見出し画像

そうかミドルマネージャってナレッジ・エンジニアだったのか! #ワイズカンパニー #SECI #世界標準の経営理論

どもっ、しのジャッキーです。本記事は、知識の創造の理論である「SECIモデル」に関する個人的な学びをアウトプットする一連の記事の第11弾です。

私は、去年(2021年)に、「世界標準の経営理論」を読んで、「すげぇ!」と思ったいくつかの理論の一つがSECIモデルでした。野中郁次郎氏と竹内弘高氏はSECIモデルを「知識創造企業」(日本語版1996年、リンク先は新装版)の中で描き、そこから約4半世紀たった2020年に続編として出版されたのが「ワイズ・カンパニー」になります。前著が知識「創造」について書いたのに対して、本書では知識「実践」について拡張したとしています。

本投稿は、「ワイズ・カンパニー」を読み解きながら、学びをアウトプットしていく連載記事となります。

<ワイズ・カンパニーまとめの過去記事>
第1回:世界唯一の知の創造の理論「SECIモデル」をまとめてみた
第2回:知の実践企業に立ちはだかる3つの問題の克服に必要なこと
第3回:ホンダジェットの成功からみる知の実践の勘所とは
第4回:実践力のための知の源流、アリストテレスのフロネシスとは?
第5回:実践知と暗黙知とルーティンとダイナミック・ケイパビリティと
第6回:JAL再生に学ぶSECIモデルを回す実践知
第7回:60年でSECI6回転のシマノに学ぶSECIモデルを回す実践知
第8回:エーザイに学ぶSECIモデルを回す実践知
第9回:SECIスパイラルはパーパスを発揮し続け広げていく概念だったよ
第10回:ワイズカンパニー6つのリーダーシップ実践から思うパラレルキャリア発想の価値

前回の振り返り:ワイズカンパニーの6つのリーダーシップの実践

前回は、ワイズカンパニーの6つのリーダーシップの実践についてまとめ始めました。これは書籍で第2部に当たるのですが、以下のような構成になっておりまして、すごいボリュームです。ということで、もはや私にこれをまとめていく知的体力がなくなってきているので、いくつかポイントを絞って学びを抽出しています。

ワイズカンパニーの6つのリーダーシップの実践は以下の6つの要素がそれぞれ解説されています。前回は1~3を紹介しました。今回は、後半の3つに関して、私にとって印象的だった部分を抽出したものを紹介します。

  1. 第4章 何が善いかを判断する

  2. 第5章 本質をつかむ

  3. 第6章 「場」を創出する

  4. 第7章 本質を伝える

  5. 第8章 政治力を行使する

  6. 第9章 社員の実践知を育む

第7章 本質を伝える

  • リーダーには誰にでもわかる普遍的な言葉で本質を伝える能力が求められる。ただし、状況の本質はたいてい言葉では言い表しづらい。そこで、リーダーはメタファーや物語などを使い、幅広い事柄について、効果的に人々との意思の疎通を図ろうとする。そうすることで、今の状況も過去の経験もそれぞれに異なる個人や集団に、素早く直観的に本質を理解させられる

  • レトリックの力:ロゴス、パトス、エトス

    • ロゴス:論理的な訴え。ファクト。

    • パトス:感情的な訴え

    • エトス:倫理的ないし人格的な訴え

      • 相手にこの人なら信頼できると思わせること。話し手・書き手の人格や経歴によって形作られる発言がなされるよりも前から、人々からどう思われているかが重要

  • スポーツ・子ども

    • スポーツと子供はわれわれの楽しみであり、希望の源である。それらには感情に訴える力があり、聞き手は自分を重ね合わせたり、共感を覚えたりできる理想的なメタファーといえる。

  • 本質を伝える能力をはぐくむ4つの方法

    • 小説を読む

    • 心に残るスピーチからレトリックを学ぶ

    • 率直な会話を交わす

    • 歴史的構想力を効果的に使う

      • ワイズリーダーは、現在から過去の出来事を振り返って、過去を解釈し、再構築することを通じて、新しい未来のコンセプトを創造する。また、そのように歴史的構想力を働かせて、新しい未来のコンセプトを創造すると同時に、セレンディピティと洞察を得ようと努める

第8章 政治力を行使する

  • 矛盾を受け入れ、総合する

    • バランスや妥協点を探ろうとするのではなく、ダイナミックに弁証法的な思考法をするのである。そうすることで矛盾や、対立や、パラドックスに高次の次元で対処できるようになる。「あれか、これか」ではなく、「あれも、これも」という発想をする。

  • 弁証法の利用:「あれも、これも」を追求する両立型のアプローチ

    • 「ある概念が「定立(テーゼ)」として、つまり肯定的な概念として出される。次にその概念が発展して、最初の概念を否定する第2の概念、すなわち「反定立(アンチテーゼ)」が導き出される。最後に、最初の二つの概念が統一され、第3の概念「総合(ジンテーゼ)」が生まれる」by.ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(19世紀のドイツの哲学者)

「ワイズカンパニー/野中 郁次郎, 竹内 弘高」より篠崎作成
  • ミドル・アップダウン・マネジメントの適用

    • 第2部において、個人的に一番刺さった部分なので、後述。

第9章 社員の実践知を育む

  • 自律分散型リーダーシップの育成が、ワイズリーダーの最大の責務の一つ。

  • 経営トップによる自律分散型リーダーシップへの積極的な関与

    • トップが第一線の社員を信頼できるのは、時間と労力をかけて、ミドルマネージャや現場の社員に困難な状況で難しい判断を下すのに必要なスキルや専門知識を身につけさせているからである

    • 意味が生まれるのは、望む未来が現在や過去と同じ時間軸上に示される時である。ハイデガーが指摘したように、そのような未来が示されない限り、何が善であるかを判断することも、知識を創造することもできない。肝心なのは物事を時間軸の上に置くことである。時間という次元を抜きに、いろいろなアイデアを引っ張ってきたり、比較したりするだけでは意味は生まれない。

  • チームの力

    • スクラム手法

      • チームベースで組織内全体のフロネシスを生む方法の一つ。アメーバ経営同様、組織があらゆる状況に柔軟かつクリエイティブに対処することを可能にする。

      • 文脈や状況の変化に応じること、行動を通じたSECIスパイラルとの共通点

      • おすすめ書籍:2014年刊行の「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

  • 社員の実践知を育む4つの方法

    • 現代版の徒弟制度またはメンター制度

    • 社内に「全員経営」:の意識を浸透させる

    • 即興の活用

    • ダイナミックなネットワーク型組織:ジョン・コッター「Dual OS」

      • 成熟企業の場合は、組織を二重構造にすることが自律分散型リーダーシップを取り入れる現実的な方法になる。つまりヒエラルキー型の組織を維持したまま、それとは別にネットワーク型の組織を築くという方法である。いわば「あれも・これも」の解決策である。

      • これまでヒエラルキー型の組織がイノベーションや、俊敏さや、難しい変革や、大掛かりな戦略構想の迅速な実行を必要とする数々の仕事を引き受け、タスクフォースや、専門家チームや、戦略部門でどうにかしのいできた。しかし、二重構造ではそのような仕事の多くは、ネットワーク側に移される。その結果、ヒエラルキー側はそれらの負担から解放され、本来の仕事=滞りない日常業務の遂行や、効率向上のための漸進的な改善や、予測可能な修正をしやすくする戦略計画の策定など)でもっと力を発揮できるようになる

「ワイズカンパニー/野中 郁次郎, 竹内 弘高」より篠崎作成

個人的に刺さったところ

信頼とは常に、そこから始まっている

まず、以下。誰かを信頼できる、というのは、結局その人自身の歴史を見ている、と思いました。

エトス:倫理的ないし人格的な訴え
相手にこの人なら信頼できると思わせること。話し手・書き手の人格や経歴によって形作られる発言がなされるよりも前から、人々からどう思われているかが重要

価値形成とは常にことが起きる前から起こっているんだよなぁ、と思いました。だからこそ、自社であったり、自分自身であったりの過去を紐解き、それを今、そして未来に向かってどう再構成していくかが、求められるのだと思いました。

時間軸抜きに何も語れない

次に、以下。よく未来の事業を語るときに、周りからの理解を得られないことがあります。そういうときって、未来のある点を示しているだけで、過去や今からの延長線上にそれをおけず、自分事化できない、というギャップがあるのだと思います。

意味が生まれるのは、望む未来が現在や過去と同じ時間軸上に示される時である。ハイデガーが指摘したように、そのような未来が示されない限り、何が善であるかを判断することも、知識を創造することもできない。肝心なのは物事を時間軸の上に置くことである。時間という次元を抜きに、いろいろなアイデアを引っ張ってきたり、比較したりするだけでは意味は生まれない。

だから、そんなの無理ゲーだろと思うようなロードマップやらスケジュールやらを引くことには意味があると思いました。そこから意志が生まれるんだろうとも思いました。

スクラムとDual OS

これは単純に、しっかり勉強しよう、と思ったという宿題。Dual OSに関しては、一橋ビジネススクールの名和先生がどっかの講演で、両利きの経営よりも、Dual OSの考え方が重要と言っていました。明確に違いが理解できていないので、以下、原著を読み、視点を増やしたいと思います。

スクラムについては、アプリケーション開発においての手法にとどまらないチーム運営の手法というのは、以下の書籍の編集でかかわらせていただいた際にも著書の桃谷氏もよく言っていたので、勉強しないと、と思っていたのに、いまだ手つかず、勉強せなー。

ミドル・アップダウン・マネジメント

さて、ここまで読んでいらっしゃる方もいらっしゃらないかもしれませんが、第2部で一番、個人的に刺さったのが、このミドル・アップダウン・マネジメントでした。

トップダウンともボトムアップとも違い、トップと現場の間の持続的、反復的なプロセスを言い表す概念。ミドルマネージャがトップとボトムの接点となることで、知識変換プロセスの中心的な役割を担う。経営トップはビジョンや夢を言葉にすることで自社の進むべき方向を示す。経営者は理想とする「あるべき姿」を追い求める。現場は現実の「今の姿」と向き合っている。この両者の間に横たわる矛盾、理想と現実のギャップの解消に努めるのがミドルマネージャである。

いやぁ、これは経営企画において、全社横断的なトピックの戦略策定をしている自分としては、突き刺さる話でした。まさに、この中範囲のコンセプトを作り上げて「矛盾を解消する」ことが求められてるんだな、と思いました。

現場が直面している「いま・ここ」と経営が目指す「理想の未来」この間を埋めていく。ここは、先にも取り上げましたが、時間軸抜きには何も語れないので、ロードマップを描いてみる。そして、それは、「xxxがxxxして成功したように」といったメタファーや、ストーリーとして紡いでいく。そういうことが必要だと、日々痛感しています。

この役割を本書では、「ナレッジ・エンジニア」と呼称してくれていることには泣けてきます。「そうだ自分はナレッジ・エンジニアなんだ!」と元気が出てきました。

以前、当方のnoteで「コーポレートフィットはマネージャーの仕事」というライオンで新規事業の仕組みNOILをリードする藤村さんの名言が刺さった、というのを取り上げました。

これは新規事業開発において、現場は、顧客の問題とその解決策という「いま・ここ」に向き合っています。その事業開発者に対して、経営層は、さらに、「で、その事業って、なんで自社がやる必要があるのか?」とコーポレートフィットを問うわけです。そしてその矛盾を解く役割は、ミドルマネージャーであり、それはナレッジ・エンジニアリングというタスクなわけですね。

私は、ナレッジ・エンジニアリングのための能力開発として重要なことは、メタ認知、抽象化の力を伸ばすことなのだと思っています。このあたりはどのように自分自身が実践しているのかを以下の2つの記事に書きましたので、ご参照いただけたら幸いです。

このミドル・アップダウン・マネジメントに関しては、前著にあたる「知識創造企業」にて丸まる1章を割いて書いているということなので、これまた、読みたいな、と思いました。

おわりに

ということで、次回は、いよいよ終章から「人間中心の経営とイノベーションのゼロから10」について学びをまとめたいと思います。

このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?