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実践知と暗黙知とルーティンとダイナミック・ケイパビリティと #ワイズカンパニー #SECI #フロネシス

どもっ、しのジャッキーです。本記事は、知識の創造の理論である「SECIモデル」に関する個人的な学びをアウトプットする一連の記事の第5弾です。

私は、去年(2021年)に、「世界標準の経営理論」を読んで、「すげぇ!」と思ったいくつかの理論の一つがSECIモデルでした。野中郁次郎氏と竹内弘高氏はSECIモデルを「知識創造企業」(日本語版1996年、リンク先は新装版)の中で描き、そこから約4半世紀たった2020年に続編として出版されたのが「ワイズ・カンパニー」になります。前著が知識「創造」について書いたのに対して、本書では知識「実践」について拡張したとしています。

本投稿は、「ワイズ・カンパニー」を読み解きながら、学びをアウトプットしていく連載記事となります。

<ワイズ・カンパニーまとめの過去記事>
第1回:世界唯一の知の創造の理論「SECIモデル」をまとめてみた
第2回:知の実践企業に立ちはだかる3つの問題の克服に必要なこと
第3回:ホンダジェットの成功からみる知の実践の勘所とは
第4回:実践力のための知の源流、アリストテレスのフロネシスとは?

前回のまとめ

前回は、知の実践のキー概念であるアリストテレスのフロネシスと、それと関連する、欧米の哲学の潮流についてまとめました。

第2章 知識実践の土台(の第2弾)

今回のまとめでは、「第2章 知識実践の土台」の後編ということで、以下のっ部分についてエッセンスを抽出したいと思います。

  • 哲学における知識実践 ★前回

  • 知識実践とポランニー ★今回

  • 脳科学における知識実践 ★今回

  • 社会科学における知識実践 ★今回

知識実践とポランニー

マイケル・ポランニー(1891-1976)はハンガリー生まれの英国人科学者、哲学者であり、著者が、前著・本書を書くにあたって、多大な影響を受けているといいます。

20世紀初頭に暗黙知という概念を提唱し、実践を中心に据えた「tacit knowing(暗黙知)」という理論構築を志向しました

「われわれは語れる以上のことを知っている」

という至言を残しました。知識の実践に関して、以下の4段階のモデルを提唱しました。

  • 知識実践の4段階のプロセス

    1. 行動する人」が自分の持っている知識に基づいて、無意識に、さまざまな現象や出来事との間に作用を及ぼしあう

    2. すると、それらの無意識の相互作用によって、暗黙知が蓄積される

    3. この段階で「知る人」になった「行動する人」が、どこに意識を「集中」させればよいかを判断する

    4. この意識的な判断の結果として、蓄積された暗黙知が、集成された知識の総体と統合される

知識実践をイメージするための例としては、ピアノの演奏が挙げられています。

ピアニストがモーツァルトの曲を弾けるのは、指遣いの暗黙知がピアノの演奏に関する集成された知識の総体と統合されているからである

脳科学における知識実践

脳機能や認知の研究で、「身体」と「行動」も脳と同じぐらい重要であることが分かってきた

  • 体と脳

    • はただの「センサー・エフェクター」システムではなく、「身体化された認知」と呼ばれる考え方がある

    • 例:イチロー選手のたぐいまれなパワーとコントロールを兼ね備えたバッティングの実践的な知識は、バットと直接触れ合う経験によってもたらされている、ととらえること

  • 脳の社会志向性

    • 人間は脳によって、生存のために他者とつながろう、行動をともにしよう、協力しよう、他者を思いやる、共通善を追求しようとさせられていることのエビデンスが多くでている

社会科学における知識実践

著者らが、前著で、フレデリック・テイラーからゲイリー・ハメルまで、50人以上、1911~1993年に至る、経済学、経営学などの文献を読み解いた結果

知識の主観的、身体的、暗黙的側面は、ほとんど無視されたままである

と結論付けたうえで、知識創造ではなく、知識実践の理解で役立った社会科学におけるトピックとして大きく以下の3つを挙げています。

  1. リチャード・ネルソンとシドニー・G・ウィンターによる進化経済学の著作

    • 組織的知識の研究おける「ルーティン」と「サブルーティン」の役割を重視

    • ルーティン:行動学習を通じて、同じ作業や似た作業を繰り返すことで培われる、従業員の習慣的なふるまい(行動パターン)のこと

    • ルーティン、サブルーティンは組織における遺伝子であり、次世代に引き継がれる

    • 組織は「行動によって記憶する」(中略)書かれたものをどれほど読んでも、完全に記憶されることはできない

  2. ダイナミック・ケイパビリティ理論

    • デイビッド・ティース、ゲイリー・ピサノ、エイミー・シュエンによって提唱された、文脈に応じた知識の活用を核とする経営理論

    • 長期的な成功の源になるのはダイナミック・ケイパビリティ=「内的、外的な競争力をすみやかに統合、構築、再構成することで環境の急速な変化に対応する能力」と定義

    • 変化の兆しの「察知」、変化に伴うチャンスの「把握」、自社の資源の「変革」が必要

  3. 企業が社会にとっての善、共通善を追求することの重要性の提起

    • オープンイノベーション(2003):ヘンリー・“ハンク”・チェスブロウ

    • 企業の社会的責任(CSR)の提唱(2005):デイビッド・ボーグル

    • 企業の共通価値創造(CSV)の重要性の提唱(2011):マイケル・ポーター、マーク・クラマー

所管:実践知がアダになることもある

本省は、「知識実践の土台」ということで、SECIのサイクルを回すうえでの「実践」の土台となる過去の偉人たちの考えを提示してくれました。繰り返し行動することで知識とその使い方としての実践力が備わっていくということは納得感がありますし、納得を超えて、何をそんな当たり前のことを?とすら感じます。

一方で「社会科学における知識実践」の最後にでてきた「ダイナミック・ケイパビリティ」については、本書「ワイズ・カンパニー」と並行して学びをアウトプットしています。ここで、そうやって繰り返し蓄積してきた実践知が既存のパラダイムとして企業に染み付くことが、変化できない力となり、人や組織が合理的に失敗する不条理という現象を提示しています。

私もまだ、読み進めているところですが、ダイナミック・ケイパビリティでは、富士フイルム、ソニー、YKKを例示しながら、不条理をどうやって回避し、変化する力を獲得するのか、を解き明かそうとしています。

第3回のまとめ(記事はこちら)で書いたように「ワイズ・カンパニー」では、以下の3つが本書のコアとなる主張だとしています。この一つ目の「持続的なイノベーション」とは変化し続ける力であり、本書とダイナミック・ケイパビリティーそれぞれの示す解を対比しることで、理解が深まりそうだな、と思いました。

  1. 知識実践が持続的なイノベーションを支える

  2. リーダーは理想主義的な現実主義者でなくてはならない

  3. リーダーは理想を追い求めるだけでは不十分。リーダーは同時にプラグマティックである必要がある。現実と向き合い、状況の本質をつかみ、対局を見通すことができなくてはならない

今回の1枚まとめ

今回の1枚まとめは、知識実践とポランニーの部分を1枚にまとめました。

次回は

次回からは、「第3章 知識創造と知識実践のモデル」に突入します。JAL再生、自転車部品のシマノ、エーザイなどのSECI実践の事例とともに、SECIスパイラルのモデルが提示される章でもあります。

おわりに

このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie

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