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短文と言葉

19
1000字以下の徒然な言葉。
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記事一覧

おろか、おろそか

おろか、おろそか。 空想を文字に変換するようになり、僕は重なりあったいくつかの世界に存在…

7

待つ

君からの手紙にすぐに返事をするのは躊躇われ、ペンを執り、つらつらと書いては消してを繰り返…

6

熱のありか

灰になって熱はゆく 消えた炎はまだ流れない さまよう涙はあふれない 明日が終わって 昨日がは…

8

blue

ブルーライトの海にダイブして肉体から解放される 拡散した僕は青のすべてとともにあり 凝集…

4

朝の襲来

 熱を帯びた内側の襞は裏返し、傷を負った鎧の下で吐き出す言葉は面汚し    朝が来る  弓…

2

編む

草を編んで宙にうかべる 向かい風か 追い風か 草を編んで風に浮かべる 蔦は絡み 花は千切れ …

9

ヘイコウのうた

君は躊躇なく階段を駆けおりる。 薄汚く薄暗いその階段、地下道はあそこへ続いている。けれど君はそんなことは知らない。 踊り場で折り返し、さらに深く地上から遠退き、これ以上降りることができなくなってふと顔をあげる。そして傍らにあるATMで現金を下ろす。 なぜ金を下ろすかって?  そこにATMがあるからだ。それ以外の理由なんて必要ない。君はそれをポケットにいれる。 目の前には川が流れている。見上げるとわずかな世界の切れ間に☆が瞬いている。 聞こえてくる笛は風の音、陽気な

名前の死

「――死んだ?」 「やはり、誰でも動揺するのね」  ■■■は以前と変わらず鼻に皺をよせ、…

5

新しい生活

 最近運動をはじめた。食事も気をつけたいけれど、家族の好みにあわせると偏ってしまう。  …

5

そとづらとないめん

1

走る車

 フェイスブックを開くと一年前の投稿が表示された。写真の藤棚は山の麓にある公園で撮影した…

3

本を借りる

 図書館に行くと借りるつもりのない本まで借りてしまう。というのが図書館の醍醐味。上の段か…

4

巣ごもり

 朝起きて、スマホを開いて、布団のなかでコロナ情報をチェックする。いつ頃からかそんな習慣…

4

プロペラ

 午後五時。雨上がりの青空。風は冷たい。  一月は行く、二月は逃げる、三月は去るというけれど、四月は疾風のごとく目の前を通り過ぎていってしまった。あと十日もすれば立夏だ。  車を走らせるその横で、学生服の群れがぞろぞろと歩道をすすんでいた。「密」と浮かぶ。その波が途切れるのを待ってドラッグストアの駐車場に入った。  マスク売り場は空っぽ。目薬を手にレジに向かい、ビニールカーテンの奥に見えるのは以前と変わらない光景。目を凝らしても見えないものがある。ウィルスとか、人のきもちとか