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コミュニティからすべてのビジネスが生まれる。けんすうさんと語る、これからのクリエイターエコノミー

「コミュニティを運用したいけれど、具体的な方法がわからない」
「SNSマーケティングに行き詰まりを感じている」

そう悩まれる皆さんに向けた、『SNSコミュニティの教科書』が発売されました。SNSコミュニティの運営支援を行うシンセカイテクノロジーズによる知見を余すことなく詰め込み、コミュニティマーケティングの基本から具体的な運用方法までを実践ベースでお伝えしています。

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そんな書籍発売を記念し、著者である弊社CEOの大社 武・CSO(Chief Strategy Officer)の岡崎 智樹とコミュニティへの造詣が深い方とのスペシャル対談コンテンツがスタート!

初回のゲストにお迎えしたのはけんすうさん。きせかえできるNFT「sloth(すろーす)」のコミュニティを運営しながら、そこで得た知見を日々SNSでアウトプットされています。

そんなけんすうさんと大社で「インフルエンサーマーケティングの終焉とコミュニティ時代の幕開け」をテーマにお話ししました。

大社 武|株式会社SHINSEKAI Technologies CEO
2011年に新卒でサイバーエージェント社に入社。2012年にGREE社と合弁でグリフォン社を設立し、2016年にはタップル社のマーケティング責任者を務め、国内No.1を達成。サイバーエージェント社を退社後、2017年にTORIHADA社を創業し代表取締役に就任。TORIHIADA社にてインフルエンサーマーケティング領域で事業を成長させた後、独立。
2022年にSHINSEKAI Technologies社を設立。コミュニティを活用し、企業や個人をエンパワーメントする挑戦を行っている。GREE AWARD、ベストベンチャー、TikTok AWARDなど、これまで多数の受賞歴。

けんすう(古川健介)|アル株式会社代表取締役
1981年生まれ。浪人生時代に「ミルクカフェ」という大学受験サービスを立ち上げたあと、レンタル掲示板の「したらば」を運営。新卒でリクルートに入社後、起業してハウツーサイトの「nanapi」をリリース、2014年にKDDIグループにM&Aされる。現在は「クリエイティブ活動を加速させる」ために、きせかえできるNFT「sloth」、成長するNFT「marimo」などを手掛けている。


インフルエンサーマーケティングはオワコン?

大社:けんすうさんは以前、Voicy「インフルエンサーからコミュニティの時代になる」とおっしゃっていましたよね。

私も、インフルエンサーマーケティングはオワコンのフェーズに入りはじめていると感じています。結局、どんなにフォロワー数を持っていても、プラットフォームのアルゴリズムには勝てないからです。

けんすう:おっしゃる通りですね。

大社:インフルエンサーマーケティング市場は3年後には1200億円、一方でグローバルのクリエイターエコノミー市場は70兆円になると言われています。

この差が何を示しているかと言うと、自分で意思を持って挑戦をし、賛同者が集まってビジネスが始まっていくような、真のクリエイターエコノミーはインフルエンサーマーケティングの先にはないということです。

けんすう:僕も同じことを考えていて。現実には、TikTokで数百万人フォロワーがいても全然知られてない人もいるんです。見たことはあるけど、影響力はない、という形になってしまう。

一方で、300人しかいないコミュニティでも、イベントをやると100人が集まるような熱量の高いところもあります。やはり強いのは後者だな、と。

大社:インフルエンサーがモノを売ることができなくなったわけではないんですよ。

ただ、企業の発信にしてもコンテンツが一方通行的なものになってしまい、なかなかフィードに載らないなかで、SNSとは切り出された形で「そういうのが知りたかった!」が集まっている場所が改めて必要になっている。

ファンと共創できるクローズドな環境が望まれていますよね。

けんすう:インフルエンサーは商品を紹介するのがメインのビジネスになりやすいですが、拡大しようとすると「自分が使っていないもの」も紹介しないといけません。これだと信頼を失ってしまいます。なので、売上拡大をしようとすると、インフルエンサーも最終的に独自のプロダクトを作ることが多いですが、結局それを売るのは自分のファンコミュニティだったりするので、それも含めてコミュニティの時代が来てるかなと。

大社:本当はインフルエンサーも、商品との最適なマッチングを軸に、真の賛同者を可視化することができれば、素晴らしいビジネスが誕生するはずなんですけどね。

私はこれからのコミュニティ作りで大切なのは、Key Opinion Leader(KOL)とKOC(Key Opinion Customer)が共存することだと思っています。KOLはインフルエンサー、KOCはコミュニティやブランドを代弁してくれるような、熱量の高い顧客です。

今後はフォロワー数や知名度ではなく、ブランド理解があり、強い共感を抱いている人が選ばれるKOLとしての“アンバサダーマーケティング”に変わっていくと考えていますが、けんすうさんはどう思われますか。

けんすう:Appleはわかりやすい事例ですね。先日行われたApple Vision Proの説明会に呼ばれた人は一部の人だけです。それは、フォロワー数の多さとかではなくて、Appleにとって本当にプロダクトの価値のわかる人たちなんです。言い換えると、Appleが見ている未来をちゃんと説明できる人しか選ばれていないんです。

それもあって、日本でリリースされたVision Proの記事は全部解像度が高かった。薄い感想が出ることを一切排除しているあたり、本当にアンバサダーマネジメントがうまくできていると思いますね。

僕たちとしてもAppleの発信は単なる情報としてしか受け取らないけど、熱量の高いアンバサダーが語ったことは信じちゃいますもん。

大社:インフルエンサーマーケティングも成熟化していくなかで、商品とのミスマッチが出てきたり、ユーザーサイドから、「これは案件でしょ」とバレてしまっていますからね。

そういった意味でもコミュニティからUGCが生まれて、SNSで拡散されていくほうが、ブランドとしてもサステナビリティがあると思っています。

けんすう:先日、ある有名なゲームのプロデューサーの方とお話ししたときに、キーとなるのは熱狂的なファン100人だと言ってましたね。その100人にコンテンツの裏側や、施策の意味を伝えることで、彼らが代弁してくれると。

面白いのが、プロデューサー本人が言っても届かないってことです。運営としてのポジショントークだと思われてしまう。結局、運営ではなく、コミュニティの人が語らないと効果がないんですよ。本人が言っても伝わらない時代だから、コミュニティが超大事ってことです。

熱狂的なコミュニティに必要不可欠な“余白”

大社:最近、けんすうさんが気になっているコミュニティはありますか?

けんすう:「キユーピー マヨネーズ ファンクラブですね。マヨネーズ好きが集うコミュニティで、アカデミーで勉強して認定試験を受けることで、「マヨシェルジュ」として活動することができます。マヨネーズ愛が強すぎて、マヨネーズを使ったレシピが毎日のように投稿されているのが最高なんです!

そこに、「これはマヨネーズ使わない方がおいしいね」とか、「他社の方がおいしいです」みたいなぬるい客観性はいらない。みんな偏愛的なコンテンツが見たいから。

大社:たしかに、僕も釣りが好きなんですが、釣りインフルエンサーのレビューよりも、釣りコミュニティにいるオタク的なメンバーの意見を参考にしてましたね。その人がオススメしてくれるルアーとか釣竿を全部買って(笑)。

“本物”がそこにちゃんといることに説得力をすごく感じましたね。

けんすう:それでいくと、みんなも「ドロピザ」をむちゃくちゃ見てると思うんですけど。(※漫画「ONE PIECE」を考察するYouTubeチャンネル)

大社:ええ、大好きです。

けんすう:ONE PIECEを楽しむ以上に楽しんでいるというか、もはや「ドロピザ」の考察を、逆に考察している感じがありますよね。ファン同士で話すときも「ドロピザ」を見ていることが前提だったりするんですよ。これってコミュニティに近くないですか?

大社:プロデューサーによって出来上がった曲が、DJの手が入ることによって評価されるというか。そういうものが生まれる余白があるんでしょうね。

けんすう:これはVTuber会社の人に聞いた話なんですけど、日本ではVTuberの2次創作をファンがめちゃくちゃ作るので、コンテンツの厚みがすごく出るそうです。

ファンアートを通じてイラストレーターが名をあげたりもしているんですよ。

大社:コミュニティ内で、KOLみたいな人がどんどん増えていってるんですね。2010年代にもみんなで一緒に応募するような、インタラクティブな広告クリエイティブが流行りましたが、今後も参加型のフォーマットが盛り上がっていきそうですね。

けんすう:韓国アイドルのファンダム然り、余白があることが熱狂的なコミュニティを生むひとつの要素なのかも。

これからの時代の商品作りは、コミュニティから始まる

大社:たしかに、コミュニティ作りを検討している企業からも、「参加の余白が欲しい」と言う声が挙がっています。けんすうさんが運営されているNFTコミュニティ「sloth」は今、どんなコミュニティになっているんですか?

けんすう:「sloth」でも余白を大切にしていて、「勝手に企画」というチャンネルで、みんなが勝手に二次創作コンテストを開いたり、ラジオを主催してたりします。

そのなかで、いま力を入れているのが商品作りです。本来商品のコミュニティでは商品力が重要ですが、小さい会社の場合は、まずコミュニティの雰囲気を作り、それと合う商品を開発するという流れになると思っています。

「sloth」では「ゆっくり急げ」がコンセプトです。ボーダーがなかったり、曖昧だったり、中庸だったり、どっちつかずだったり。それをコミュニティ内で発信した結果、いまはお茶を作ってます。

大社:お茶! たしかに、コンセプトにぴったりですね。

けんすう:うちと近い作り方をしてるのが例えば、「ほぼ日」なんですよ。ほぼ日は、おそらく「何でもない日も特別だよね」みたいなのが根底にあると思うんです。ほぼ日手帳にも「なんでもない日、おめでとう」という思いが入っていますし。なので、手帳がメインの商品だからと言って「次はビジネスパーソン向けのタスク管理がしやすい手帳を作ろう」とはならずに、日常で特別さを感じられるように、高品質なタオルを作ったりするわけです。

そうやって、コミュニティから製品を作っていく流れは、今後増えていきそうですね。

大社:そのブランドの持つ空気感が好きで、自分の生活のなかに取り入れていきたい、というのが指名買いする理由だと思うので、コミュニティを持っていないと、ブランドも醸成されないしビジネスもできなくなっていきますよね。

けんすう:ただ、前提としてコミュニティの雰囲気を作るのはすごく難しいと思います。僕は、コミュニティってコントロールできないものだと思ってるんですよ。実際に作ってみて、人が集まったらそれに合わせていくようなイメージ。

主催者の色によって決まるとも思っています。「sloth」は僕っぽいと言うか、ギラギラした人よりもやわらかい人が集まっている気がします。そういうコミュニティしか作れない(笑)。

大社:僕は、コミュニティ作りには再現性があると考えています。弊社では、目的に合わせた“秘伝のタレ”があるので、それに沿ってデザインをしているんです。

たとえば、インフルエンサーならファンダム型、ブロックチェーンゲームなら共有資産型のように、一定のスタイルを決めて、それを活性化させていくためのコミュニティマネジメントをフェーズごとに提供しています。

けんすう:わかりやすい〜!

大社:人はなぜ同じようなパターンで行動をするのか、という行動経済学目線を取り入れて実践してきたので、いろんな秘密のノウハウを溜め込んでいます(笑)。今回の本では、そんなフォーミュラの一部をご紹介させていただいています。

「コミュニティがよくわからん」人へ

大社:ここまでいろいろと話してきましたが、これからコミュニティをやるとしたら、けんすうさんは何から始めますか?

けんすう:うーん、意思決定者がめちゃくちゃ本気にならないと絶対無理ですね 

インフルエンサーマーケティングは、フォロワー数というわかりやすい指標があったので決済が下りやすかったけど、コミュニティの場合はインパクトが出るまで1〜2年はかかるので、トップがよくわかってないと難しいと思います。

大社:本当にその通りですね。エスカレーションの過程で成果や予算の話になってくると、どんどん窮屈になっていく、みたいな。

けんすう:そこを一流の大企業たちはちゃんと理解していて、座談会などの施策に本気で取り組んでいるケースも増えてるんです。「コミュニティがよくわからん」なんて言っていると、どんどんキャッチアップが大変になりそうです。

大社:新規で顧客を獲得することの難易度は相当上がってきてますからね。数年前のTikTokでモノが売れることを説得できなかったのと同じで、どこかで風が吹いてくるとは思っているんですけど。

けんすう:「コミュニティ」そのものの解像度を上げないと危険ですよね。ユーザーが集まってコミュニケーションをしているプラットフォームを想像しがちだけど、実際にはハッシュタグだけで繋がっていることもあるし、他者とコミュニケーションをしない人も大量にいる。

そこを勘違いしちゃうと、より導入が難しくなって大社さんが大変な思いをしてしまうので(笑)、ぜひ書籍を読んでから相談してもらえるといいかなと思います。

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