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LTVを高めるたった一つの方法 Part1

独断と偏見に基づいてLTVを語ってみたいと思います。たった一つの方法とか書いてますが、なんとなくキャッチーな題名にしてみたかっただけです、すいません。。

LTVとは何か?

LTVとは何か・・釈迦に説法ではありますが、直訳すれば「顧客生涯価値」を意味し、1人の顧客が一定期間にどれほどの利益をもたらしたかを示すマーケティング指標のことです。

顧客がある製品や企業・ブランドと継続して取引を行っている期間に支払った金額の合計から、その顧客の獲得・維持に費やしたコストを引いて算出され、以下の計算式で表されます。

LTV=(平均購買単価x購買頻度x購買継続期間)ー(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

LTVが注目されるようになった背景としては、様々な理由があるかと思いますが、そのひとつとして、デジタル技術の発達により「顧客単位・顧客重視のパーソナライズドマーケティングが成熟してきた事」が背景にあります。

これにより、特に顧客の維持コストが飛躍的に下がり、また個客単位での生涯利益やコストの把握が可能になった事から、現実的にLTVをコントロールする事が可能になってきました。

顧客価値やコストの管理方法については、次回のPart2で書くつもりです。

LTV向上は既存顧客との関係性がテーマに

LTVを向上させるには、「できるだけ安いコストで新規顧客を獲得し、維持コストをできるだけ抑えつつ、沢山の頻度で沢山の取引を継続的にしてもらう」必要があります。

しかし、新規顧客獲得コストは既存顧客維持コストの5倍〜20倍かかると言われていますので、必然的に「既存顧客との関係性を如何に構築するか」が、LTV向上において最も重要なテーマになってきます。

LTVで最も重要な指標は「継続期間(継続利用率)」

LTVの向上においては前述の通り、「既存顧客との関係性を如何に長く維持し、沢山の取引を行ってもらうのか」が重要なテーマとなるわけですが、基本的には、顧客は自分にとって必要なモノを必要なタイミングで、必要なだけしか購入しません。よって現実的には、「平均購買単価」や「購入頻度」をコントロールする事は非常に難しいです(不可能ではありません)

よって、マーケターにとって最も重要な事は、「顧客がその商品(サービス)を必要とした時に、いかに他社にスイッチされる事無く、継続的に自社を選択してもらうのか」、という事になり、LTV向上において最も重要な指標は「継続利用率」という事になります。

では果たして、どのようにすれば「継続利用率」を向上させる事ができるのでしょうか?それを考える為には、そもそも「なぜ顧客はそのサービスを利用し続けるのか」を理解する必要があります。

顧客はなぜそのサービスを利用し続けるのか?

顧客が何らかの商品(サービス)を利用(雇用)するのは、顧客がある状況において、何らかの課題を解決したいと考えているからであり、その課題解決に最も適したソリューションを、顧客は採用しようとします。

そして複数の選択肢の中から、「相対的に優れている」と判断したソリューションを選択するわけですが、この判断は初めての採用の際も、また再利用の際にも行われ続けます。

よって、自社のサービスを採用してくれたユーザーが、「相対的に優れている」と判断し続けてくれている限り、継続利用してもらえる可能性がありますが、逆にそこに疑念が生じた際には、他社にスイッチングされる可能性が同時に常に存在し続けます。

では「相対的に優れている」とはどういう状態なのでしょうか?

相対的に優れている状態とは?

「優れている」という概念は、「本質的価値の高さと、取引コストの総和」と定義できます。

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本質的価値は、そのサービスの提供する直接的な効用・付加価値と価格を指しますが、サービスや商品を採用する際には、そこに更に「取引コスト」というユーザーの負担が発生します。

取引コストとは、経済学で使われる言葉で、簡単に言えば、「購入する製品の本体価格以外に発生するコスト」のこと表します。移動費用や手数料などの他、現実の支出を伴わない心理的コストなども含まれます。
情報通信白書令和元年版の挿絵がわかりやすいので掲載しておきます。

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わかりやすく「ラーメン屋」さんで説明すると、自宅から100km離れた山奥に、価格も安く味も最高に美味しいラーメン屋さんがあるとして、意を決してそのラーメン屋さんに食べに行ったとしても、年間に何度もリピートする人は少ないでしょう。ラーメンが食べたくなったら、近所の味も価格もそこそこのお店に行く事になると思います。取引コストが高すぎて、選択肢から外れてしまうという事です。

アマゾンが圧倒的なLTVを確立できた理由

やや古いデータですが、アマゾンプライム会員の年間LTVは2016年で年間3000ドルと言われています。商品単価を考えれば驚異的なLTVです。おそらく現在ではもっと上がっている事でしょう。アマゾンはなぜこれほど高いLTVを実現できるのでしょうか?

そこには、本質的価値以上に、取引コストを徹底的に下げる戦略が、その成長の原動力となったと考えられます。

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アマゾンは小売業型のECとなりますので、その本質的価値は「品揃えの量」と「価格」であると考えられます。そこで価格面で差別化が生じにくく、品揃えの量で本質的価値が決まる「書籍」を最初のターゲット商品として、本質的価値で相対的に優位なポジションを確立します。

そして、レコメンデーション、ユーザーレビュー、翌日配送、ワンクリック決裁といった様々なソリューションを投入する事で、ユーザーにとって「圧倒的に低い取引コスト」で、商品を購入できる状態を実現させます。

しかもこれらのサービスはユーザーが取引を重ねるほど精度が上がっていき、ユーザー自身も「慣れていく」ため、累積取引量に応じて、より取引コストは下がっていき、スイッチングコストは上がっていきます。

これにより、ユーザーにとって圧倒的に優れた存在として、他社にスイッチングする理由を無くさせている事が、驚異的なLTV実現の大きな理由となっていると考えられます。

LTVを上げるたった一つの方法

コトラーのマーケティング4Pに当てはめれば、「Product」「Price」が「本質的価値」に関係し、「Promotion(&Sales)」「Place」が「取引コスト」に関係します。

理想的にはマーケターは、この4P全てをコントロールすべきですが、実際には多くのマーケターは、この4Pの中で「Promotion(&Sales)」にしか関われない、という事が多いのではないでしょうか?
この場合、マーケターが持ち得る「LTVを上げるたった一つの方法」は、「取引コストを如何に下げるか」という事になります。

実際にマーケティングの現場で、LTV向上をテーマによく引き合いに出されるソリューションとして、MA・LINE・メールマーケといった「One to Oneコミュニケーションプラットフォーム」や、ポイントプログラムがあります。これらはいずれも「取引コスト」を下げる為のアプローチと考えられます。

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ただ実際に、これらのソリューションが「ユーザーの取引コストを下げる」という目的で使用されてるかというと、必ずしもそうでは無いケースが多いように感じます。

LTV向上に向けた具体的方法論

ひと昔前、CRMと言えば「顧客の囲い込み」を行う概念として語られている時期もありました。しかしこのコンセプトは現在ほぼ瓦解しています。なぜなら顧客は囲い込まれる事を望んでいないからです。

顧客は自分が何かしらの解決した課題が発生した際に、それを解決してくれる最も優れたサービスや商品を選択(雇用)するだけです。

商品やサービスの本質的価値が圧倒的に優れていれば、顧客は自然と自社のサービスを再利用し続けてくれと思いますが、殆どのマーケターはそのような恵まれた状態には無い事でしょう。

顧客の囲い込みといった幻想が通じない以上、如何に顧客の取引コストを下げて、再利用し続けてもらうのかが、LTV向上における重要なテーマとなりますが、その為の具体的方法は、扱う商品やサービスによって様々な事と思います。

具体的なアプローチ方法として、今は主に「コミュニケーション」による方法がスポットライトを浴びる傾向にあると思いますが、個人的には、今後は「マーケティングサービス」そのものを創出し、アプローチしていく方法がより重要になってくると考えています。

そのあたりは、別途書きたいと思います。

LTV向上は経営レベルの課題

LTV向上はマーケティングというよりは、実際には経営レベルの課題と言えます。LTVを軸として、経営活動とマーケティング活動をどのようにリンクさせていけばよいのか?

次回のパート2では、LTVを経営レベルでマネジメントするための、経営管理手法について説明します。


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