複雑な認定制度の影響もあり、こうした組織がしばしば問題になります。1970年代にFBIが一度大規模な調査に乗り出しましたがあいにく根絶には至らず、時代とともに新たなタイプのディプロマミルが登場しています。アメリカでは無認定のまま大学を名乗ること自体は違法ではないため、無認定のみを理由にディプロマミルと主張することは困難です。またディプロマミルは組織としての実態が把握しづらく、問題が起こったときに責任の所在を明確にしづらいことがあります。大切なお金と時間を無駄にしないためにも、最初の段階できちんとスクリーニングすることが大切です。
なかにはディプロマミルと理解したうえであえて学位を「購入」する人もいますが、個人的にはあまりおすすめしません。なぜなら日本社会ではディプロマミルの学位が有利に働く場面はほとんどないからです。
日本はアメリカ等と異なり、学位の高さが社会的地位とそのまま連動する社会ではありません。日本では修士号を持っているというだけで就職や昇進に有利になることは実際あまりありません(もちろん職種によっては必須な場合もありますが)。それよりも本人がどのような目的を持って進学し、そこで何を学び、その結果どんな力がついたかを説明できるかどうかが肝心です。
ディプロマミルを避けるには、冒頭でもお話ししたとおり、まずは認定の有無を確認することをおすすめします。またさまざまな情報源を組み合わせ、個々の大学について多面的に理解することも大切です。無認定の大学がすべて悪質というわけではありませんが(なかにはあえて認定を取らない大学も存在します)、そうした大学を選ぶときはきちんと調べたうえで納得して決断してくださいね。
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