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ブラジルのファヴェーラの話

Day 8

ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで、ファヴェーラに住む友人宅に滞在したことがある。
友人の家は山の頂上に近かったので、毎日が登山で、湿気と暑さの中(摂氏36度ほど)、家へ戻る頃には汗だくになる。
実際に私は一週間で3キロ近く痩せてしまった。筋肉痛もひどく、足が上がらない。

登山を回避するため、地元の人はどうするのかと観察すると、オートバイやミニバンが住民の交通手段のようだ。片道約150円くらいで利用できるようなので、私はオートバイを試してみることにした。

しかしいざ後部座席に座ってみると、どこを掴まっていいかもわからない。
カメラを持っているのでバランスを取るのもなかなか大変だ。
お兄さんは今にも出発したそうに、私を急かす。どうにか発信したはいいが、これが怖いのなんの。
急勾配に加え交通ルール無法地帯、そして道には野良犬、歩行者がいる、対向車がやってくる。
それらの中をクラクションを鳴らしながら猛スピードで走っていく。私は何度も滑り落ちそうになるのを必死で堪えた。
でも横をみると、それこそご高齢のご婦人が涼しい顔でバイクの後ろに佇んでいる。

短期滞在の私にとって150円はたいしたことないが、ここの住人たちにとって毎日の出費としては安くはない。
そして年を取ってからのこの登山はよほど大変だろうと思う。
昔は頂上に近い方が家賃は安かったようだが、外からの人間は景色の良い高い方を好むらしく、地価は上がっているようだ。

ファヴェーラの小さな入り組んだ道を歩けば、釣ってきたばかりの魚の鱗をガシガシと取るおっちゃん、じゃぶじゃぶと洗濯するおばあちゃん、トウモロコシの皮をバリバリ取るおっさんやらがいる。
1匹の野良犬が吠え始めるとそれに他の犬が反応し、終いには山にいる全部の犬が吠えてるんじゃないかと思えるほどの、犬の大合唱が始まる。

以前のファベーラは麻薬組織の巣窟だったけれども最近はかなり安全になったらしい。
そして、そんな危険な時でもルールはちゃんとあったそうで、それは、地元住民からは物を盗まないこと。
ギャングの親分はそれだけは徹底していて、もし誰かがそのルールを破ったら罰が与えられたという。
それはどこかの国と同じく、指を頂戴すること。
その話を裏付けるように肘までないおっちゃんがいた。学ばない人もいるのよと、友人が説明してくれた。


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