高橋源一郎|古典と響き合う「方丈記」翻訳力
「モバイル・ハウス・ダイアリーズ」と書かれたら、チェ・ゲバラの日記『モーターサイクル・ダイアリーズ 』を思い浮かべてしまい、どこか外国の日記文学かと思ってしまう。しかし、これは高橋源一郎が『方丈記』に付した読み仮名だ。
国語の授業で“方丈記”という文字を見て以来、ほとんどの人は“ほうじょうき”とひとつづきに暗記するだろう。その意味を考えようとはなかなかしない。“つれづれぐさ”や“げんじものがたり”や“こきんわかしゅう”と同じように音が耳に残る。まさかそれが「モバイルハウス」