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愛着理論から自分の愛情タイプを知ろう

人を愛するパターンについて、心理学的に分かっていること

恋愛や結婚生活などパートナーとの人間関係において、同じような間違いを繰り返すことは無いだろうか。つい相手に依存してしまったり、逆に鬱陶しくなって遠ざけたり、相手に関心を強く寄せたくなかったりして、結果として関係が壊れてしまう。毎回似たようなケンカや別れ方をしている人もいるだろう。

精神医学や心理学として臨床研究を経たエビデンスをもとに、愛着理論と呼ばれる考えがある。元々は親子、特に母と子の関係性から、その子供が外界に対してどのように振る舞うか(勇気を持つか、好奇心が強いか、不安になりやすいかなど)を研究していたものだ。転じて、恋愛や結婚生活にも適用可能な理論であることが分かってきている。科学的に自分の振る舞いの傾向が分かり対策が打てるのは頼もしい。

本書はタイトルが「異性の心を上手に透視する方法」となっているが、実際はしっかりした心理学の本。原著のタイトルは「Attachement」で、まさに愛着理論をどっしりと解説する本だと分かる。

愛着理論では、人を大きく3つのパターンに分ける。
・心配性のN
・独立性のV
・安定性のS
育ちからも影響を受けるが、大人になった後も無意識/意識的に変わることが出来る。

私はもともと独立志向が強くVタイプであり、愛着理論におけるその傾向と対策を知らなかったのも一因となって、恋愛がずっとうまくいかなかった。というか、実際は順番としては逆で、恋愛がうまくいかない中でアレコレと本を読んでいったら、本書をはじめとした精神医学/心理学のエビデンスベースな考えに触れて大変助かっている。おかげで結婚もできたし、愛情のあふれる生活を持てている。

Vタイプの特徴は色々とある。
元々は相手と親密になりたいと考えてアプローチしたのに、自分のことだけを大事と考えてしまうあまり、そのうち相手が疎ましくなってきてしまう。相手の欠点ばかり気にしてしまい、その欠点を受け入れて自分が損することを嫌がる。相手といると自分の人生が毀損されていくような感覚を覚えるといった状態になってしまう。特徴をよく理解し対策を練ることで、相手を幸せにでき、豊かな愛情経験を得られるようになるだろう。

このタイプは、精神医学でいうと、自己愛性パーソナリティと大きく関係がある。このパーソナリティは、自己愛が強いために他人を愛する能力が低くなり、人間関係を結びづらくなる傾向がある状態だ。あくまで個性の一つとして認識されているが、社会生活に支障がでるようだと「パーソナリティ」でなく「障害」となり、治療が必要になる。

私も一時期、このパーソナリティが自分に当てはまるのではと悩んでいた(仕事での人間関係はすこぶる良好だったが、恋愛は前述の通りそうでもなかったため)。アドラー哲学に感銘を受け、自己受容・他者信頼・他者貢献に取り組んだ結果、少しずつ改善して今はだいぶよくなったと思っている。アドラー哲学を説明している「嫌われる勇気」については、こちらから。

ちなみに今回のNoteのベースとなっている本の邦訳タイトルは、「異性の心を上手に透視する方法」。さも相手をより良く理解しようとするテクニック論に関するものと思うかもしれないが、実際には自分を知ることにもフォーカスされている。原著タイトルは「Attached(愛着)」で、より中身をあらわしていると言えるだろう。

Vタイプ:孤独な旅人

本好きにはVタイプが少なくないと思うし、私がかつてはそうだったというのもあって、この孤独な人生の旅行者タイプについて、書き進めていきたい。

親密さは(部分的な)自由の喪失だと理解している
・自分の悩みは自分だけで解決するものだ
・パートナーがいないのは、もっといい人に出会う機会がないからだ(自分でなく環境に要因を求めがち)
付き合いだしても、すぐに相手の欠点に目がいく。距離をとる理由を無意識的に探してしまう
・完璧な恋人を探し求めてしまう。愛する過程そのものに関心を寄せておらず、自分がよい配偶者という「買い物」が出来るかどうかにしか興味がない
・相手が幸せかどうかは、自分でなく相手の問題だと考えている
他人と比較して自己肯定感を得る

上記は自分を守ろうとする行動だが、実は愛においては非生産的な態度なのだ。関係を深めるどころか壊していく。メンタルモデルを変える必要がある。

VタイプからSタイプへ

VタイプよりSタイプの方が、安定して人を愛せる。Sタイプは不安にならず落ち着いて、それでいて相手を疎ましく感じずに愛し与え続けることができる。愛着タイプは育ちだけで決まるものではなく、人は自分の意志と少しずつの行動で変わることができる。また、Sタイプの人間と接していると、影響を受けて自分もSタイプに変わっていくこともある。

Sタイプの特徴をあげてみよう。周囲で当てはまる人がいたら、その人から学ぶ姿勢を持ってみることをオススメする。

自分以外に頼れる人がいるからこそ、外の世界に出ていき色々なことを成し遂げることができると考えている
幸福は分かち合ってこそ意味がある(本/映画の"Into the wild"より)
・自分にも、相手を幸せにする役割があると認識している。相手の幸福が自分の幸福に大きく影響するという、価値観を採用している。
・相手の悪い面でなく良い面を慈しむ
・完璧な人を追い求めるのではなく、また、目の前の相手について不満があるから関係を深めないのでもなく、じっくりと親しい関係を築いていく
・自分のニーズを素直に表現できる

Sタイプのコミュニケーション術のさらなる具体例

前述した特徴の他にも、本書ではSタイプが行う望ましいコミュニケーションのやり方が幾つか書かれている。重要なものを抜粋してみよう。

・ケンカしても、問題を一般化して相手の人格を攻撃したりしない。具体的な問題解決にフォーカスする。
互いのニーズを明確に提示して、満たし合う(察してもらうことを期待しない。相手のニーズを勝手に決めつけない)
相手の関心に深く興味を持つ
・情緒を安定させ、謙虚で穏やかに話し合う

終わりに:愛するということの科学について

人間関係を構築することは、親子だろうと恋愛だろうと、はたまた仕事だろうと、行きあたりばったりではうまくいかない。真剣に考え、行動し、振り返ることが必要だ。そこには物事を進めるフレームワークがあると望ましく、その一つが精神医学や心理学だ。特に心理学と聞くと根拠のない怪しい書籍も多いと思うかもしれない。それは部分的には真実だろうけれど、なかには臨床研究に基づいた、確かに頼れるものもある。そういった確かな知見をもとに勉強していくことが、幸福に至る真理の探求に繋がることがあるだろう。

ぜひ本書を手に取って頂きたい。

本書はKindleデバイスで読んだ。非常にお勧め。



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