真実一郎

ライター/サラリーマン漫画研究/著書『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社/2010年)…

真実一郎

ライター/サラリーマン漫画研究/著書『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社/2010年)/「サラリーマン漫画展」監修(市川市文学ミュージアム/2018年)/パチ怪獣コレクター/ソフビ開発/アイコンはサレンダー橋本さんに描いてもらった似顔絵です

最近の記事

令和に『劇画・オバQ』を読み直す

  『劇画・オバQ』(1973年)は、藤子・F・不二夫による『オバケのQ太郎』(連載開始は1964年)の後日譚であり、読み切りSF漫画の大傑作です。  小学生の大原正太の家に居候にやってきた、大食漢で寝てばかりの間抜けなオバケ、Q太郎が巻き起こす騒動を描いて大人気となった『オバケのQ太郎』。これはその15年後という設定で、大人になった主人公の大原正太やオバQが劇画タッチでリアルに描かれます。  いまや大企業に勤務する多忙なサラリーマンとなった正太は、友人のハカセからベンチ

    • 平成最後の島耕作論 ~団塊サラリーマンの功罪~

      ※この原稿は2019年(平成30年)1月に書いたものを加筆修正したものです ■「新しいサラリーマン」としての団塊世代=島耕作  社長を退任して会長になってから、島耕作が注目されることがめっきり少なくなったような気がする。「会長編」は地味なビジネス視察が中心で、恒例のワンチャンも無い枯れた展開なので、致し方ない面もある。  それでも平成という時代を振り返るとき、島耕作という存在は外せないと思い、平成最後の年である2018年末に有楽町マルイで開催された「島耕作『超』解剖展」

      • インディーズ・ソフビの創世期を探る | 連載:ソフビ考現学④

        かつてソフビは、玩具会社が大量生産して玩具屋で売られるものが一般的でした。しかし現在では、ソフビの制作・販売を行う独立系のメーカーやアーティストが世界中に数多く存在します。いわゆる<インディーズ・ソフビ>、<クリエイターズ・ソフビ>といわれるものです。 ここでは、<インディーズ・ソフビ>を「独立した小規模組織あるいは個人が制作し、玩具問屋を通さず消費者に直接販売するソフビ」と定義してみましょう。今回はそのインディーズ・ソフビの創世期を掘り起こしてみたいと思います。 ■ガレ

        • 「ミリオンモデル」という 想像力の底なし沼 | 連載:ソフビ考現学③

          毎年一度だけ新作を発表するミリオンモデル(旧名義は イルイル/ウズマーク/眩ム圖 など多数)が、8月の創作ソフビ決起集会で披露した新作のひとつ「大面獣」を紹介します。 このピンク・バージョンの他に黒バージョン、赤バージョンが存在して、選考当選者は自分が欲しい色を先着順に選ぶ、という受け取りスタイルでした。ブースには大面獣の五円引きブロマイドのオブジェやテーマ曲のレコードジャケットも展示されてい、その作りこまれた展示に衝撃を受けた人も多かったようで、ブースの前は写真を撮る国内

        令和に『劇画・オバQ』を読み直す

          2000年代の平成インディーズソフビ・ブームを振り返る | 連載:ソフビ考現学②

          20年ほど前の平成時代後期に、インディーズ・ソフビがブームになったことがありました。現在のソフビ・ブームと比較すると、メーカーの数はまだまだ少なく、イベントの数や規模も控えめでしたが、自作のソフビを発表する小規模メーカーが次々と旗揚げし、シーンは新しいムーヴメントを生み出す活気にあふれていました。 今回は、当時の象徴的な資料を手掛かりに「平成のソフビ・ブーム」を振り返ることで、現在の「令和のソフビ・ブーム」の特徴を浮かび上がらせてみたいと思います。 ■平成のソフビ・ブーム

          2000年代の平成インディーズソフビ・ブームを振り返る | 連載:ソフビ考現学②

          「ソフビ」ブームが世界を席巻!玩具とアートの融合が生んだ日本発の文化現象 | 連載:ソフビ考現学①

          2023年12月17日 真実一郎 ■世界に広がるソフビ人気 「ソフビ」が世界中で人気を博しています。 まさに今日、アメリカのカリフォルニアで開催されている、6万5000人を集客するアートトイの祭典「DesignerCon(デザイナーコン、通称D-Con)」では、オリジナルのソフビ人形を展示販売するディーラーが世界中から集まっています。 一方で香港では、「TOYSOUL 2023(亞洲玩具展)」という大規模なクリエイターズトイの展示会が開催中です。イベントの目玉は100を

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          cocobat最新作『Devil's Rondo』&レコ発ライブ・レビュー ~take-shitインタビュー③~

          Devil's Rondo2021年に発売された7インチシングルの2曲に加え、新たに録音した3曲を加えて2022年に発売された最新作。タイトル曲「Devil’s Rondo」は、1980年代に活躍した埼玉のサタニック・ヘビーメタルバンド「サブラベルズ」の代表曲のカバーで、以前にもライブで披露したことはあったけれど、このたび奇跡的に許諾が取れてリリースに至ったとのこと。 「悪魔と踊る」という堕落的・快楽的なモチーフを全面に打ち出ししながら、本作は徹底的に禁欲的・ストイックな演

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          男子玩具の変遷と価値転換 ~take-shit インタビュー②~

          ソフビ、格闘技、音楽の共通項 ーーーソフビ、音楽、格闘技、この僕の好きな3つの物を全部take-shitさんが実践されているのがとても興味深くて。この3つに共通するものって何なんでしょうね。 まずレコードとソフビに関しては、大人になった今の自分達に共通しているなぁと思えるのが、「カラー色変えレコード」や「マーブル成形」です。 80年代のハードコア・バンドが自主製作でレコードプレス工場とやりとりする中で、小ロットでレコードプレスするからこその、プレス毎のカラービニールの色変

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          プロレス、格闘技、メタル、パンク、そしてソフビ ~take-shitインタビュー①~

          パンク、メタル、格闘技、そしてソフビ(ソフトビニール製の人形)。僕が好きな文化を掘り下げるとき、必ずtake-shit(cocobat・ココバット)の存在が浮かび上がる。 そんなtake-shit氏に、話を伺う機会を頂いた。もともとは、現在の世界的なクリエイターズ・ソフビ・ブームの起源とされる、1990年代のストリート界隈の玩具文化事情を知りたくて聞き始めたら、芋づる式にあらゆる同時代文化の話に及び、それが僕にとってあまりに面白すぎたので、インタビューという形で世に出すこと

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          おじさんミーツガール ~なぜ近年「おじさんと女子高生」のサラリーマン漫画が目立つのか~

          おじさんが少女とつきあう漫画が増えている? 私は以前から「サラリーマンを描いた漫画」に興味があり、1960年代の作品から現在連載中の作品に至るまで、多くの漫画を読んできました。日本人男性のマジョリティであるサラリーマンを描く大衆文化には、それぞれの時代の代表的な労働観や人生観が投影されます。だからサラリーマンを描いた漫画を通して、日本人そのものを深く知ることができると思っています。 そんな中で最近、気づいたのです。サラリーマンが少女とつきあう漫画が増えているのでは? と。

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          トウキョウラジゴン(イルイル) ~時間感覚を狂わせる究極のソフビ体験

          2020年に発表されて以来ずっと欲しかったイルイルの「トウキョウラジゴン」。先日の創作ソフビ決起集会の抽選で当選し、やっと手にすることが出来た。とにかくすべてが素晴らしい。ずっと触っているけれど、まったく飽きない。 オーソドックスな恐竜型怪獣でありながら、頭部にレーザー銃が装着され、腹部の装甲が開閉する。「飢饉、疫癘、天変、地夭、数多の禍攘い除けんと五礼島より出でたる聖獣<統凶羅璽嚴>大あばれ!」という設定になっているので、人工的に改造されたわけではないらしい。ラジゴンカー

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