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【読書感想】万事快調〈オール・グリーンズ〉

波木 銅著 2021年刊行

本屋で何か面白そうなものはないかと探していたら、手書きのポップで推されていたので興味を持った。
結果的に言ったらまさに「面白い小説」だったわけで、満場一致で松本清張賞を受賞したというのも頷ける最高のエンタメ青春小説です。



あらすじ

朴秀美はド田舎の底辺工業高校に通う二年生。上手くいかない家庭環境や田舎の閉塞感に絶望していた彼女はある事件をきっかけに大麻の種を手に入れる。
彼女はクラスメイトの岩隈真子と矢口美流紅とともに学校の屋上で大麻を栽培し売りさばくことを思いつく。はじめは軌道に乗っていた商売だが危機は静かに迫り……

感想

ここまでエンタメに振り切った小説を久しぶりに読んだ気がする。そのおかげか満足感が凄く、面白い映画を一本見た時のような読後感があった。

映画や音楽からの引用が多いせいか、音と映像でイメージが膨らみ、小説を読んでいたのに映画を見ているような気分になる作品。

本作は田舎の底辺高校に通う三人の女子生徒がメインに物語が進んでいく。
朴(ラップミュージック)× 矢口(映画)× 岩隈(漫画)と各々が趣味を持ちサブカル女子というと軽い感じになってしまうが、物語の流れに膨大な引用が散りばめられている。
映画は分かったけどラップはからっきしなので調べながらという感じではあったが、パロディーが分かった時の気持ちよさがある。その点は、ハマる人にはハマるだろうなぁと思いながら読んでいた。
知っていればより楽しめる、知らなくても物語の面白さは変わらないので問題はない。

大麻を育てて、売る話ということで重めの犯罪なわけだが、メイン三人の中でブレーキ役がいない。かろうじて岩隈が一般的な倫理観を持っているが止めるまではしないので、順調?にビジネスは拡大していく。
全員の現状が最悪なので、道を踏み外した先もあまり変わらない。その点は結構斬新だと思った。

あと、ドラッグ描写が満載なのだが、なかなかひどいことになっている(笑)リアリティがあったしそこの描写は、どうやって書いたんだろう?
すごく気になる。


そんなわけで読んでみて大変満足した一冊。ラストはカオスだけどなぜか爽快感があった。
最近、おもしろい小説を読んでないという方におすすめです!


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