AKBでなく坂道が紅白に出れた理由に見る櫻坂46の成功戦略(パーソナライズ)
私は普段、Webメディアを運営する会社で新規事業の担当をしています。
というのは私の一面で、仕事中は欅坂46(現櫻坂46)のyoutube動画をエンドレスで流し続ける通称ケヤカスですw
さて、2020年紅白歌合戦にAKBグループが選出されず、乃木坂46、櫻坂46、日向坂46が選出されたことが界隈ではちょっとした話題になっています。
実は、このAKB→坂道シフトはWebサービスの潮流変化から説明が可能です。決して何らかの事件のせいだとか、秋元康さんの力の入れ具合の問題でなく、マーケティング戦略とプロダクト設計(チームの設計)がこのシフトを牽引しています。
さらに、Webサービスの潮流変化を見ていくと新生櫻坂46が目指すべき姿も見えてくる気がしたので、ブログの最後にこのことも書きたいと思います。
AKB=「上位2割の商材が8割の売上を作る」の権化
はい、誰もが知っているAKB神セブンと呼ばれる皆様です。
この売り方が正しい時代がWebサービスの第一世代です。
ビジネス理論の1つに「上位2割の商材が8割の売上を作る」というものがあります。パレート理論と呼ばれたりもします。
これは、統計をとっていくと、お店に置いてある商品のうち売上上位2割の商品が、その他の商品全部を合わせた売上の8割を占める傾向にあるというデータに基づいた理論です。
この理論を商売に適応しようとすると、
・売れ筋商品の単価をあげよう
・売れ筋商品をより顧客に見せて、売れない商品の陳列棚は減らそう
という結論を生みます。
Webサービスで言うと、初期のZOZOタウンがこれにあたります。
創業者である前澤友作さんで一躍有名になったZOZOタウンですが、一番最初のZOZOタウンはイケてるセレクトショップを集めたファッションショッピング「タウン」でした。
見て分かる通り、有力ブランドへ送客を促す仕組みとなっていて、
・売れるものを見せる
・売れるものの単価をビジュアルで上げる
という思想のもと作られているのが分かりますよね。
AKBがまさにこれで、
・神セブンへメディア露出を集中させ、個人の認知を上げていく
・総選挙システムで、上位メンバーの客単価を吊り上げる
が、商売上の最適解だったと思われます。
事実、この戦略でAKB48はオタクのアイドルから国民的アイドルグループにまで登り詰め、一時期は神セブンをTVCMで見ない日はなかったのでは。
しかし、これがインターネット利用時間の伸び(≒スマホの普及)で最適でない事態になっていきます。
坂道=「下位8割の商材を重視するロングテール」の権化
はい、先日卒業された白石麻衣さんセンター、齋藤飛鳥さんらフロントの乃木坂46「シンクロニシティ」MV出演の皆様です。
坂道グループには、AKBの客単価向上策である総選挙も、例えば指原莉乃さんがバラドルとして成長する過程を放映した「さしこのくせに」のような個人単位での番組もありません。
つまり、パレート理論でいう売れ筋商品の露出を増やし単価をあげる、ということに注力していないように見えます。
これはなぜか?
実は、スマホの普及によりインターネット利用時間が大幅に伸びた結果、パレート理論に次ぐロングテール理論というものが注目され始めました。
インターネットで検索することがより一般化した結果、とんでもないニッチな検索をする人も一定量存在するようになりました。
その結果、塵も積もれば山となるではないですが、売上上位2割ではない商材であっても、品揃えをよくすれば結構な売上になるケースが出てきたのです。
売上順に商品を並べて棒グラフを作ると、下位8割の部分が尻尾のように見えることから「ロングテール」と呼ばれたりもします。
実店舗を持たないことで在庫スペース・陳列スペースの物理的な制約がなくなり、かつ、インターネットの浸透でニッチな要望も束にすることができる時代だからこそなせる技です。
これを地で行ったのが、みなさんお馴染みのAmazonです。
Amazonの強みは品揃えです。
Amazonは最初、本のECサイトとしてスタートします。
・専門書をとにかく集めて品揃えがあることをアピール
・無い商品でも注文を受けて、仕入れて販売する
という逸話がよく聞かれます。品揃えこそを重視する姿勢が伺えますよね。
さて、この時代にAKBがやっていたような売筋商品の猛プッシュは正解でしょうか?違いますよね。
例え握手会で枠が埋まらないメンバーであっても、ファンになりそうな人に幅広く見つけてもらうよう、ファンとの接点を最大化することこそが売上最大化につながります。
欅坂46が実践していた「全員にフロント(最前列)を経験させる」「冠番組での露出がほぼ均等」は、まさにこの理論を地で行っているように思います。
売筋商品で売上を最大化するのではなく「一度捕まえたファンをいかに長期間課金させ、徐々に単価を上げていくか」が坂道グループの戦略です。
この辺りは前回の記事に詳しく書きましたので、ご覧ください。
乃木坂46でも、卒業した白石麻衣さんや、ミュージカルにも活躍の場を広げる生田絵梨花さんなど知名度で突出したメンバーはいますが、それはメディア露出を集中させた結果ではなく、冠番組の「乃木坂工事中」を拝見していても「全員を売る」という意図が見て取れます。
これは、楽曲に全員が参加する「全員選抜」を維持している日向坂46でも同様ですし、欅坂46から改名した櫻坂46では「全員で楽曲を届ける」というメッセージが明確に示されました。
人気商品ほど「卒業・脱退」していくアイドル業
はい、平手友梨奈さんの卒業曲「角を曲がる」です。聞いていて切なくなりますよね。。。
人気メンバーほど様々なプレッシャーを抱えたり、次のステップを目指してグループから抜けていきやすいのがアイドル「業」の特色だと思います。
この特色から考えた時に、
パレート理論(売筋での売上を最大化)に則ったAKB
ロングテール理論(売筋でない商品からの売上を最大化)に則った坂道
どちらが持続的に成長できるかは自明ですよね。
一種、焼畑農業的な売上の建て方をするAKBは瞬間風速は出ますが持続的に売上(≒人気)を維持し続けるのは構造的に困難です。
一方で、スマホ普及でインターネットが日常に入り込んだ後の坂道系は、その利点を大いに活かし持続的な成長を達成することができました。
これが2020年紅白歌合戦にAKBが出れず、坂道系が出れることになった最大の要因だと思います。アクシデントによる打撃であればリカバーできますが、ビジネス構造を間違えてしまうともう二度と取り返しがつきません。
AKBでも坂道でも、アイドルたちは日々死ぬほど頑張っていると思いますし、ファンも全力で応援していると思いますが、構造が違う。これが決定的な差を産んだと推察します。
こう考えていくと、Webサービスに来ている次の波に乗れば櫻坂46は坂道の成功の上にさらに成長できるのでは?と思い、最後にその考察をして終わります。
では、櫻坂46が乗るべき次の波は?=パーソナライズ
はい、若者に大人気NiziUのAYAKAさんのtiktokです。
これ、tiktokで個人、というのがミソなんですね。
Webサービスに今来ている波は「パーソナライズ」です。
もはや人は検索することすら面倒になってしまいました。
AIが勝手に好みを解析してくれて、自分が好きそうなものを出して欲しい。
そんな人が増えています。
事実、YoutubeはAIがレコメンドする関連動画を見る人が大半ですし、tiktokに至っては全く見ず知らずなのに好きな動画が次々に現れます。
これはAI技術の発達と、スマホアプリで取ることのできるデータ量が飛躍的に増えたことに起因しています。ロングテール理論によって支えられていたコンテンツでも、パーソナライズされて表示されないコンテンツは今後ユーザーに届きにくくなっていくでしょう。
さて、こんな中でNiziUはパーソナライズの権化とも言えるtiktokに力を入れていますね。
これ、1人1人の顔の好みもAIで解析されていて、最も好みに近いメンバーのコンテンツがみなさんのスマホに出されているって言ったら驚きます?
そのまさかなんです。
下の前回ブログで、欅坂46が作り上げた、捕まえたユーザーを課金させるまでの丁寧な仕組みについて解説しましたが、その仕組みがパーソナライズによってオワコン化する可能性があります。
いろいろなコンテンツを見ないで、直接推しのアイドルに出会えたら、そんな苦労しなくて良いからです。
つまり、AIによるパーソナライズ全盛の時代に適した成長の方法を確立することが櫻坂46成功の道ということになります。
具体的にどんな形か?
優れたレコメンドAIを持つプラットフォームにコンテンツを投下することが大事になるので、
・少なくともメンバー別にtiktokコンテンツは量産すべき
・Youtubeも別チャネルでメンバー別コンテンツを大量に投下
の2つは明日からでもすべきでしょうね。
ただ、この時代でも「仕組み」となるとまだ仮説が立ちません。
おそらく運営の皆さんも同じなのではないでしょうか。
欅坂46時代にあれだけの仕組みを作り上げた櫻坂46運営であれば、きっと最適解を見つけてくるはずだと思います。
(もしお声がけいただければ副業参画したい・・・)
ということで長くなりましたが以上となります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
エンディングテーマは、先日MVが発表になった「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」です
これから仕事に戻ります泣
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