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【書評】宗教の四季報『世界の宗教101物語』

個の時代、コミュニティの時代に思い出してほしい。カリスマとは宗教に由来する言葉である。強引な勧誘など布教活動に目が行きがちだが、一般企業と比べると宗教はクローズドだがコミュニティビジネスとして見ることも可能だ。本書の目次を見渡しても、見聞きしたことのない宗教が多いと思う。四季報やWikipediaにある企業の創業から現在までの沿革や株価は、創業やビジネスの参考になるが、インターネット上で多様なコミュニティが形成されている昨今、数多ある宗教の沿革をたどることも無駄にはならないはずだ。

世界には数え切れないほどの宗教がある。宗教は歴史的に国家の枠を超えるコミュニティを形成してきた。国民国家の成立以降、現代は国家の枠を超える転換点に来ているかもしれない。歴史的に生きながらえた伝統宗教から存続の理由を探ることも、近代に形成された新宗教から比較的ファクトの記述をたどり沿革を確かめることも面白いだろう。

「まるで生き物のように姿を変えて」と著者が述べるように、生物が環境に合わせて変異する自然選択説のごとく、同じ宗教であっても地域によって時代によって変化し、もしくは別の宗教が生み出されたりする。まさに進化論の系統樹のような見取図が付録されているのも興味深い。

妄信することも、それを過度に批判することも、実は鏡の裏表かもしれない。前提条件が異なるのに、互いに事実を主張しあっても話は平行線だ。特定の宗教や個人をクローズアップするより先に一度全体を見渡してみれば、教養としての公平な視点を持てるだろうし、実生活に活かせる学びとなるかもしれない。日本の新宗教も詳しく載っている。

とにかくたくさんの宗教を網羅的に知りたい、その系統樹をさかのぼってみたい、という方におすすめする。

『世界の宗教101物語』
作者:井上順孝
発売日:1997年4月18日
メディア:新書館

今回は宗教関係、世界の宗教を網羅的に調べることができる本です。辞書のように大きくなくハンドブックサイズなので手に取りやすいと思います。

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