名前の死
「――死んだ?」
「やはり、誰でも動揺するのね」
■■■は以前と変わらず鼻に皺をよせ、「ふん」と呆れたように息を漏らす。
「私は■■■が死んだとしても何も思わない。けれど、今の■■■のように動揺するふりはするかもしれない。
それが礼儀よね。笑うわけにもいかないし、悲しむほどの関わりはない。表情を作るのに戸惑うから、それが動揺として映るのかしら」
「泣いたのか?」
「ねえ。■■■の家に行かない?」
彼が行くと言っても、行かないと言っても、どちらでも良かった。
カップの脇に添えていた私の左手と、彼の右手が重なる。それは一体となった。
「死んだのは、どっち?」
■■■は鼻に皺をよせ、涙を堪えているようだった。
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