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海外現地に留学するメリットを考える ―オンラインで海外大学院に行こう!マガジン #4

こんにちは。
岸 志帆莉です。

このマガジンでは、「オンラインで海外の大学院に行く」というテーマで定期的に情報をお届けしています。


オンライン学習を語る前に、対面のよさも考えたい

ところでオンライン学習のよさを語るには、対面学習のメリットをしっかり踏まえる必要があると考えています。

対面には対面のよさがあり、人によっては対面が最適な場合もあります。また分野によっては、まだまだオンラインで学べる道が限られている場合もあります。両者をきちんと比較し、自分に合った選択をすることがよりよい将来につながるはずです。

過去にすこし触れましたが、実はわたしはオンラインだけでなく、通学(対面)で大学院を卒業した経験も持っています。イギリスの大学院で教育学を修めたあと、フランスに渡り、現地の大学院で隣接分野の修士を修了しました。

最初の修士時代に興味を持った分野をさらに深めるための選択だったのですが、結果として海外の大学院を対面・オンラインの二通りで卒業するという少し変わった経歴を得るに至りました。

このマガジンではそんな立場から、両者をできるだけ公平に比較していきたいと思います。先に言ってしまうと、どちらがより良いとか悪いといったことはありません。それぞれに違ったよさがあるということです。

それでは、海外の現地に留学するメリットについてじっくり考えていきましょう。

外国での生活を体験できる!

なんといっても、海外留学の最大のメリットは海外生活を体験できることです。

海外での暮らしは大変なこともたくさんありますが、それ自体がかけがえのない経験となります。新しい言葉、食生活、文化、社会の常識。不便なことも、価値観が根本から揺り動かされるようなこともあるでしょう(私自身、いま中国に暮らしながらそのことを改めて痛感しています)。そんななか、現地の空気を吸い、水を飲みながら、新しい社会に適応する努力を重ねること。学問以前に人生について大切な学びを得られることは、間違いなく現地留学のメリットです。

大学のキャンパスで学べる

もうひとつのメリットは、現地のキャンパスで学べることです。
大学のキャンパスには、その大学ならではの歴史と文化がつまっています。講堂や食堂、中庭の芝生など、そこかしこにその大学の空気が息づいています。仲間たちと同じ空間を共有することで、自分もその大学の生徒であることを実感できます。そんな思い出深い場所が世界のどこかにできるのも、人生の宝物となるでしょう。

クラスメイトと同じ教室で授業を受けられる

クラスメイトたちと同じ教室で学べることも対面学習のメリットです。
同じ場所で誰かと体験を共有できることは、それ自体とても価値のあることです。皮肉にもコロナ禍をきっかけに、そのことを私たちは再認識することになりました。オンラインには人と気軽に出会えるなど素晴らしい面があります。一方で対面のいいところは、相手の空気感や温度を直接感じられること、それにより思い出に温度が加わることだと思っています。

ちなみに過去にフランスの大学院にいたころ、日本に留学経験を持つクラスメイトと知り合って意気投合したことがありました。彼女の自宅に呼んでいただき、お茶を片手にいろんなことを話したり、彼女のお子さんと一緒に遊んだり。公立高校の社会科の先生だったのですが、彼女の授業にゲストとして呼んでいただき、日本を紹介する出前授業を行ったこともあります。さらには彼女の友人に誘われて、なぜかパリの郊外に森をつくるプロジェクトに参加したことも……。すべてあたたかい思い出です。オンラインにはオンラインの良さがあるように、対面にも対面の良さがあると感じています。

実践的なコミュニケーションの訓練を積める

コロナ禍以降、オンラインによるコミュニケーションの機会が格段に増えました。しかし対面でのコミュニケーションがなくなることはありません。人々が直接交わりながら生活を営んでいく風景は、今後も続いていくことでしょう。

対面授業は、そうした生身のコミュニケーションの経験を積める貴重な機会です。とくに海外の大学院にはさまざまな文化的背景をもつ人々が集まります。そんな「文化のるつぼ」に身を置き、ときに衝突や葛藤を抱きながら人々と折り合っていく経験を積むことは、コミュニケーションの最良の修行になります。

人やものに直接触れられる

ものや人に直接触れながら学べるのも対面授業ならではのメリットです。
学問分野によっては、直接人に会ったりものに触れたりすることができないと学習が成り立たないものもあります。体育や演劇のように体を動かす分野や、音楽や芸術のように技術指導が必要な分野。また自然や生き物を対象とする分野や、ファッションなどモノの質感や微妙な風合いが尊ばれる分野などもそうです。

もちろん、座学の部分はオンラインで学び、実習は対面で行うというふうに、両者を組み合わせながら学ぶこともできるでしょう。対面ならではの臨場感や空気感も、学ぶうえでの素敵なスパイスになりますね。

通信環境の影響を受けにくい

対面授業では、教室にたどり着けばなにかしらの学びが保障されるというメリットもあります。

オンライン授業の現実として、どうしても通信環境の影響を受けやすいところがあります。授業やディスカッションの途中で通信が途切れてしまったら、その間は機会損失になってしまいます。もちろん相手に言い直してもらったりなど互いに工夫しながらやっていくわけですが、ユーザー同士では対処できない問題が起こることもあります。

ただし今では対面でもデジタル教材を活用したりするため、対面だから完全にノーリスクとは言い切れません。学習そのものがデジタル化するにつれ、この点は今後ますます課題になっていくことでしょう。

総合的な語学力が身につく

バランスのとれた語学力が身につきやすいのも現地留学のメリットです。
現地の教室に身を置き、生のディスカッションに参加するなかで、発話力はめきめきと向上します。日々の生活のなかで生きた語学力を身につけることもできます。

一方のオンライン授業は文字でのやりとりが多いため、読み書きの能力が圧倒的に鍛えられます。録画やオンデマンド教材を視聴する機会も多く、リスニング力もかなり鍛えられるでしょう。ただ発話力が伸びるかどうかは授業のスタイルによります。ライブ授業やZOOM等を活用したディスカッションを多く取り入れている場合は、現地留学と同様に発話力の伸びが期待できるでしょう。

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今回は現地に留学する場合のメリットを見てきました。こうして見てみると、対面には対面のよさがたくさんあることがわかります。

ちなみにここで挙げたメリットは、あくまで学習者が社会人であることが前提です。未成年の場合はまた考え方が異なりますので、その点は分けて考える必要があります。

とくに未就学児から義務教育においては、人との接し方や集団における自己表現等を実社会のなかで一から学んでいく必要があります。この段階においては、対面の環境がさらに多くの意義を持つことは言うまでもありません。

対面とオンラインの両者を比較しながら、よりよい選択につなげたいですね。

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