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古代オリエント史と「マッサゲタイの戦女王」

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#アケメネス朝ペルシャ

「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ 第八回「パラダイス」の語源

「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ 第八回「パラダイス」の語源

英語の「paradise:パラダイス:楽園」の語源は、なんと、古代ペルシア語だそうです。
もともとは、「paridayda- "walled enclosure"」で「石垣に囲まれた場」という意味でした。
東部ペルシアのアヴェスター語にも「pairi(囲む)-daêza(壁に)」とあり、さらに古いアヴェスター系言語のメディア語にも「paridaiza」という言葉が残っています。
メディア語について

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「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ第七回 麗しの都エクバターナの栄枯盛衰

「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ第七回 麗しの都エクバターナの栄枯盛衰

歴史の砂に埋もれた古代の実在都市エクバターナについて、熱く語ります。

エクバターナといえば、一般の読者さまには田中芳樹先生作「アルスラーン戦記」の王国パルスの首都としての方が、知名度が高いのではないでしょうか。篠原も若き日に夢中になって読んだ名作「アルスラーン戦記」は中世の中東を想定したファンタジーですが、エクバターナという名の都市は、古代から中世のイランに実在していました。

エクバターナは、

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「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ 第六回 ミトラ教について

「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ 第六回 ミトラ教について

ペルシア人の宗教は拝火教(ゾロアスター教)でしたが、国教としたのは最後のサーサーン朝からで、アケメネス朝からパルティア王国時代あたりまでは、伝統的な多神教も同様に信仰されていましたの。本書では太陽と契約の神ミトラ、水の女神アナ―ヒタ―、軍神ウルスラグナなどが言及されています。

支配層から庶民まで一番人気のあったのは、主神で創造神のアフラマツダ神よりも、善神ミトラ(ミスラ)神でした。太陽神であり、

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「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ第五回 エジプトの迷惑な王様

「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ第五回 エジプトの迷惑な王様

今日はペルシアともマッサゲタイともあまり関係がないのですが😓

ヘロドトス・歴史より
古代エジプトで、もっとも広大な領土を拓いたというセソストリス王の子、プエロス王の話

神罰によって十年の間、盲目にされていたプロエス王は、十一年目に刑罰の期間が終わったので、自分の夫としか交わったことのない婦人の尿で目を洗うと治るという神託を授かった。

さっそく自分の妻の尿で洗顔したが、目が見えるようにならな

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マッサゲタイの戦女王 刊行記念エッセイ第四回 愛の誓いに飲み交わすペルシア風「赤ワインミルク」

マッサゲタイの戦女王 刊行記念エッセイ第四回 愛の誓いに飲み交わすペルシア風「赤ワインミルク」

おおおぐえぇぇ~という叫び声が聞こえてきそうな。

文明の発祥と共にすでにその製造法がシュメールの昔から記録されているワインですが。
現在わたしたちが飲んでいるものとは随分違うものでした。

発酵技術がそれほど進んでないので、糖度の高い甘~い、低発酵果汁ドリンクで、そのままでは飲めないどろっとした代物だったようです。

だから、水やミルクで割らないと飲めませんでした。

古代のワインとはちょっと酸

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「マッサゲタイの戦女王」刊行記念 第三回 スキタイ人の怖い風習

「マッサゲタイの戦女王」刊行記念 第三回 スキタイ人の怖い風習

「スキタイ族の首狩り・皮剥ぎ・頭蓋骨の杯」
青銅冶金に優れていたというスキタイ族は、紀元前七世紀まで遡る、騎馬民族でも一番古い民族で、ウクライナあたり……大雑把にいってヨーロッパとアジアの真ん中左寄りあたりからユーラシア大陸へと広がって行ったとか。

マッサゲタイ人やペルシア人も、アーリア人と呼ばれるスキタイ系白人種の分派であると長く信じられてきました。東洋の遊牧民、匈奴の祖先もスキタイという説が

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