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【特集】変化するエストニア国防軍No.1 (陸軍編)

近年、エストニア国防軍(EDF)の装備更新計画が急ピッチで進んでいます。今回はエストニア陸軍の変化について取り上げます。

※エストニア国防軍(Eesti Kaitsevägi)は規定上、陸軍(Maavägi)、海軍(Merevägi)、空軍(Õhuvägi)の3つの組織に分かれています。

まず、平時のエストニア陸軍は第1歩兵旅団、第2歩兵旅団の2つの旅団、そして兵站大隊・指揮通信大隊・砲兵大隊の3個大隊からなり、この2個旅団・3個大隊による「1個師団」という編成を基本としています。

【平時のエストニア陸軍編成図】※エストニア国防省資料より

(第1歩兵旅団)      (第2歩兵旅団)      ・兵站大隊
・eFP戦闘団(駐留NATO軍) ・クぺルヤノヴ歩兵大隊    ・指揮・通信大隊
・スカウツ大隊        ・後方支援大隊                  ・砲兵大隊
・カレヴ歩兵大隊       ・指揮・通信中隊       
・ヴィル歩兵大隊
・工兵大隊
・防空大隊
・後方支援大隊
・偵察中隊
・対戦車中隊
・指揮・通信中隊

2022年以前のエストニア陸軍では、90年代に輸入された、5.56mm弾を使用するイスラエル製ガリルと7.62mm弾を使用するスウェーデン製AK4(H&K G3のスウェーデン版)の2種の自動小銃が混在していました。また、分隊支援火器や軽機関銃も、イスラエル製ネゲヴNG5、ドイツ製MG3、スウェーデン製Ksp-58(FN MAGのスウェーデン版)などが混在していました。

人口130万人程度の小国であるエストニアで、平時は3万名程度の定員数である陸軍にとって、弾薬や整備などの規格統一は重大な課題でした。

まず、2019年に新型自動小銃として、米LMT製のMARS-L(5.56mm弾仕様)をエストニア仕様に合わせたR-20 Rahe(雹)を選定し、2023年3月には新型軽機関銃としてイスラエル製ネゲヴNG7(7.62mm弾仕様)を選定しました。

R-20 Raheについてはすでに第1歩兵旅団、第2歩兵旅団各部隊への配備が進みつつあり、ネゲヴNG7も2023年9月に第一陣が到着し、2024年上半期には部隊配備が開始される予定との事です。

エストニア陸軍の米LMT製R-20 Rahe自動小銃 
※出典: エストニア軍機関誌「兵士たち」(SÕDUR) 2020年9月号 pp.10-11
イスラエル製ネゲヴSF軽機関銃。
エストニア軍も採用していたNG5(5.56mm弾仕様)の改良型で、特殊部隊用とされている。

新型銃器の導入による規格統一・装備更新のみならず、装甲兵員輸送車(APC)の更新も決まりつつあります。

2023年10月、エストニア国防省はトルコのOtokar社・Nurol Makina社と契約を締結し、Otokar製Arma装甲兵員輸送車、Nurol Makina製NMS四輪軽装甲車(合計:約230輌)の2025年までの輸入完了で内容がまとまったとの報道がありました。

ArmaとNMSは共にエストニア陸軍第2歩兵旅団への配備を優先する方針で、NMSについては第1歩兵旅団とも共有で使う事を目指しているようです。第2歩兵旅団の長年の課題として装甲兵員輸送車の不足が挙げられており、フィンランド製Patria Pasi装甲兵員輸送車を持つ第1歩兵旅団に対し、第2歩兵旅団は幌付きトラックによる歩兵部隊の輸送と防御面での不安がありました。

エストニア陸軍第1歩兵旅団のフィンランド製Patria Pasi XA-188装甲兵員輸送車。
2010年代にオランダ陸軍の中古を輸入したもの。エストニア陸軍は90年代にフィンランドから輸入した旧型のPasiも有するが、こちらは調達価格と政治上の都合で輸入数は少なかった。
トルコOtokar製Arma装甲兵員輸送車。
エストニア国防省は選定理由として、対地雷防御の面で条件的に有利にあったとしている


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