ドキッとする「体言止め」/YOASOBI「アイドル」から紐解くテクニック
こんにちは。桜小路いをりです。
今日は、私なりの文章のテクニック、「体言止め」の扱いのお話です。
ひよっこの私が畏れ多いのでは……という一抹の不安はありますが、メガヒットのYOASOBIの「アイドル」の力も借りて、ご紹介していこうと思います。
ぜひ最後までお付き合いください。
YOASOBI「アイドル」と「体言止め」
文末を名詞で締める「体言止め」。(この一文がまさしく「体言止め」ですが。)
私は、「体言止め」って、すごく読み手をドキッとさせる表現の仕方だなと思います。
その理由は、「~です」「~た」が続くであろうと何となく予測しているところを、すぱっと止めてしまう表現だから。
例として、私がこれまで出会ってきた曲の中で、いちばん「ドキドキする曲」だと思っているYOASOBIの「アイドル」の歌詞を挙げてみます。
(ここから、一丁前に考察していきます)
あくまで桜小路いをり調べですが、「アイドル」は、YOASOBIの中でもかなり「体言止め」の歌詞が多い曲。特に、中でもドキドキが一層高まるこの部分を、例に挙げさせてください。
「メディア」「だけは」「キャリア」「愛だ」で韻を踏みつつ、「体言止め」にすることで、「メディア」と「キャリア」という言葉に独特の余韻が生まれています。
「得意の笑顔で沸かすメディア」というフレーズなんて、メロディーと曲も相まって、アイちゃんのとびきりの笑顔ひとつでどよめき、高らかに喝采する人たちの姿が目に浮かびます。
ワンフレーズずつに挟まる「間」と、何よりそのドキッとする「体言止め」の効果ではないでしょうか。
ここの歌詞なんて、「アクア」「瞼」「マリア」「愛だ」で韻を踏みながら、聴き手のドキドキを最高潮まで持っていく印象的な部分です。
(しかも、「嘘はとびきりの愛だ」なんてはっきり言い切った直後に、「誰かに愛されたことも……」と寂しげなパートに入るところまで含めて、最高にドラマチック)
きっぱりと、有無を言わせず強く言い切るような歌詞が多い「アイドル」ですが、「体言止め」の多用によって、その世界観により一層ふくらみが生まれている……と、私は感じています。
「体言止め」って、言葉だけ聞くと「止める」という印象が強いテクニックです。
その作用ももちろんありますが、(詳しくは次の見出しで書きます)私は、「言葉を鮮やかに響かせるテクニック」だとも思っています。
体言止めした言葉の意味、言葉そのものが纏う空気感が、次の文にまでふわっと影響していくような。その言葉が起こした波紋が、いつまでも広がり続けるような。
だからこそ、「体言止め」は、「ドキッとする」表現なのではないでしょうか。
「体言止め」を使うとき
綱渡りのようなアイドルとファンとの関係、危うい均衡で成る芸能界を描いた「アイドル」には、そのドキッとする作用がぴったりハマる「体言止め」。
しかし、いざ普通の文章の中で多用すると「くどい」印象になるのが悩みどころです。
これもあくまで桜小路いをり調べですが、「体言止め」が頻繁に出てくると読んでいて疲れてしまうし、かと言って、するするっと流れるように読めてしまう文章は、記憶に残りにくい気がします。
しかも、簡単に取り入れられるがゆえに、「体言止め」の魔法に頼り過ぎてしまうこともしばしばです。
私自身の「体言止め」の使い方ルールは、実はひとつだけです。
ずばり、「ここで立ち止まって欲しい」というところに入れること。(今、まさにこの一文です)
文章の中で強調したい言葉はもちろん、「ちょっと小休止を入れたい」というときにも使います。
ここまではするするっと読んでほしいけれど、ここではちょっと立ち止まって、言葉の意味をしっかり咀嚼して、飲み込んでほしい。
「今、ここが、私がいちばん伝えたい大切なこと!」という合図が、私にとっての「体言止め」です。
「ドキッとする」ときの感覚って、心臓の鼓動が一瞬止まるような感じがすると思います。
そのイメージで、ちょっと引っかかるような、「おっ」と思ってもらいたいところに入れるのが、私のお約束です。
ちなみに、文章の一部分(大体、一段落分くらい)を「アイドル」の歌詞のように連続で体言止めを使うテクニックも、たまに使っていたりします。
例えば、以前書いた記事の中には、「瞬間」「時間」「瞬間」で連続で体言止めしている部分があります。
その部分だけが全体の文章から浮かび上がるような印象になるので、「ドキッとする」ことに加えて、言葉が心に刺さりやすくなるような。
無意識に使った記憶もありますが、今ではこの部分も、数ある記事の中のお気に入りの文章のひとつ。おすすめのテクニックです。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
2000文字以上書いてきて、果たして参考になっているのかどうなのか……と、今さらながら少し不安になっていますが。
個人的には、大好きな曲の魅力もプラスでお伝えできて満足です。
ぜひ、記事の執筆はもちろん、皆さんの創作活動にお役立ていただければ嬉しいです。