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それゆけ!山川製作所

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株式会社山川製作所の社長である財前が綴る、社員たちの日常を小説風にまとめています。
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2022年7月の記事一覧

【小説】それゆけ!山川製作所 (#12 椿木 哲人&立川 ユキ②)

台本と聞いて戸惑っている俺になど目もくれず、ユキは固定してあるカメラ2台を起動した。
そして、改めて俺の前に立ち、目を閉じると深く深呼吸をする。

再び目を開けたユキは、完全に準備が整っていた。

……最初に言っておく。
俺が今から話す内容は全て棒読みになっていると認識してもらいたい。

……アクション!

~ シーン1:学校の体育館裏 ~

僕の名前は椿木哲人。
デブでのろまな陰キャ眼鏡だ。

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#11 椿木 哲人&立川 ユキ①)

どうも皆様こんにちは。
株式会社山川製作所、代表取締役社長の財前でございます。

黒川の奴の助言から始まったこの小説も、前回で無事10話を迎えることができましたねぇ。
物書きとして未熟なこの私がこうして更新を続けられるのも、我社で働いてくれる多くの社員のおかげ。
彼らの豊かな人間性があってこそ、私はこうして文字を綴ることができるんですねぇ。
いやいや、感謝しかありません。
感謝感激雨あはれ。ああ、

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#10 財前の独り言)

どうも皆様こんにちは。
株式会社山川製作所、代表取締役社長の財前でございます。

いやぁ、とんでもない変態が世に放たれてしまいましたねぇ。
自身の状態を相手に投影することによって、より深く臨場感のある想像を働かせる。
彼は『ネオ脳内変換』と名付けていましたが……。
いやはや、人の性癖というものは予想以上に複雑で、多種多様な形があるのですねぇ。

それにしても、まさかパンツを穿かずに業務に臨むとは、

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#9 小森 啓介②)

結局、僕は昼休みが終わる間際までトイレから出ることができませんでした。

初めてだったんです。
比喩ではなく、体中に電気が走ったようなこの感覚。
言葉でしか知らなかった『背徳感』というものを、本能的に感じたことで沸き立つ高揚感。
立川さんは知りません。
僕の脳内で、ベルトを外しチャックを下ろされていたなんて。

これがただの想像であったのなら、ここまで興奮はしなかったでしょう。肝心なのは、自身の置

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#8 小森 啓介①)

どうも皆様こんにちは。
株式会社山川製作所、代表取締役社長の財前でございます。

改めて言いますけれども、我社にはそれはもうたくさんの社員が勤務しているんですねぇ。

実際どのくらいかといいますと……。

山川製作所本体だけで約2万5千人。連結子会社である450社を含めますと、その数は20万人強にもなるんですねぇ。
これでも、国内における従業員数ランキングでトップ10には入っていないんですよ?上に

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#7 財前の独り言)

どうも皆様こんにちは。
株式会社山川製作所、代表取締役社長の財前でございます。

2人目は独自のスマート道を突き詰めている須藤くんでした。

まず初めに言っておきたいのは、彼は本当に仕事のできる男だということなんですねぇ。
本人も触れていましたが、同期組の中で一番最初に昇進したのは彼でした。
我社の規模になると、各期ともに約1000名の社員がいます。
その中でのトップ昇進と聞けば、どれだけ彼が仕事

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#6 須藤健一 ②)

ギザ十というサプライズに困り果てた俺だったが、ICカードを持っていることを思い出し、無事缶コーヒーを購入することができていた。
自動販売機のセンサーにカードをかざすだけ。実に簡単だ。

ははは、硬貨ではなく結局ICカードを使った俺を見て、
「今どき自動販売機で硬貨を使うよりも電子決済を利用したほうがスマートなのでは?」
という声が聞こえてきそうだ。

しかしながら、俺はそうは思っていない。

電子

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#5 須藤健一 ①)

どうも皆様こんにちは。
株式会社山川商事、代表取締役社長の財前でございます。

早速ではございますが、今回は資材部調達課の若手男性社員について書いていきたいと考えているんですねぇ。これがまた非常に興味深い人物なんですねぇ。

実は、彼については前々から知っていましてね。
きっかけは、やはり黒川の奴からの報告だったんですねぇ。
何か変なやつがいると。

それからずっと注目しているわけです。
いや、注

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#4 財前の独り言)

どうも皆様こんにちは。
株式会社山川製作所、代表取締役社長の財前でございます。

記念すべき一作目を無事書き終えることができましたねぇ。
やっぱり、特定の社員に注目していく方法は間違っていなかったようですねぇ。

今年の春に入社した新入社員の浜川さん。
彼女、結局最後は叫ぶんですよねぇ。
エントランスでも、コンビニの駐車場でも彼女の声はよく響きます。

私が浜川さんに注目することになったきっかけは

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【小説】それゆけ!山川製作所 (#3 浜川莉子 ②)

今は、課長の運転する社有車で会社に戻っているところ。

しっかりとハンドル上部を両手で握り、右左折時にはサイドミラーで一度確認、そしてその後目視で再確認。横断歩道前ではたとえ人がいなくとも減速をしている。
これは「かもしれない運転」だ。
基本に忠実な運転をする田中課長を見て、不意に大学前の春休みに通った地元の自動車教習所を思い出した。

(……真面目で仕事ができる変人)

運転姿を横目で見ながら、

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