しーらかんす

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最近の記事

シン・ルーキー

 人工光の中で目が覚めた。  非常に気持ちの悪い目覚めだ。喉は乾き、じっとりと汗をかいている。布団は乱れ、空気は淀んでいた。窓からは、宵とも朝とも分からない、交じり合った光がすりガラス越しに降り注いだ。  時計はない。  あとどれくらいで、朝が来るのだろう。  着ている黒いスウェットが更に僕を憂鬱にさせる。まるで朝に拒まれている気分になる。自分で着たはずなのに。  寝ていたはずなのに力はない、かと言って瞼を閉じる気にもなれず、ただただ横になっている。背中が湿っぽく、僕の身体

    • 2つの「Beautiful World」と私の陰謀論

       2021年3月8日、ファン待望の「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」が公開された。  私も前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」から8年間待ち続けていたファンの一人であった。  公開から1か月以上が過ぎ、もう巷では考察のブログやら動画やらは溢れかえっていると思うので、そのあたりはお任せして(というかそこまでの知識はないので、甘んじて享受することにして)、私はヱヴァンゲリヲン新劇場版4部作の主題歌に触れていきたい。  まあ主題歌の話も星の数ほど考察されているのかもしれないが、

      • 自己紹介

        名前 たまこ 性別 女 職業 新卒一年目社会人 (いつかユーチューバーになることを夢見る卵) 名前の由来   コロナ禍に泥酔して、おつまみに使おうとしたたまごに顔を描き、なぜかそれから目玉焼きを作る一連の流れを友人に電話実況。リア友と繋がるTwitterに真夜中にアップしたことがきっかけ。  その時に書いた「たまこ」の写真も残っているが素面でみると本当に気味が悪い(卵だけに)(黙ります)。だけどなんだか愛着が湧きつつある今日この頃。 趣味  ・ディズニー   スティッ

        • ルーキー

           フィルム映画のような巻き戻しを、僕は三次元で感じていた。ギュルギュルという効果音が似合いそうだ。勢いよく巻き戻る感覚を全身で感じている。そして時は夜に巻き戻るんだ。  真夜中、アナログ時計は訪れる夜明けを告げ、子供はお休みの時間。僕はベッドから飛び起きた。何度も何度も繰り返す夜。サイドテーブルに置かれているテーブルランプは煌々と光っており、床に落ちた文庫本が読書しながら寝てしまったことを教えてくれる。いや教えてくれるなんてものじゃない、これは警告にも似たナニカだ。    

        シン・ルーキー

          シーラカンスと僕

           茹だるような暑い夏の夜明け。百円ちょっとで買った冷たいペットボトルの水を煽る。外の温度と同化してしまった僕の身体に、冷たい、冷たい水が流れ込む。図らずも見上げた空は深い青の海、雲は僕の吐く泡。ペットボトルの中身が、僕の喉が鳴るたびに半分、また半分になっていく。冷たい水は僕の身体をふわりと浮かせた。漂うような感覚。  空になったペットボトルを口から離し、近くのゴミ箱に名残惜しくも捨てる。  確かに、僕は魚になっていた。  面倒で開けっ放しだった玄関のドアを開けて、リモコンの

          シーラカンスと僕

          ロビンソン

           折れた桜の木がたくましくも一輪の花を咲かせている。気づかぬうちに晴はすぐそこまで来ていたらしく、ふと肌をなぞる風の温かさに季節を感じた。かつては家の窓を開けた途端に、春を感じたものだった。桜の花、風、花の匂いに芽吹く緑。今の荒廃した土地からはとても考えられない自然。新しい季節の訪れは、僕の心に切ない日々をもたらした。  君がいなくなって、初めての春だ。  夏のあの日、世界はたくさんの人を飲み込んだ。人と人とはなぜ争うのだろうか? そんな疑問を呈する人もいるが、僕にとっては

           幼い頃拾い上げた真っ白な羽根。大人になった俺の手のひらほどの長さがあるそれは、夏の匂いを思い出させる。  蝉の声、陽炎、太陽、そして海。  歪んだ緑と青に降り立ったあいつのことを俺は今でも忘れることができない。  もうとっくに俺は大人になって、窮屈なビルの街で隙間を探して泳ぐ魚の様な生活を送っていた。ありきたりのスーツを着て、満員電車に乗る。くたびれた毎日。かといって逃げ出す勇気もない毎日。けれども、こんな俺にも人とは違う経験を持っていた。  それがこの羽根だ。  この大