Shingo Masunaga (Ph.D.)

専門は戦間期の北欧諸国における日本の諜報活動史。

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最近の記事

エストニア戦争博物館の新広告

    • 【特集】変化するエストニア国防軍No.8(空軍編)

      今回はエストニア空軍の変革について取り上げます。 エストニア空軍は非常に小規模で、他国の空軍のような作戦機は有しておらず、保有機材もチェコ製エアロL-39練習機(3機)、ポーランド製PZL M28輸送機(2機)、米製ロビンソンR44ヘリ(4機)を有するに留まる。組織としても海軍よりも簡略な、空軍司令部(õhuväe staap)、航空監視隊(Õhuseiredivisjon)、軍事航空管理部(Kaitselennunduse järelevalveteenistus)が主な

      • 【特集】変化するエストニア国防軍No.7(国防投資センター編)

        今回はエストニア国防省の新組織である「国防投資センター」を取り上げます。 2017年、エストニア国防省、国防軍、その他国防省の管轄下にある各組織の装備・備品調達ならびに不動産開発・管理を担当する組織として「国防投資センター」(Riigi Kaitseinvesteeringute Keskus, RKIK)が設立された。 特に装備・備品調達とインフラ整備の一本化は2010年のエストニア国防戦略の中ですでにその必要性が謳われており、2015年9月に現在のRKIKの基となる組

        • 【特集】変化するエストニア国防軍No.6 (情報部編)

          今回はエストニア国防軍参謀本部で、情報分析を担当する「情報部」(J-2)と情報収集を担当する「国防軍情報センター」(Kaitseväe Luurekeskus)の変革について取り上げます。 エストニア国防軍の中で情報分析や防諜、NATOやEU諸国との情報協力を司るのが参謀本部情報部(Kaitseväe peastaabi luureosakond、通称J2)である。その編成や人員、予算については謎に包まれており、過去のものも含めてほとんど情報が公開されていないが、エストニア

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        マガジン

        • 【特集】変化するエストニア国防軍
          8本
        • 【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか
          6本
        • 特集:新型コロナワクチン接種(1-2回目まとめ)
          2本
        • 特集:リガ武官室へようこそ
          4本
        • 特集:エストニア国防軍の再建と発展
          4本
        • 特集:2021年10月の本帰国時の検疫と隔離について
          5本

        記事

          【特集】変化するエストニア国防軍No.5(海軍編)

          今回は国防軍のうち、エストニア海軍の改革について取り上げます。 エストニア海軍は非常に小規模で、英国製サンダウン級掃海艇3隻、デンマーク製リンドルメン級機雷敷設艇1隻(いずれも中古)を中心に、2023年に海軍へ移管された警察・国境警備隊の艦艇4隻(いずれも非武装)を有している。 組織編制としては4つに分かれており、以下の通り。 ・機雷戦戦隊(Miinisõja divisjon) ・沿岸防衛戦隊(Rannikukaitse divisjon) ・戦闘支援戦隊(Lahin

          【特集】変化するエストニア国防軍No.5(海軍編)

          【特集】変化するエストニア国防軍No.4 (無人機編)

          ※今回はタイトルにある正規軍のエストニア国防軍よりも民兵組織の話が多めになります。 2024年4月29日にERR(エストニア公共放送)が報じたところによれば、エストニアでは民間企業と協力して、最大1,000機の国産無人機を開発・製造し、ウクライナへ供与する計画があるとの事だ。 この無人機は2-3kgの爆薬を底部に搭載した攻撃型とされており、ウクライナ軍での使用実績をもとに、エストニアでも採用するかどうか決めると言われている。 国防省傘下の民兵組織「エストニア防衛連盟」に

          【特集】変化するエストニア国防軍No.4 (無人機編)

          【特集】変化するエストニア国防軍No.3-1(組織編)

          2023年、独立回復後のエストニア国防軍で初めての「師団」(Diviis)の編成が完結した。 「エストニア第1師団」(Eesti 1 diviis)とも呼ばれるその師団は、主力である第1歩兵旅団と第2歩兵旅団に加え、指揮・通信大隊、兵站大隊や砲兵大隊を指揮下に置き、エストニア独立回復後初の統合運用部隊となった。 師団創設の主な目的としては敵軍に対する縦深攻撃を行い、旅団などの戦闘部隊を支援し、敵軍の側面攻撃から友軍を防御する事とされている。 ※エストニア独立戦争(191

          【特集】変化するエストニア国防軍No.3-1(組織編)

          【特集】変化するエストニア国防軍No.2 (防空編)

          2022年11月、翌年3月に総選挙を控えたエストニアでは新興政党「エースティ200」(Eesti 200)が着実に支持を伸ばしていた。 Eesti 200の公約の1つは、仮想敵国の弾道ミサイル・巡航ミサイル・航空機・ドローンなどを対象に、エストニア全土を守る多層式防空網「カレヴィポエグ防空ドーム」(Raketikupli "Kalevipoeg")の構築であった。 ※カレヴィポエグとはエストニアの民族叙事詩であり、そこに登場する伝説の巨人の名前でもある。 その背景には同

          【特集】変化するエストニア国防軍No.2 (防空編)

          【特集】変化するエストニア国防軍No.1 (陸軍編)

          近年、エストニア国防軍(EDF)の装備更新計画が急ピッチで進んでいます。今回はエストニア陸軍の変化について取り上げます。 ※エストニア国防軍(Eesti Kaitsevägi)は規定上、陸軍(Maavägi)、海軍(Merevägi)、空軍(Õhuvägi)の3つの組織に分かれています。 まず、平時のエストニア陸軍は第1歩兵旅団、第2歩兵旅団の2つの旅団、そして兵站大隊・指揮通信大隊・砲兵大隊の3個大隊からなり、この2個旅団・3個大隊による「1個師団」という編成を基本とし

          【特集】変化するエストニア国防軍No.1 (陸軍編)

          令和4年「別班」騒動

          最近流行りのテレビドラマ「VIVANT」(私は未視聴ですが)で、陸上自衛隊陸上幕僚監部運用支援・情報部所属とされる秘密対外諜報機関「別班」が世間的に話題になっているそうです。 別班なる組織については、2013年頃にポーランドや韓国などに要員を送って現地で対外情報収集を行っていた機関として日本の新聞でスクープとして報道されたのを覚えており、報道当時は「存在していない」という政府の公式見解によってすぐに話題にならなくなったのを覚えています。 一方で、下記リンクの記事では防衛省

          令和4年「別班」騒動

          【詳細・申込】 https://www.facebook.com/events/s/%E5%AD%AB%E5%AD%90%E3%81%AE%E5%85%B5%E6%B3%95%E5%8B%89%E5%BC%B7%E4%BC%9A%E4%B8%80%E5%91%A8%E5%B9%B4%E8%A8%98%E5%BF%B5%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E6%88%A6%E9%96%93%E6%9C%9F%E3%81%AE%E5%8C%97%E6%AC%A7%E8%AB%B8%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%97%A5/847240133640289/ で参加ボタンを押していただき、 http://histlink.pro.fan@gmail.com までご連絡いただけましたら幸いです。 #ヒストリンク

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          戦後史上初のエストニア防衛駐在官(任国在勤)の派遣について

          2023年8月31日に公表された防衛省の令和5年度概算要求では、戦後史上初のエストニア防衛駐在官枠(兼轄でなく任国在勤)の予算が財務省に提出される事になりました。 概算要求の段階なのでまだ確定ではありませんが、今次ウクライナ戦争においてエストニアを含むバルト三国がウクライナの強力な支援国であり、防衛省・自衛隊ともサイバー防衛やロシア情勢の分析などで一定の協力関係を築いている今、同国への防衛駐在官の派遣は必須であると考えます。 歴史を振り返ると、1991年のエストニア独立回

          戦後史上初のエストニア防衛駐在官(任国在勤)の派遣について

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(番外編) - 戦間期エストニア国防軍の能力(Part.2)

          戦間期エストニア軍の国防戦略は、東部のソ連国境と接するナルヴァ(Narva)地域とイルボスカ(Irboska)地域において2個師団でソ連軍の侵攻を一時的に食い止め(残り1個師団はソ連軍強襲上陸時の遊撃用として国内で待機)、その間に国内で総動員を実施し、然るべき兵力が整った後に反撃に出てソ連軍を領外へ追い出すというものであった。この総動員には数週間から1ヵ月程度かかると見込まれていた。 また、ラクヴェレ(Rakvere)を司令部とするエストニア陸軍第1師団所属の装甲列車連隊は

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(番外編) - 戦間期エストニア国防軍の能力(Part.2)

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(番外編) - 戦間期エストニア国防軍の能力(Part.1)

          今回と次回の記事では、戦間期エストニア軍の能力面から、1940年6月のソ連によるエストニア占領を追ってみたいと思う。今回は特に、基礎入門として戦間期エストニア軍の編成を述べたい。 1940年夏のエストニア軍は陸軍4個師団(1個装甲列車連隊・1個戦車連隊・1個騎兵連隊含む)、海軍50隻(うち戦闘艦艇10隻)、空軍3個飛行隊38機(うち戦闘機15機)を有していた。 このうち陸軍の第4師団については、1918年のエストニア独立当初は存在していたが戦間期の軍縮によって廃止され、1

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(番外編) - 戦間期エストニア国防軍の能力(Part.1)

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(Part.3)

          1940年6月14日早朝、ソ連外相モロトフはリトアニア外相ウルブシィスに対し最後通牒を突き付けた。リトアニア政府が同国駐留ソ連軍に対し陰謀を企てているという内容で、リトアニア内務大臣と公安警察長官の逮捕を要求し、ソ連軍に対する無制限のリトアニア駐留を要求するものだった。同日午前3時、リトアニア政府はソ連の最後通牒受け入れを表明し、ソ連軍は国境から同国への進駐を開始した。 翌6月15日午前3時、ソ連・ラトビア国境で2つの事件が起きた。 マスレンキ(Maslenki)のラトビ

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(Part.3)

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(Part.2)

          エストニアへのソ連軍進駐からわずか1ヵ月後の1939年11月30日、ソ連はフィンランドへの侵攻を開始。 エストニア駐留ソ連軍もまた、このフィンランドとの「冬戦争」に動員され、パルディスキ(Paldiski)駐留の空軍部隊がフィンランドへの空襲などに参加した。 エストニア軍情報部は1939年9月の独ソによるポーランド侵攻時、膨大な量のソ連軍通信情報を傍受し、その分析を進めた結果、最高機密であるソ連軍暗号「OKK-5」の解読に成功した。 OKK-5の暗号表などは極秘裏にフィ

          【特集】1940年6月にエストニアで何が起きたのか(Part.2)