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ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話

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10月発売新刊『認知症のある人と向き合う』刊行記念連載。大石智先生が神科医として認知症のある人や支援者と接する時に感じた喜びや悲しみを素直な言葉で綴ります。認知症のある人が不安な… もっと読む
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記事一覧

ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話  大石智

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連載第5回 決めつけと嘘認知症だからわからない?

「認知症だから言ってもわからないという決めつけがある」「入院するのは本人なのに認知症だからわからないに違いないと決めつけられて十分に説明されないことがある」という、認知症のある人の言葉を耳にする機会がありました。こうした決めつけは、認知症について理解を深めているはずの支援する人の中にもまだまだあるようです。きっと私の中にもまだあるはずです。

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ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話  大石智

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連載第4回 介護疲れを動機とする刑事事件に触れて
想うこと

介護する人と認知症のある人の孤独

 介護する人による認知症のある人への殺人や傷害などの刑事事件に関する報道を目にすることがあります。職業柄、そうした事件の精神鑑定業務に携わることもあります。こうした事件が生じる過程には、様々な要因があります。事件ごとに個別性のあることだとは思いますが、共通するのは介護する人と認知症のある人の孤立です。

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ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話  大石智

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連載第3回 支援する人が教えてくれること

支援する人と思いが通じた時に起きる奇跡外来診療や入所施設への訪問診療をしていると、訪問介護士さんやケアマネージャーさんなど、支援する人と話す機会があります。認知症のある人の行動や心理面の変化について、その理由をひもとき解決したいと思う時、認知症のある人が安心して暮らすことができる、不要かもしれない向精神薬を減らしたいなど、認知症のある人を中心に目標を共有

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ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話  大石智

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連載第2回 認知症のある人との対話から想うこと

認知症の診断に精神科医は必要?
 認知症を心配して来院した人を外来で診療する時に大切なことは、大きく2つに分けられます。1つめは認知症と類似する症状はあるけれど認知症ではない、治癒する可能性のある疾患を見落とさないことです。もう1つは、認知症だったとしても、認知症のある人と対話し、なぐさめ、ねぎらい、励まし、役割を感じ、安心と張り合いのある暮らしを

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ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話  大石智

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 連載第1回 大学病院の精神科の片隅で想うこと

精神医療とヒエラルキー

大学病院には様々な役割が求められています。求められている役割の1つが医師の育成です。大学病院の精神科には、今日の精神医療における課題を超えて、精神疾患のある人の暮らしに貢献することのできる医師を育成することが求められます。日本の精神医療には数々の課題があります。その課題の1つが精神医療の中に残るヒエラルキーです。
精神疾患

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