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精神科医・産業医に相談急増中!リモートワークの健康への影響

はじめまして、精神科医・産業医の宮川紫乃です。現在はスタートアップから一部上場企業まで複数の企業で産業医をしています。

主に担当している企業の出社率が約20%と低いため、産業医としての勤務もリモートワークがメインです。

そこで、私自身が2022年に体験したことや、社員さんの健康相談に乗る中で見えてきたリモートワークによるフィジカル・メンタル面への影響についてお話ししたいと思います。

念願のリモートワーク、喜びも束の間?

2022年3月までの2年間、往復2時間かけて通勤していたこともあり、「移動時間がないなんて最高!」というのが最初の感想です。
また、家が大好きなので「家から仕事ができるなんて夢みたい」と思いました。

リモートワークをしてみて思うこと

メリットデメリットがあります。順に説明します。

リモートワークのメリット

移動時間がない分他のことができる

総務省統計局の「平成28年社会生活基本調査結果」を基にしたランキング(※1)によれば、通勤時間の全国平均は1時間19分です。
仕事をできる時間が増えたり、読書や運動などの趣味に充てられる余暇ができたりします。

満員電車のストレスからの解放

電車に乗らなくなってみて、満員電車が大きなストレスだったと感じます。
知らない人と密着しないといけないあの空間は疲れますよね。

睡眠時間が増える

始業時間の30分前に起きれば、最低限の身なりを整えて、朝ごはんを食べて、
パソコンを立ち上げることができます。
社員さんとお話ししていても「リモートワークなので始業直前まで寝ています、
睡眠時間が増えました」と仰る方が多いです。

合間に家事ができる

昼休みに買い物に行ったり、掃除や洗濯をできるのは効率的で嬉しいですよね。
隙間時間の活用かつ気分転換にもなります。

ママ&パパには優しいリモートワーク

子供の発熱での保育園に行けなかったり、体調不良による保育園からの呼び出し・早退問題は働くママ&パパにとって大きな問題です。
クライアントさんとのミーティングや大切な会議の時は難しいですが、リモートワークであれば、最悪子供を家で見ながら仕事ができるのは本当に心理的負担が下がります。
病児保育対応のシッターさんに保育していただきながらの在宅勤務、というのも可能ですし、子供の声が後ろでしても社員さんが理解してくださる(逆に社員さんの後ろからお子さんの声が聞こえることも多々あります)のもありがたいです。

リモートワークのデメリット

運動不足

まずはこちら。通勤がない分、歩かなくなりますよね。駅の階段の登り下りもかなり良い運動になるのです。一日中座りっぱなしで歩数が200歩、、!みたいな日もあるのではないでしょうか?
忙しくても1日30分は散歩やストレッチ、筋トレをするようにしましょう。

メンタル不調に陥りやすい

オンラインコミュニケーションの難しさ、雑談の減少、運動不足、宅配やコンビニのお弁当による栄養の偏りなど様々な要素により内に篭ってしまってメンタル不調になる方が多いです。特に一人暮らしの方はリスクが高いです。

コミュニケーションの難しさ

元々信頼関係がある人とオンラインでコミュニケーションをする分には良いのですが、人間関係が構築される前からオンラインでの会話のみとなってしまうと上司や同僚の人柄が掴めずに悩んでいる若手の社員さんが多発しています。
「上司のカレンダーを見ると朝から晩までミーティングが詰まっていていつ電話を
していいかわからない」「チャットでは温度感が分からず、言葉がきつく感じる」「些細なことを電話・チャットしてよいのかわからない」など、特に新入社員の方や中途採用の方が悩むポイントです。
一方で、上司も部下の気持ちや仕事の理解度・進捗状況が分かりにくいため苦労しています。

仕事の効率が落ちる

職種にもよりますが、コミュニケーション不足、相談のスピードが落ちる、サボる人も出てくる、仕事を横で見て覚えられないため成長スピードが下がるなど様々な理由からトータルの仕事の効率が落ちる場合もあるでしょう。

オンオフの切り替えができない

出社・退社がないといつまでもパソコンで作業ができてしまうため、オンオフの
切り替えが難しいという話もよく聞きます。また、ワンルームでベットも仕事机も一緒のため、常にパソコンが目に入って気が休まらないことも。
終業後はパソコンを見えないところにしまったり、モニターに布をかけることも地味ですが効果的です。

まとめ

メリットもデメリットもあるリモートワーク。
移動時間を睡眠や趣味などに有効活用できて嬉しい一方で、少なからず健康へのマイナスの影響はあると身をもって感じた1年でした。

便利な時代だからこそ、オフラインコミュニケーションを大切に。人と実際に会って話すことがいかに重要か痛感しました。

リモートワークが多い方々にはぜひ、運動・健康な食事・対面でのコミュニケーションを意識的に取り入れていただきたいなと思います。


<参考文献>
※1 総務省統計局「通勤・通学時間が長い!?ランキング
https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/rank/index.html

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