見出し画像

プロペラ

 午後五時。雨上がりの青空。風は冷たい。
 一月は行く、二月は逃げる、三月は去るというけれど、四月は疾風のごとく目の前を通り過ぎていってしまった。あと十日もすれば立夏だ。
 車を走らせるその横で、学生服の群れがぞろぞろと歩道をすすんでいた。「密」と浮かぶ。その波が途切れるのを待ってドラッグストアの駐車場に入った。
 マスク売り場は空っぽ。目薬を手にレジに向かい、ビニールカーテンの奥に見えるのは以前と変わらない光景。目を凝らしても見えないものがある。ウィルスとか、人のきもちとか。
 桜は咲いて散って、ツバメが飛んで、木々は若々しい緑の葉をつける。季節は穏やかに移りかわっていくのに、早送りで過ぎていく日々。こころは空回りする。焦るほどに、くるくる、くるくる。プロペラになって飛んで行けたらいいのに。
  
 

よろしければサポートお願いいたします。書き続ける力になります!🐧