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気負わずに始めるセルフブランディングーエッセイスト/ライター 江角悠子さんに聞く

 一つの企業に属さない働き方が一般的になってきた昨今。所属や肩書きよりも、個人のスキルや思考に注目が集まっています。そんな今、「私はどのような人か」を発信することは、より重要になっています。誰もがSNSを活用して自らを表現し、ブランディングを行うことができる時代。自分の価値を高めるために背伸びしないといけない?難しいのでは?と、なかなかチャレンジできない人も多いのではないでしょうか。

 今回はエッセイスト/ライターとしてフリーランスで活躍される江角悠子さんにSNSやブログを通したセルフブランディングについて、伺いました。

江角 悠子(えずみ ゆうこ)さん
2006年からフリーライターとして活動。ウェブメディアや『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆。同志社女子大学の非常勤講師や自身が主宰するライター塾といった教える顔も持つ。京都在住。二児の母。ブログには日々の暮らしのエッセイを綴る。

セルフブランディングを行う上で意識していることは、盛りすぎないこと

 事前にブログで写真を見ていた方にインタビュー取材をした時のこと。「待ち合わせ場所で写真の方を探したんですが、見つけられなかったんです。写真の姿と印象が違っていて、気づかなかったためです。写真と実物が違うと、こういう困ったこともあるんだな、と勉強になりました」。それから江角さんは、実際に会った時に印象が変わらないよう、なるべく自然体の写真を選ぶようにしているそう。
 今はいくらでも写真の加工ができる。良い部分を見てもらいたいと思う気持ちもわかるが、会った時にギャップがないようにすることも考えておきたい

 江角さんのインスタグラムには、2021年春ごろから、ワンピーススタイルを中心とした日々のコーディネートが投稿されている。肌触りの良いコットン素材で、体を締め付けないゆったりとしたシルエットのスタイルが特徴。

「ワンピースを着ている女性が好きだから、私もワンピースを着ます」
出典:Instagram@yuko_ezumi

 「私のインスタグラムの投稿には、同じ洋服がいっぱい載っていませんか?洋服がたくさん欲しいわけではないんです」。確かに、同じ洋服が何度も投稿されている。「友人の真似をしてつけ始めたブローチは、同じ洋服でも変化がつけられるから、お得なアイテムです」。SNSに載せるために、新しい洋服を買うことはしない。普段を切り取って、投稿している

 以前は、自撮りをすることにも抵抗があったそう。「ファッションは好きです。でもモデルでもない素人の私が自撮りをすることに抵抗がありました。自分の顔も嫌いで、写真を撮られることも苦手でした。でも2019年の終わりからコロナウィルスが発生し、オンライン会議などで、嫌でも自分の顔を見るようになりました。見慣れていったことで、少しずつ自撮りをすることにも慣れていきました」。

自撮りをSNSに載せるのは、「可愛い私」ではなく、「可愛い服やアイテム」を見てもらいたいから

 特に好きな洋服は、江角さんの弟、江角泰俊さんが手がけるブランド〈EZUMi〉のブラウスとスカートのセットアップ。EZUMiのオンラインショップには外国人のモデルが着用した商品が並ぶが、「外国のモデルさんが着ていたら、日本人である自分が着たらどうなるのか、なかなかイメージできないんですよね。弟のブランドの服は、たっぷり生地が使われているんです。スカートがひらひらすると気分も上がりますよ。私みたいな普通の人が着ても、綺麗に見えるんだよ、と知ってもらいたくて投稿しています」。
 自撮りを載せると思うと抵抗があるかもしれないが、私の好きなものを見てもらうため、と思うと少しハードルが下げられそう

お気に入りの〈EZUMi〉のセットアップ
出典:Instagram@yuko_ezumi

私のしていることが、周りの人の応援になって、幸せになってくれたら、私も幸せ

 「せっかくお金を使うなら、投資ではないですが、知っている作り手さん、応援したい人にお金を使いたい。顔が見えるお買い物がしたいと思っています」。
 インスタグラムの投稿には京都にゆかりのあるデザイナーや作家のアイテムがタグ付けされている。京都にこだわっている訳ではないというが、展示会などで人となりを知る機会が多いため、必然的に拠点にしている京都の作家のアイテムが多くなるよう。江角さんにとって、SNSでの発信は、セルフブランディングであると同時に、大切な人の応援に近いのかもしれない。

普段の私を見せることが、仕事に繋がることもある

 以前、江角さんが子育てについて書いたブログを読んだ企業から、お母さん向けの記事を書いてほしいと依頼があった。「忙しい朝にパンを焦がしちゃって、焦げたところを削って子供に出していたんですが、お母さんは失敗するぐらいがいいんじゃないか、というような内容でした」。江角さんにとっては、なんてことのない普段の様子を書いた日記。でも企業の人には「そんなふうに子育てをしているお母さんに記事を書いてもらいたい」と依頼に繋がったという。そうした普段の様子を見せていることが、仕事に繋がることもあるんだ、と気づいたきっかけとなった。

相手とギャップを埋めるためのセルフブランディング

 「ブログ経由で仕事の依頼をしてもらうことも多いのですが、SNSなどを見た上で依頼してくれるクライアントさんとは、仕事がスムーズに進みやすいです。私のできることとできないことを知ってくれているからだと思います」。これはお互いがチームとして、良い仕事をするために必要なこと。ブランディングばかり上手で見掛け倒し、頼んでみたらダメだった、なんてことになるのはお互いにとって良くない。「バランスは難しいけれど、相手に下手な期待は抱かせない。普段の私を見せている方が、相手とギャップが生じにくいと思って」。自らも仕事を依頼する時に、相手が何に関心があり、どんな考え方の人なのか、分かった方がお願いしやすかった経験からきている。だから「盛りすぎないこと」が重要

 セルフブランディングというと、とても難しいもののよう。しかし、誰かとより良い関係を築くために、普段の私を知ってもらう手段と捉えれば、少し身近なものに感じられそう。自分自身のことを投稿することが苦手な人は、私自身ではなく、可愛いアイテムを見て!という気持ちで投稿する、江角さん流の発信から始めてみるのがおすすめ。

江角悠子さんをもっと知りたい方へ
◆ 日々の暮らしを綴ったエッセイはこちら
◆ Instagramは@yuko_ezumi


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