本を借りる

　図書館に行くと借りるつもりのない本まで借りてしまう。というのが図書館の醍醐味。上の段から下の段までじっくり背表紙をながめ、パラパラとページをめくってはしまいを繰り返す。そうして、重くて抱えるのも辛くなったころ貸出カウンターへ向かう。――これができなくなった。

　普段利用している図書館の、インターネット予約を利用しはじめたのは最近のことだ。いわずもがな新型コロナウィルスのせいである。館内利用はできないが、事前予約すれば借りられるだけありがたい。

　五冊借りた本をそろそろ読み終わるころ。次を予約しようと以前チェックしていた本を確認したら貸出中になっていた。借りようと思っていた三冊すべてがである。『折口信夫全集３』まで貸出中なのには驚いた。他の巻は貸出可になっているというのに。いったいどんな人が借りて帰ったのだろう。同じ図書館を利用する、さほど遠くない場所に住む誰か。