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こころを覗くお話

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登場人物たちの感情の揺れ動きをお楽しみください。
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記事一覧

くすりゆびと憂鬱(5869文字)

※ずっと前に「指」というテーマで書いたものです。 1. 紗絵 男というものは口紅の色や、ネ…

【SS】沈んで、浮かぶ(3981文字)

 宮古島の食材をふんだんに使用したフルコースを前に、新婚旅行の最初の晩、琴音は静かな絶望…

【中編】この痕が消えるまで(10180文字)

 数か月前、「美月! 聞いて!」とキミコから彼氏ができたことを打ち明けられたとき、私は哀…

【SS】ある野良猫の話(2959文字)

結婚を前提に同棲していた恋人が出て行った。 洗濯かごの中のワイシャツ。 ソファの脇のタバ…

【SS】分かりあえるか男と女(2559文字)

〜女〜 「やっぱりうしろ刈り上げてください。ボーイッシュっていうかもう、男性に近い感じで…

【SS】とっておきの果実(1381文字)

はじめて先輩とふたりで飲みに行ったのはいつだっただろう。 たしか会社近くの、小汚い大衆居…

【SS】道化の退場(1807文字)

道化は退場する。 学生時代に少しだけ英文学を囓っていたのだが、例えばシェイクスピア作品に出てくる道化役(foolとかclownとか呼ばれる)は物語の途中で必ずいなくなるのだ。 そういう、ものなのだ。 ✴✴✴ 右スワイプで好意を示すアプリをしていると分かることがある。 どんなに阿呆を装っても、ものをよく考えているひとであれば、思考の深さが滲み出てしまう。 一個年下の彼――Nくんは、滲み出しているひとだった。 誠実さがむしろ仇となってしまうこの場所では、彼の振る舞いは

【SS】noteと恋愛(3475文字)

俺は今、20歳にもなって初めて本気の恋をしている。 それも、noteというプラットフォーム上の…

【SS】もう思い出せない(867文字)

朝。 駅のホームで電車を待っていると、ふいに後ろから懐かしい香りがした。 振り向いたが、…

【SS】据え膳食わぬは(2305文字)

店内に入ると、いつものカウンター席に座っている駿がこちらを向き、「よっ」と片手を挙げた。…

【SS】泣かないと決めている。(868文字)

「バックします。ご注意ください。」 窓の外から聞こえるごみ収集車の音で目が覚めた。 よく…

【SS】心からの祝福を。(1255文字)

「今日は一緒に寝てくれませんか?」 と消え入りそうな声で尋ねる真莉愛は、女の私から見ても…

【SS】喫茶店での毒吐~どくはく~(842文字)

詩織はカフェではなく、喫茶店が好きだ。 今どきは、レトロ喫茶とか、昭和の喫茶店と言ったほ…

【SS】大学生を生きる。(4102文字)

今から約2年前、世界をコロナウイルスが襲った。 (飲み会ができんくなってから、もうそんなにたったんかあ) この春、大学4回生になった美香は軽く感傷に浸る。 コロナはもちろん怖い。 たくさんの人が亡くなり、今も後遺症で苦しむ人がいる中、飲み会ができないのがなんだ、と思われるかもしれない。 しかし、田舎から大阪に出てきた美香にとって、所謂「飲みサー」のメンバーと安居酒屋で騒ぐあの空間は、まさに青春そのものという感じがして、輝きにあふれて見えた。 実際には、飲みすぎた人が吐き