書くしごと、聞くしごと、話すしごと ~私の場合、その3つはつながっているものです

 私は商業誌や新聞、ラジオ、WEBなどのメディアで、30年あまり原稿を書いてきました。そうしたライターの仕事は、真帆沁の名前で創作作品を書くときとは気持ちを切り分け、ポジティブな意味で「仕事は仕事」としてプロ意識を持ってやってきました。

 いまあらためて、30年超続けてきたライター業をふり返ると、もちろんそれは「書くしごと」なのだけれど、同時に「聞くしごと」「話すしごと」でもあったなあと思います。
 フリーランサーの世界ですから、人それぞれにやり方はあるでしょう。
 私の場合は、「書く」ちからだけではなく、「聞く」「話す」能力をとても大切だと考えて、磨いてきました。

 基本的には取材記者だったので、原稿に書いて伝えるべき素材は常に自分の外にありました。見て、聞いて、話して、どれだけの素材を獲得できるかによって、原稿の出来が変わります。
 大げさに言えば、取材7:原稿3 くらいの割合で取材が肝心と考えていました。

 そして、私はインタビューが大好きです。
 ある人物を深く掘り下げるロングインタビューはもちろん、たとえばお店の紹介記事の取材でも、インタビューだと思ってあたってきました。知りたいのはどんなメニューが何円で食べられる、ということだけではありません。どのようなお店にも店主の人生や、働く人の物語があり、そうした「人」の部分がお店の個性や魅力につながっているからです。

 インタビューは相手の話を聞く作業ですから、聞くちからは大事です。
 なるべく自分の主観や思い込みを排除して、相手の話を素直に聞くように努めます。真っ白なカンバスに、相手の言葉で絵を描いてもらうような感覚です。

 同時に、インタビューは「相手に気持ちよく話してもらう」作業でもあります。そのためには、こちらの「話す」ちからが問われます。
 私が意識しているのは、まず、信用してもらうこと。「この人になら話してもいい。大丈夫だ」と感じてもらえなければ、相手はほんとうの言葉を発してくれません。
 信じてもらうためには、何よりも、誠実に仕事や相手と向き合っている態度が大事です。その上で、私はある程度、自分のことを話します。
 私の話にそう時間はとれませんから、なるべく短時間で、ざっくばらんに、自分の「素」が伝わる言葉を伝えるように心がけています。相槌を打つとき、相手の言葉に反応を返すとき、質問をするときがチャンスです。
 はじめから、うまくできたわけではありません。毎回、後悔し、反省し、創意工夫してチャレンジし、それを繰り返すうちに現場の勘みたいなものも養われ、経験の積み重ねによって技能が磨かれてきました。

 おかげで近年は、「話す」に重点を置いた仕事が増えつつあります。
 企業の重役や知事などのVIP対談の司会をしたり、有識者の座談会の進行役を務めたり。アドバイザリーの仕事で、クリエイティブ系の企業の方々やライターさんたちと話をしたり。
 今後はもっと、話すしごとを拡大し、充実させていきたいと考えています。

 書くしごと、聞くしごと、話すしごと。
 私にとって、その3つはつながっているものです。相互に補完し合っている、と言ってもいいでしょう。言い換えれば、ライターの仕事には、文章力という〝筋力〟のほかにも、必要な筋力があるということですね。


◇見出しの写真は、みんなのフォトギャラリーから、hanakokoroさんの作品を使わせていただきました。ありがとうございます。

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