破局

遠野遥さんの第163回芥川賞受賞作品。

「破局」とは、事態が行き詰まって、関係・まとまりなどがこわれてしまうこと。また、その局面。悲劇的な終局。

のことだそうです。ネットで調べたところによると。

だいたい「破局」って、男女関係の終了の時に遣われるイメージが強いですよね。だからこの小説もそうなのかなと漠然と読み始めましたが、かなり早い段階で「あ、こりゃ単に恋愛のことを指してるのではないな」と分かりました。

いやそれはラグビーの話から始まってるからじゃんとかそういうことではありません。なんでしょう?強いて言うならその文体ですかね。

まず最初に「ん?」となったのはチワワですよね。チワワをあんなふうに気にすることってあります?姿が見えなくなった後に「もうチワワの心配をしなくて済んだ」なんて。

視界にはその他に様々なものが入っているのに、チワワに脳の大部分、というか全部を侵略されている状態なんですよ。それを自分の意志で振りほどけないんです。チワワと自分の距離が物理的に離れて視界からその姿が消えてなくならないと、自分の脳みそからチワワをうっちゃることができない。

そしてまた逆に言うと、視界から消えさえすれば簡単に考えなくて済ませられるようになるんです。そのチワワについて後であれこれ脳内で思いを巡らせることがない。

怖い。怖い人です。ヤバい人。

でさらに怖いのは、少なからず私にもそういう部分があるということを気づかされてしまったことなんです。

わざわざこれを粒立てて文章にされて、でそれを読んでみると「あ、こいつヤバい」と思うんですけど、思い返すと自分にもこんなことはざらにあって、「あ、じゃあ俺ってヤバい奴?」ってこの時はまだ序盤だし思わないんだけど、後々、こいつのヤバさが露見し始めると、自分のヤバさとイヤでも向き合っていかなきゃいけなくなる。

という作品でした。おもしろかった。

この方の本をもっと読みたくなりました。読んでみます。

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