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中学生の教育相談って3

教育相談のすすめかた

教育相談の流れ

1 スクリーニング
2 「もやもや」を探る
2 「好きなことや興味のあること」を探る
3 感謝を伝える

スクリーニング

 まず、最初にスクリーニングの質問を問いかけて、体調不良、メンタル不良や心配事がないか探っていきます。そのときは、相手の表情や態度に変化がないかよく観察しましょう。表情がくもったり、下を向いたり、そわそわしたり、答えようとしなかったり、声のトーンやテンポがいつもと違ったりすれば、メンタル不良の可能性が高いと思われます。
 中学生の場合、自分の感情を言葉でうまく表現できないことがあるので、言葉以外のサインを見逃さないようにしましょう。相手の心理状態を言葉以外のサインで認識することについて、もう少し詳しく知りたい方は「NLP、キャリブレーション」とかで検索するといいと思います。

「もやもや」を探る

 スクリーニングで「もやもや」を発見した場合は、それを探っていきます。うまく言葉で説明してくれるとありがたいのですが、中学生は自分でも何が原因かわかっていない場合があるので、一緒に探っていきます。中学生のたいていの心配事は、学校生活のことか家庭生活がほとんどです。
 〇 学校生活(友人、クラス、勉強、部活動)
 〇 家庭生活(親子、兄弟、虐待、ネグレクト)

 このときの、注意点の一つは、「教育相談では原因を探ること、問題を解決することが一番の目的ではない」ということを理解してください。あまりにも深入りしてしてしまうことで、逆に更なるメンタル不調を起こしてしまうかもしれません。そんなときは深堀はせず、学年主任や生徒指導主事、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、管理職などに必ず相談して、あとで対応するようにしてください。
 注意点の二つ目は、「しんどい思い」や「困っていること」に寄り添って共感していく姿勢を取ることです。その場での解決や納得、約束を決めようとしないことです。教員は良かれと思って、アドバイスをしなければ、解決してあげなければと思ってしまいがちです。しかし、ここはぐっと我慢して話を聞きます。子どもが話をすることができるようにサポートします。なぜなら、自分が解決してきたやり方は、目の前の子どもに当てはまらないことが多いからです。
 だから、「子どもが安心して話せる7つの方法」の感情の言語化ができるように、困っている気持ちを読み取って、子どもがしっくりくる言葉を一緒に探します。「先生はわたしの気持ちを分かってくれる」ことを子どもが感じることほど重要なことはありません。
 わたしたちは、孤独を感じるときに「誰もわたしのことを分かってくれない」と思いがちです。でも、誰か一人でも自分を理解してくれる人が存在しているとわかったら希望が持てます。せっかくの教育相談、私たち教員がその一人になって、子どもの未来をつくりませんか。子どもの未来をつくるために学校や教員は存在しているのだと私は思っています。だから、子どもから見えている世界をそのまま理解する努力をしましょう。

好きなことや興味のあることを探る

 もやもやが見受けられない場合。なぜ、教育相談で好きなことや興味のあることを探るのか?
 こう疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。理由の一つは、「困っていることがない」と教員が思ったときに、何を話したらいいか分からないので、なんとなく雑談で終わってしまう場合があるということです。それも、子どもが話してくれればまだよいのですが、教員がしゃべり続けることが多いと感じます。場合によっては、子どものできていないことを指摘したり、説教したりと教育相談の目的から大きく外れてしまうこともあります。教育相談の目的は子どもが話すことで「先生はわたしのことを分かってくれる」と感じてもらうことなので、教員がしゃべり続けてはいけないのです。

 好きなことや興味のあることを探るメリットは5つあります
1 「好きなことや興味のあること」は子ども主体で話が進む
2 「好きなことや興味のあること」は生徒が話し続けられる
3 「好きなことや興味のあること」は自助資源となる
4 進路選択につながる
5 キャリア選択、生き方につながる

 だから、教員が「好きなことや興味のあること」を聞き取りながら、言語化して、子ども自身に自助資源を認知させていくのです。

具体的には、
「『最近、楽しいな~』と思うことってある?」
「「最近、興味ある~』と思ってることってある?」
「『実はわたし、これ得意なんです』ってことある?」
「『あなたの好きなことは?』って聞かれたらなんて答える?」
「『小さなころから、好きなんよね~』ってことある?」
「『これ楽しかったな~』っていう思い出ってなに?」
 と、いう感じでしょうか。他にもいろいろあると思うので、考えてみてくださいね。

フカボリしてみましょう

 具体的に好きなことや、興味のあることが出てきたら、深堀してみましょう。どうやって深掘りしたらいいか分からない人は、下の質問を組み合わせて、どんどん深く掘り下げていきましょう。

 「それって、いつ頃から?」
 「きっかけって、何だったの?」
 「最大の魅力ってなに?」
 「あなたのおススメはなに?」
 「そこをもう少し詳しく教えてもらえるかな?」

 好きになったり、興味を持ったきっかけを掘っていくと、家族のことや影響を受けた人や本などが出てきて、子どものそれまでの経験や価値観を知ることができる貴重な時間となるのは間違いはありません。そして、そこまでたどり着くには、ある程度のコーチングスキルが必要なので興味のある方は勉強してみてはいかがでしょうか。 

好きなことや興味のあることはキャリアとどうつながるのか

「キャリアデザインの3つの輪」の理論では、3つの輪の重なる部分が「適職」と呼ばれています。

「 Will 」は、好きなことや興味のあることでやりたいこと
「 Can 」は、できること
「 Must 」は、社会から求められていること

 中学校の教育相談では、「 Will 」のみを扱い、他は扱いません。理由は、将来的に「 Can =できること」は増えてくるし、知識やスキルは後から取得することはいくらでも可能だからです。また、「 Must =社会から求められていること」も、どんどん変化しているし、個人の発信から多様なニーズを掘り出すことが可能な時代になっているので、現時点では考える必要はないからです。

高校入試の面接では

1 わたしは○○に興味関心を持っています。
2 だから、将来は○○の分野をやってみたいと思っています。
3 そのために、○○の知識やスキルを身につけたいと思っています。
4 そのために、○○の資格を取得したいと思っています。
5 また、将来のために○○の経験も貴校で積み上げたいと思っています。
  以上が、わたしが貴校を志望した理由です。

 一般的には、高校入試の面接は、このような流れになるのではないでしょうか。好きなことや興味のあることは、子ども自身にとっても自己理解の機会となります。教育相談の中で教員がこの「 Will 」の部分を明確にしてあげることができたら、将来のキャリア選択や生き方につながるのではないでしょうか。
 入試面接のために、受かりそうな理由を直前になって無理やり考えたり、やってきたことの理由を後から書き加えたりするのではなく、自己理解をするために、充実した中学校生活を送るために、理想の未来をかなえるために、教育相談をとおして一緒に考えることができたら、とてもすてきだなと思っています。学校は子どもの未来をつくる場所であり、教員は未来志向のコーチでありたいと願っています。


せっかくの教育相談、「ちょっと難しいな」が「楽しく有意義な教育相談」に子どもにとっても教員にとってもなれば、とても嬉しいです!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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