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100人で子育てをすることにしました。

こんにちは。
岸 志帆莉です。

突然ですが、我が家ではこれから100人で子育てをしていくことにしました。


100人で子育てをすることにした ―背景

こちらのnoteでもお話ししてきましたが、我が家では春から夫が海外に赴任しました。
以来、残された母子三人でささやかに暮らしています。

わたしたちもいずれ夫が暮らす国に渡航予定ですが、受け入れ側の事情により少なくとも年内はこちらにいる予定です。

そんなわけで今、ひとりで幼い子どもたち(3歳&0歳)を育てているわけですが……

この日々が、控えめにいっても壮絶です。 

三歳の長男は急速に自我が芽生え、起きている間はところかまわず自己主張してきます。0歳の次男は常に目が離せません。毎秒ごとに散らかっていく部屋。トイレットペーパーの滝。ティッシュペーパーの雪。麦茶の雨垂れ。ここは水墨画の世界ではなく我が家のつましいリビングです。子育てと家事のダブルパンチだけでもKO寸前。さらに遠景には原稿の〆切りが……

「このままでは、母子三人で共倒れしてしまう……」

共働きにもかかわらず、これまであまり人を頼ることをしてきませんでした。長男長女どうしの夫婦で人に頼るのが下手なのです。とはいえ負担もそろそろ限界を超え、アナザーワールドに達してきた感があります。さすがに危機感を覚えたわたしは、慣れないながらも少しずつ人を頼ってみることにしました。

この春からやってきたこと

家事を頼ってみる

まずは体の負担をすこしでも減らすべく、家事を頼ってみることにしました。

実は夫がいなくなってからも、なぜか以前の家事水準を維持しようとしていた時期がありました。「一日の終わりには部屋が片付いてなきゃ」というナゾの強迫観念にかられ、毎晩ひとりでおもちゃを拾い集める日々。さらに掃除、洗濯、食器洗いなどすべての家事を背負い込んだ結果、一日の終わりには体がふらふらに……。

「このままでは体がもたない―」。そう感じ、家事への期待値を思い切って下げてみました。さらに「ヤメ家事」という言葉を知り、やらないことはやらないと決断したりもしました。ただそれらすべてを実行しても、やっぱり限界があります。繰り返すようですが、幼子がふたりも家にいると、家は毎秒のように荒れていくのです……。予測不可能な事態も次々と起こります。

そこで家事代行サービスを利用してみることにしました。家事代行マッチングサービスの「タスカジ」やシルバー人材センターなどに登録し、利用しはじめました。これがとても我が家には合っていて、いまでは週に一度のペースで来ていただいています。

子育てを頼ってみる

次に、子育ても少しずつまわりを頼ってみることにしました。

0歳の赤ん坊がいる我が家では、子育てに休憩がありません。夜間も授乳や夜泣きの対応に追われます。長男は幼稚園に通っていますが、帰宅した後はカオスタイムのはじまりです。母には週末もありません。まさにひとりコンビニ状態です。

しんどい。ひとりになりたい……。

でも、子どもたちだって実は内心うんざりしているかもしれない。家には常にわたしひとり。子どもたちだって内心息がつまりそうなんじゃないか。それに、そもそもお父さんがいなくなって寂しいよね。体を使う遊びとかできなくてつまんないよね……。

彼らにとっても、わたし以外の大人と触れあえる機会があったほうがいいのではないか。次第にそう感じるようになりました。

そこでとにかく家に人を呼んでみることにしました。義母に泊まりに来てもらったり、ベビーシッターさんに来ていただいたり。さらに「ホームスタートこうとう」という家庭訪問型の子育て支援も利用しはじめました。「ホームスタート」とは、未就学児の子どもがいる家庭に子育て経験をもつボランティアさんが訪問してくれる支援サービスです。我が家にもすてきなボランティアさんが訪問してくださり、子どもたちと毎回たくさん遊んでくださいます。またわたしの相談にも乗ってくださったり、地域の子育て情報を教えていただいたりと、親子ともども本当にお世話になっています。

家族の孤立を防ぐ

さらに、ひとり子育てを営んでいくなかでの大きな懸念がありました。それは孤独、ひいては家族の孤立です。

最近、子どもの虐待やネグレクトなどの悲しいニュースがたびたび報じられます。そうした被害が起こる家庭は、ひとり親家庭や離婚経験者など、親が孤独を抱えやすい環境であることが多いそうです。親が社会から孤立すると、家族全体が社会から孤立してしまいます。そしてその矛先は子どもへと向かいます。いまの私にとっては他人ごとではありません。

そこで、わたし自身が社会から孤立しないためにはどうすればいいか考えてみました。

まずは地域や社会とのつながりを深めることにしました。長男の幼稚園に事情を話し、普段から様子を気にかけていただくようお願いしました。また地域の子育て支援センターや児童館に足繁く通い、職員さんたちに顔を覚えていただきました。ほかにも町内会の夏祭りに参加したり、地域のイベントに積極的に出かけたり。夏休みにはすこし遠出して、千葉の館山に旅行にいってきました。コミュニティスペースつきのシェアレジデンスに宿泊し、ほかの宿泊者の方々と交流しながらたくさんの思い出を作ってきました。

助けを求めたらどうなったか

これらのアイデアを地道に実行したところ、さまざまな変化が起こりました。
おもな変化を挙げてみます。

体がすこし楽になった

まず、体の負担が若干減りました。
週に一度でも家事をしなくていい日があるだけで、体の回復スピードが違います。

実は先月あたりから次男の後追いがはじまり、わたしの姿が見えなくなっただけで泣き出すようになりました。以来、次男をおんぶしながら日々の家事をすることに。これが体育系の部活なみに体力を使います。でも家事代行さんに来ていただける日は、週に一度のお休み。その日は料理もせず、近所の八百屋さんのおいしい惣菜を買って三人で食べます。わたしの手抜きメニューに内心飽き飽きしている長男は、見るからにおいしそうなおかずに大よろこび。わたしも誰かが作ってくれたものを食べると、心までケアされているような気持ちになります。そして心までケアされた日は、子どもたちにもより優しく接することができる気がします。わたしにとって欠かせない休息日です。

心もすこし楽になった

心の負担もやわらいできました。「自分ひとりで背負い込まなくていいんだ」と思えることは、体だけでなく心も楽にしてくれます。

孤独もやわらいできたように思います。息子が通う幼稚園だけでなく、近隣の児童館や子育て支援センターなど、子育てについて気軽に相談できる先が複数あることで心がより安定しました。ベビーシッターさんやボランティアさんなどとの個人的なつながりも支えになっています。この「ひとりじゃない」と思える感覚こそが、子育てにおいて大切なものだと今は感じています。

なにより……子どもたちが楽しそう!

そして私たち家族にとって一番大きなことは、子どもたちの笑顔が戻ってきたことです。

夫が出発した直後は、とくに長男が精神的に不安定になっていました。毎晩のようにお父さんを思い出して泣いていました。

でも家に人をたくさん招くようになってからは、長男が笑うようになりました。家事代行のYさんやボランティアのKさん、おばあちゃん……。今度はいつ誰が来てくれるかと、カレンダーを眺めながら楽しそうに待ち望んでいます。そして「次○○さんが来たらこんなことするんだ~」と楽しそうに思い描いています。そんな長男の様子を見ていると、助けを求めることにして本当によかったと思います。長男としては、一気に友だちが増えたような感覚なのかもしれません。

私にとっても、子どもたちのことを理解してくださり、愛情深く接してくださる方がいることは心底ありがたいことです。そのことを思うと胸がじんわりと温かくなります。

思えばいろんな人に支えられてきた

ただ思い返してみれば、これまでも夫婦ふたりきりで子育てをしてきたわけではありません。これまでにも、さまざまな方々に支えられながら子育てをしてきました。

保育園の先生、祖父母、友人、地域の方々、近所のクリーニング屋のおじさん。あえて振り返ってこなかっただけで、多くの方々に支えていただいたことに気づきます。これまでだって私は決してひとりではありませんでした。長男を産んで以来お世話になってきた方々の顔を一人ひとり思い浮かべると、子育ての日々が宝物のように思えてきます。

さらにこの春以降は、その輪が一気に広がりました。長男の新しい幼稚園、児童館、支援センター、さまざまな子育て支援サービスの関係者の方々……。家族の行動範囲を広げることで、多くの新しい人間関係にも恵まれました。春から数えてまだ半年も経っていませんが、この間に新しく芽生えた人々の輪に私たち家族は生かされています。

こうして考えてみると、本当に日々多くの方々に支えていただいていることに思い当たります。はたして、私はいまどれくらいの数の方々にお世話になりながら子育てをしているんだろうか。ふと気になり、一人ひとり挙げてみることにしました。敬意と感謝を込めて、こちらにも挙げてみることにします。

これまで岸家の子育てに関わってくださった皆さま(順不同)

●長男の幼稚園の先生方(13名)

●長男の幼稚園の保護者の皆さま(普段お世話になっているのは約10名ほど)

●長男が二歳まで通った保育園の先生方(12名)

●近所の子育て支援センターの皆さま(約10名)

●近所の児童館の皆さま(6~7名)

●ホームスタートこうとうのコーディネーターの皆さま、およびボランティアのKさん(計3名)

●江東区こどもプラザの皆さま(これまでにお世話になったのは5~6名)

●タスカジのYさん

●ポピンズシッターのMさん

●カナリア諸島出身のベビーシッターのCさん

●江東区シルバー人材センターのKさん

●銀座三越キッズスクウェアの皆さま(これまでにお世話になったのは5~6名)

●マンションの管理人さん

●同じマンションに住むHさん(1人+ワンちゃん2匹)

●マンションの上階に住むEさん

●近所のクリーニング店のおじさん

●近所の公衆トイレのお掃除のおじさん

●近所の八百屋の皆さん(5~6名)

●木場公園プレーパークの皆さま(これまでにお世話になったのは7~8名)

●近所の子ども食堂の皆さま(3~4名)

●元ルームメイトの親友まゆみちゃん

●インド人の親友Swapna

●LivingAnywhere Commons館山で出会った皆さま(約10名)

以上、少なく見積もっても、これまでに約100人ものすてきな方々に支えていただいたことがわかりました。

……ひゃ、ひゃくにん……!!

家族や親戚を除いてもこの人数。ちなみに親族を含めると130人を超える大所帯となりました。

100人ってすごい。本当にありがたいことです。泣きそうです。感謝の気持ちが止まりません。お一人おひとりに直接御礼を伝えたい気持ちでいっぱいです。

もちろん、100人が毎日実際に集まって子育てをすることはできないわけですが、毎日少しずつ助けていただいたり、一期一会のご縁をいただいたりした結果、気づけばこれだけの人数になっていた。まさに年間通してみれば百人力です。

ひとり子育ての日々は、真っ暗なトンネルを走り続けているような孤独を感じることもあります。それでも、きちんと振り返ってみればこれだけ多くの方々に支えていただいていた。

どうやらわたしは気づかぬうちに、100人で子育てをしていたのです。

これは子どもたちにとっても、きっと財産になることでしょう。100人に育てられた子ども時代があるというだけで、人生が宝物のように思えてきます。100人に育てられた記憶があれば、大人になってからも幸せな人生を歩んでいけるんじゃないだろうか。

これからも100人で子育てをしていこう

そういうわけで、これからも100人の方々とのご縁を大切にしながら子育てをしていこう。そんな思いを新たにしました。

夫が出発して以来、自分の無力さを痛感する毎日です。三十も半ばを過ぎましたが、子育ての日々では自分自身の弱さや未熟さにしばしば直面します。心の余裕がなくなると、息子にあたってしまうことも。理想からは程遠い毎日です。

でも親とはいえ、ひとりの人間にできることには限りがあります。「母は強し」と言われますが、決して万能ではありません。AIでもありません。生身の弱い人間です。でも私はせめて、100人に育てられた人生の記憶を子どもたちにプレゼントしたい。不完全な私にできることがあるとすれば、そのことだと思っています。

いろいろな研究でもいわれているとおり、人間はそもそもひとりで子育てをするようにはできていません。人間の歴史の大部分において、人々は集団で子育てをしてきました。現在でも、アマゾンの先住民族など原始的な暮らしを営む人々の多くは、村単位で子育てをすることが知られています。それが人間本来の子育てのあり方なのかもしれません。

わたしはわたしの村を大切にしていきたい。そう強く思います。そして村である以上、ただ助けていただくだけでなくお返しもしたい。今はまだ余裕がなく、たくさんのお返しをすることはできないかもしれないけれど、長い目で少しずつお返しをしていけるような人生をこれから歩んでいきたいと思います。

そして願わくば、この村をささやかでも発展させていきたい。オックスフォード大学のロビン・ダンバー教授によれば、人間は150人くらいまでであれば安定した関係を構築できるそうです。150人で子育て、できるかなぁ。夢はふくらみます。

この記事を読んで下さっている方の中には、子育てに不安や孤独を感じている方もいるかもしれません。もしあなたがそんな風に感じているならば、普段あなたを支えておられる方の顔を一人ひとり思い浮かべてみてはいかがでしょうか。案外いろんな人に支えられていることに思い至るかもしれません。

もしもいま支えてくれている人の数が思いのほか少なかったとしても、まったく心配ありません。わたし自身も、この春以前はそうでした。今でこそ100人の方々に支えていただいていますが、そのうち半数以上はこの春以降にご縁をいただいた方々です。孤独をバネに動き続けたことで、これだけのご縁を見つけることができました。もし今あなたのリストが短ければ、それは希望でもあると思います。この先、新たなすてきな出会いがそれだけたくさん待っているということですから。

あなたもぜひ、一歩を踏み出してみてください。100人の村をもつママやパパが世の中に増えたら、日本の未来は明るいはず。50人でも10人でもいい。あなたの心を決してひとりにはしないでください。

というわけで、岸家の「100人で子育てプロジェクト」はこれからも続きます。

どうか私たちの挑戦を見守ってください。

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続編はこちら:



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