小中学校の内容を学び直せる大人向けの塾があってもよい

「小学校からやり直せ」という決まり文句的な悪口があるけれど、この言葉、小学校の内容ナメすぎ。小学校の内容、侮りがたし。私の見るところ、小学校・中学校の内容理解が確実に完璧なのは旧帝大クラスで、それ以外だとどこかに抜け落ちがある。小中の内容はそのくらい難しい。逆に言えば。

小中学校の内容を完全マスターした子が旧帝大に進んでるのでは?と思えるくらい。九九や分数の計算に問題なくても、速度の問題、濃度の問題、割合の問題、面積の問題などの小学校で習う内容を完璧にマスターできてる人は意外と少ない。このあたりの内容を習う際、生活体験が不足してたのが原因かも。

「10%の塩水100mlと20%の塩水200mlを混ぜたら何%の塩水になるか?」という問題、結構難しい。濃度の計算は旧帝大の学生でも結構間違う。でも、これも慣れ。水耕栽培では濃度の計算が必須なので、毎日のようにやってるとできるようになる。体験が不足してるとなかなか解けない。

年齢を重ねるのにあわせて体験が積み重なり、速度の問題が解けるようになる人も多い。しかし小学校で習うタイミングではその体験が乏しく、何を習っているのか感覚的体感的につかめない子が結構多いのでは?と思う。体験不足が内容についていけない要因の一つのように思う。

私自身、小学校の内容はできていないところが多く、中学生になって何度も復習したし、高校生になってからでも小学一年生の内容からやり直したほど。中学校の内容に至っては、高校生の間に何度復習したかしれやしない。小学校、中学校の内容は結構重要で、これをマスターしておくの、大切。

あまり知られていないけど、国家1種試験は中学校の内容が中心。中学校の教科書をしっかり復習したらかなり高得点が狙える。私自身、中学校の教科書を何度も読み返すという方法だけで試験に臨み、その年で10位(農芸化学)とまあまあの好成績だった。中学の内容はそれだけ難しいということ。

小学校の内容はなるべくテクニックに走らず、体感的体験的に理解することが大切。ともかく計算できさえすればいい、では、後で中学の内容を理解することが難しくなる。小学校の内容はなるべく体験に基づいた形で習得することを目指す。もし体験が乏しいようなら、その体験を意図的に増やした方がよい。

小学校で復習するのは、算数だけで十分。中学の数学が理解できないなら、それは小学校の内容のどこかでつまづきがある可能性がある。小学校の内容を復習する際は、なるべく体感的体験的に。

中学校の数学の内容は、一度復習したくらいではマスターできない。結構内容充実。教科書を何度も繰り返し読み込むことが大切。あまり参考書や問題集に浮気せず、教科書中心の学習が大切だと思う。

私の塾生で、高校1年生になるのに分数が分からない子がいた。中学でも学年最下位クラスの成績だったのだけど温厚な性格で内申点がよく、なんとか高校に進学。でも算数・数学が壊滅的で留年必至の状態。で、うちの塾に来た。九九と割り算はできたので、分数からやり直すことにした。

丸い紙を用意して、「これをケーキやパイだと思って、半分に切ってみろ」と言っても切れない。もちろん三つ、あるいは四つに切れと言っても切れない。まさに「ケーキの切れない非行少年たち」状態(非行少年じゃなかったけど)。何度も何度も、二つに切ったり三つに切ったりするのを経験するうち。

その子は重大な発見をした。「あ!丸いのを切るときは、必ず真ん中を通るようにして切ればいいのか!」
分かっている人間からしたら「そこから分かってなかったんかーい!」とツッコミたいところだが、彼はケーキやパイを切るという経験が皆無で、まったく見当がつかなかったらしい。

おそらく、それには成育歴も関係している。その子は大変なおばあちゃん子で、5歳になるまでおばあちゃんがスプーンで口にまで食事を運ぶありさまで、自分で食事も着替えもさせてもらえなかったという。当然、ケーキも大きなのを取り分けてもらえたから、自分で切って分けるという経験が皆無だった。

けれど、何度も何十度も円を切り、粘土の棒を切る体験を続けるうちに、分数というものが体感的にわかったらしい。特に円は必ず真ん中を通るように切るという「発見」は本人にとって深く感じるところがあるらしく、「だから円グラフは真ん中から線で分けられているのか!」と、感心していた。

その子は、分数が分かると瞬く間に小学校の内容を復習し終えた。中学の内容に入ると、因数分解で苦しんだが、それもやがて克服、中学校の内容をすべてやり終えると、高校の成績は全く心配なくなり、卒業後は給料もらいながら学べる自動車整備学校へ、高倍率にもかかわらず合格、進学した。

私はこれまで学年最下位クラスの子どもを4人面倒見てきたが、みな真ん中以上の成績にまで上昇した。全員小学校の早い段階でつまづいていた。つまづき始めたと思われるところから、体感的体験的に積み上げると、どの子も中学校の内容まで習得することができた。

もし成績が伸び悩んでいるのだとしたら、小学校からやり直すのをお勧めする。たぶん、思わぬところでつまづいている個所があることに気がついて、驚くことになる。でも、6年かけて学んだことなのに、中学生以上にもなるとあっという間に理解し、復習できる自分の成長にも驚くことになると思う。

小学生の頃に理解できなかったのは、当時、体験の蓄積が足りなかったからだろう。年齢を重ね、体験が積みあがると、小学校の内容はスッと理解できる。もし体験不足が分かれば、それを積み上げればよい。それで小学校の算数はやり直せる。すると、中学校の内容も習得できるようになる。

大人になってからも、学び直しはお勧め。できないと思っていたことができるようになるの、かなり楽しい。私は、大人の学び直しの塾があってもよいように思う。いま、リスキリングというのが流行っているけれど、小中学校の義務教育の内容を学び直してからの方が効果は劇的だと思う。

上述したように、国家一種は中学までの内容で合格できる。そのくらい、義務教育の内容は社会で生きていくうえで必要な知識がぎっしり詰まっている。さすが義務教育、と言ってよい。リスキリングを進めるなら、小中学校の内容の学び直しを、大人になってできるようにする制度があってもよいように思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?