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ウィズコロナ時代における認知症のある人との対話  大石智

連載第3回 支援する人が教えてくれること


支援する人と思いが通じた時に起きる奇跡

外来診療や入所施設への訪問診療をしていると、訪問介護士さんやケアマネージャーさんなど、支援する人と話す機会があります。認知症のある人の行動や心理面の変化について、その理由をひもとき解決したいと思う時、認知症のある人が安心して暮らすことができる、不要かもしれない向精神薬を減らしたいなど、認知症のある人を中心に目標を共有することのできる支援する人から多くのことを教えてもらいます。そんな時は、行動や心理面の変化の理由にたどり着き、想像以上の改善や向精神薬の減量、中止を経験することができます。

時にはむずかしい時もある

一方、認知症のある人を中心に目標を共有することが難しい場合もあります。目標を共有することが難しいと観察の視点も共有されていないので、行動や心理面の変化に至る過程について尋ねても、なかなか期待される情報を得られません。「もう少し情報を整理して、行動の変化が生まれる過程を分析してから方針を決めたいので、向精神薬の処方は控えたい」と伝えたところ、「困ります」「現場は大変なんです」と一蹴されてしまうことも少なくありません。外来で「薬をもらえるまで今日は帰れません」と支援する人に迫られたこともあります。

現場の課題を考えよう


だからと言って、こうした支援する人を非難するつもりはありません。介護の現場はマンパワー不足が否めません。支援する人に学習の機会が十分に提供されているかというと、必ずしもそうとは言えない現実もあります。研修会を企画しても勤務シフトの都合で参加を渋る管理者も少なくないという意見を耳にします。こうした支援する人にある厳しい現状の背景には、現在の医療や介護にまつわる制度、法律上の課題が横たわっています。ですから、支援する人と目標を共有しづらい時、支援する人を責めるのではなく、医療や介護にまつわる制度にあるどんな課題がこうした現状を生み出しているのか考えることが求められると言えるでしょう。

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著者の大石智先生 プロフィール

1999年 北里大学医学部卒業
2001年 駒木野病院精神科
2003年 北里大学医学部精神科学助教
2019年 北里大学医学部講師、相模原市認知症疾患医療センター長

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